メールマガジン
分権時代の自治体職員
第25回2007.04.26
職員研修―10
研修効果を高めるために
前回見たように、ビジネスモデルとしては様々な研修の効果測定手法があり得るものの、自治体におけるその実際の運用は困難を伴う。そのような中、「効果的な研修は何か」「研修の効果を高めるにはどうしたらよいか」を真剣に問い続け、職務に前向きに取り組んでおられる職員研修担当者も多い。ただ、これがベストという答えはなかなか見つかりにくく、壁にぶつかることもあって、その中で悩み考え苦しんでおられることと推察する。
研修効果を高めようとして、悩み考えておられることは必ず何らかの形で実を結ぶと思う。そのために費やした時間は、実は、担当者自身の自学にもつながっており、ひいては、研修スタッフ全体の力の底上げになっている。前にも指摘したように(第23回)、研修所スタッフのファシリテート能力は非常に重要であるが、それが飛躍的に上昇した研修スタッフによって改善された研修プログラムは、従来のものに比べて必ずや効果が改善するものになっているだろう。
研修効果を高めるためには、(1)研修プログラムがすぐれたものであること、が必要であるだけでなく、(2)受講者の側がどれだけ身を入れて研修を受講するのか、という点も重要な要素である。「行けと言われたから来た」という受講者が、「とりあえず研修時間中はきちんと座って聞いている(少なくとも聞いたふりをしている)」というような研修であれば、研修効果は期待できない。受講への取組意欲をいかに高めるのかという点についての、様々な工夫が求められるということであろう。
ここで、一つの事例を紹介しておきたい。
宮崎県北郷町の倉岡町長は、県単位の研修所や全国単位の研修所(JAMPやJIAM)への派遣研修に力を入れており、派遣された職員の研修復命については、かならず自ら報告を受けることにしている。通常の決裁は、課長級の専決ということですまされているものも多いが、研修の復命書は「町長決裁」である。
職員にとっては、研修への参加は真剣勝負である。職場へ戻ってから、大部の復命書を作成しなければならないし、復命書を提出した後に、町長から矢の質問が飛んでくるからである。
JIAM主催の「人事評価制度の構築と運用」に参加した職員も、土日や業務終了後を費やして、数日がかりで復命書をつくりあげた。どういう内容の講義があったのか、どういう内容の演習があったのか、自分はどう考えどう発言したか、北郷町の現状はどうなっているのか、研修で得たものをもとに北郷町では今後どのようなスケジュールでどのように人事評価制度を構築していく必要があるのか。その復命書は、配付資料も含めて数センチに及ぶものとなったという。その復命書を、町長は1日半かけて読み通した。そして、その職員に、是非、人事評価制度を導入、構築していくように指示したという。
これは北郷町職員の派遣研修の一例に過ぎないが、すべての派遣研修の復命書が町長決裁となっているため、職員は、研修に手を抜くことなどできない。まして、居眠りなどできようはずがない。
この事例のように、研修受講者に対して、職場の側で「何らかの負荷をかける」ということにより、受講者に、「研修から何かを得て帰る」という構えを持たせることは重要なことである。
くりかえしになるが、人は自学で育つ。その自学を刺激するような、研修受講システムであることが必要である。
個別の自治体研修所における研修でも、職場への復命をかなり重要視するとか、効果測定の結果を人事評価に反映するとか、あるいは、人事記録カードへの記録とその後の人事異動に活用するとかの工夫がなされれば、個々の受講者の取組意欲もかなり改善するに違いない。