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第58回2012.01.25

多文化共生都市サミット

2012年1月18日に、日本と韓国そして欧州の9自治体首長らが集まった「多文化共生都市サミット」が都内で開かれました。国際交流基金と欧州評議会の共催による会議で、日本からは鈴木康友浜松市長、中山弘子新宿区長、松原忠義大田区長が、韓国からは廉泰英水原市長、文錫珍ソウル市西大門区長、鄭承奉安山市副市長が、そして欧州からはアントニオ・コスタ・リスボン市長(ポルトガル)、カタリーナ・ベリグレン・ボットシルカ市長(スウェーデン)、フランコ・コッラディーニ・レッジョ・エミリア市副市長(イタリア)が参加しました。いずれも、多文化共生に力を入れている都市で、欧州からは、第43回(2010年10月)の記事でも紹介した欧州評議会と欧州委員会が実施している「インターカルチュラル・シティ・プログラム」の会員都市が参加しました。サミット翌日の1月19日には、9都市の多文化共生担当課長らが報告を行う実務者セミナーも開かれました。

 サミットでは、9首長らがそれぞれの都市が進める多文化共生の取り組みを紹介しましたが、その中で、外国人支援の事業が中心となっている日韓の都市と、外国人支援に加えて文化背景の異なる住民間の交流に力を入れ、住民の文化的多様性を都市づくりに積極的に活かしていこうとする欧州都市の違いが感じられました。また、国としての体制整備が進んでいる欧州や韓国と比べ、国の取り組みが進まない中で自治体の取り組みが先行している日本の特徴も明らかになったように思われました。

 サミットの中で、鈴木浜松市長は都市連携の意義を説き、今年10月に第2回の多文化共生都市サミットを浜松市で開催することを提案しました。そして、会議の最後には、「多文化共生都市の連携を目指す東京宣言」が採択されました。

 日本には、東海地方を中心とした、南米系日系人の多い自治体のネットワークである外国人集住都市会議がありますが、アジア系外国人の多い都内の自治体など、多文化共生に力を入れている全国の自治体が参加するネットワークは存在しません。今回のサミットは、外国人集住都市会議をリードする浜松市と都内の多文化共生の取り組みをリードする新宿区の首長が初めて顔を合わせる会議となりましたが、これから多文化共生の全国的なネットワークづくりが進むことが期待されます。また、欧州や韓国と比較しながら国内の多文化共生の取り組みを振り返るよい機会となり、今後、グローバルな観点にたって日本の多文化共生の取り組みを改善していくきかっけとなるかもしれません。そういった意味で、今回の会議は歴史的な意義をもった画期的な会議であったといえるでしょう。

 自治体による先駆的な取り組みが国をリードし、日本、韓国そして欧州における多文化共生社会の形成につながることを期待したいと思います。