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第09回2015.12.24

2015年多文化共生10大ニュース

日本における多文化共生社会の形成にとって大きな影響を及ぼすであろう2015年の10大ニュースを選びました。

・ミスユニバース日本代表に外国ルーツの宮本エリアナさんを選出 世界3大ミスコンテストの一つに挙げられるミスユニバース日本代表に、長崎県代表の宮本エリアナさんが選出されました。宮本さんの父親はアフリカ系アメリカ人、母親は日本人で、初めての外国ルーツの日本代表となりました。選出直後から、ワシントンポストやCNN、インデペンデントなど、主要な外国メディアに取り上げられ、しばらくしてから日本のメディアにも取り上げられるようになりました。12月に開かれた世界大会では上位10人に残りましたが、惜しくも入賞は逃しました。(3月)

・長野県が多文化共生推進指針を策定 長野県が多文化共生推進指針を初めて策定しました。多文化共生推進協議会に参加する7県の中では、最も遅い指針策定となりましたが、多様性を生かした地域づくり(多文化共生2.0)を謳った指針としては、全国の都道府県で初となります。基本目標として、「国籍や文化の違いを尊重し合い、誰もが参加し、協働して、多様性を活用した豊かな地域を創造」することを謳いました。ちなみに、浜松市が2013年に策定した多文化共生都市ビジョンが全国初となります。(3月)

・外国人集住都市会議が第2ステージへ 2001年に設立された外国人集住都市会議が、新たに「外国人住民の持つ多様性を都市の活力」とすることを目的に定め、会員も「南米日系人を中心とする外国人住民」が居住する都市から外国人住民に係る施策や活動に取り組む都市に改め、多文化共生に取り組むすべての自治体に入会を認めることにしました。その結果、今年度から新宿区と大田区がオブザーバーとして参加しています。今後、さらに多様な自治体が参加することが期待されます。(4月)

・経団連が人口問題委員会を設置 日本経済団体連合会(経団連)が委員会の再編を行い、新たに人口問題委員会(委員長:岡本圀衞日本生命保険会長)を設置しました。同委員会の課題として、外国人材の受入れのあり方を掲げ、ダイバーシティ経営、外国人留学生の採用、多文化共生社会の構築を検討事項としています。2030年の日本を描いた経団連ビジョン「『豊かで活力ある日本』の再生」(2015年1月)や提言「人口減少への対応は待ったなし」(2015年4月)では、人口1億人維持を掲げ、少子化対策、地域経済の発展とともに外国人材の活躍を掲げ、多文化共生社会の実現を謳っています。(6月)

・移住連がNPO法人に 1997年に発足した「移住労働者と連帯する全国ネットワーク」が6月に解散し、新たに特定非営利活動法人「移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)」(代表理事:鳥井一平氏)として設立されました。9月に東京都から特定非営利活動法人として認可され、10月に法人登録が行われています。移住連は「日本に住む移住者の権利を守り、その自立への活動を支え、多民族・多文化が共生する日本社会を作る」ことをめざして、全国の各地域/領域の約90団体と個人をネットワークで結び、国への政策提言や情報発信、プロジェクト活動などを行っています。(6月)

・東京都が多文化共生推進検討委員会を設置 東京都が、「オリンピック・パラリンピック開催を契機に、国籍や民族などの違いによる多様な価値観を受入れ、全ての人が東京の一員として参加できる多文化共生社会を推進していく」ために、多文化共生推進指針(仮称)を策定することとし、7月に多文化共生推進検討委員会を設置しました。今年度中の指針策定を予定しています。東京都では、5月に「外国人の人権-成熟した多文化共生社会の実現をめざして」と題したビデオを公開し、10月には「多文化共生社会の実現」をメインテーマに掲げた、東京都初の大型人権啓発イベントも開催しました。(7月)

・人種差別撤廃施策推進法案を参議院で審議 「人種等を理由とする差別の撤廃のための施策の推進に関する法律案」を民主、社民両党など野党が共同で5月に参議院に提出しました。日本で初めての人種差別撤廃に関する法案であり、人種や民族などを理由とする差別を禁じ、内閣府に審議会を置き、調査や勧告の権限を与える内容となっています。法案提出の背景には、2010年代に入って深刻化したヘイトスピーチ問題があります。法務委員会で8月に審議に入りましたが、与党の賛同を得ることができず、9月に継続審議となりました。(8月)

・ラグビー日本代表がワールドカップで活躍 イングランドで開かれたラグビー・ワールドカップで、日本代表チームは予選プール3勝1敗の好成績を挙げ、特に優勝候補の南アフリカを相手に試合終了直前に逆転勝ちした初戦は、世紀の番狂わせと呼ばれました。ラグビー・ワールドカップでは、外国人選手の出場も認められていますが、今回の日本代表31人の中にも、5人の外国人選手が含まれていました。また、ニュージーランド出身で日本国籍を取得したリーチ・マイケル・キャプテンを始めとする6人の外国ルーツの選手も加わり、日本ラグビー史上最強の代表チームが生まれました。(9、10月)

・安倍首相の難民コメントに世界が注目 ニューヨークで開かれた国連総会に参加した安倍晋三首相は、記者会見でシリア難民の受け入れについて質問され、「人口問題として申し上げれば、我々は移民を受け入れる前にやるべきことがあり、それは女性の活躍であり、高齢者の活躍であり、出生率を上げていくにはまだまだ打つべき手がある」と答え、日本は難民問題より国内問題を優先していると海外メディアに報道されました。欧州を中心に国際社会でシリア難民受け入れの機運が盛り上がる中、国内の市民団体からもシリア難民の受け入れを求める声が上りました。(9月)

・文科省が外国人児童生徒教育に関する有識者会議を設置 文部科学省(文科省)が「学校における外国人児童生徒等に対する教育支援に関する有識者会議」を設置しました。検討課題は、「日本語指導体制の整備・充実」、「日本語指導に携わる教員・支援員等の養成・確保及び指導内容の改善・充実」、「外国人の子供の就学の促進及び進学・就職への対応」の3点です。文科省では、2007~2008年度に「外国人児童生徒教育の充実のための検討会」を設置して以来、外国人児童生徒教育の充実を図ってきました。日本語指導に携わる教員の専門性の確立に向け、日本語指導の資格制度の検討が期待されます。(11月)