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第91回2012.10.24

インタビュー:秦野市政策部公共施設再配置推進課 志村 高史 さん(上)

 公共施設の在り方についての見直しが、全国の自治体で進められている。景気の良い時に作り続けた箱物施設が元凶となって、財政的にひっ迫している自治体も少なくない。神奈川県秦野市における、公共施設白書の作成、それに基づいた公共施設の再配置は、全国的に注目される存在となっている。その中心人物である、志村さんにお話をお聞きした。


稲継   今日は、神奈川県秦野市にお邪魔しまして、政策部公共施設再配置推進課の志村さんにお話をお伺いします。どうぞよろしくお願いします。

画像:志村高史氏
志村高史氏

志村   よろしくお願いいたします。

稲継   まず、秦野市について少しご紹介していただけますか?

志村   神奈川県のちょうど真ん中より少し西寄りに位置しておりまして、神奈川県下では唯一の盆地の地形を持っている町です。人口は約17万人で、一般会計の予算規模は450億円ぐらいです。

稲継   この秦野市で今大きな問題が起きているということで、それに取り組んでおられるわけですが、具体的にどういう問題が起きているのでしょうか?

志村   これは秦野市に限らず、これから日本全国で起きてくる問題だと思うんですが、公共施設というのは、経済成長や都市化の進展あるいは秦野のようなベッドタウンとして人口が増えたところは人口の増加ですね、こういった要因に伴って、一時に一斉に整備されています。一斉に整備してきたということは、当然のこととして、それは一斉に老朽化して、一斉に更新する時期がやってくる。この時期が、今までのように経済も成長する、人も増える、そういう時期であれば何ら問題はないんですけれども、残念ながらその逆に日本中の高齢化と人口の減少はどんどん進んでいきます。そうしますと、国も地方自治体も財政状況が悪化してまいりますので、そういう状態の中で今までと同じことを繰り返していると、本当に大事な公共施設まで維持していけなくなる。これは、「公共施設更新問題」、あるいは「公共施設老朽化問題」などと呼ばれていますが、その問題に今秦野市は取り組もうとしています。

稲継   具体的に、「公共施設更新問題」にどのように取り組まれたんでしょうか?

志村   平成20年4月、当時の企画総務部の中に専任の組織が設置されまして、私はそこに配属されました。「公共施設の将来のあるべき姿を考えてくれ」と言われたときに、当時の課長と2人で公共施設の将来のあるべき姿といっても、公共施設というのは、どこにどれだけあるんだろうか、どれくらいのお金がかかっていてどれだけの人が利用しているんだろうか、そういう全容をどこもつかんでいないんです。市役所の中でも自分たちが管理する施設についてはわかっていても、それを網羅的に捉えたものがない。そういう状態の中で公共施設を将来こうします、ああします、と言っても、市民の方に理解は得られないですし、何も情報がない中で行政が何かやろうとしても、それは抽象的な行政論の押しつけになって市民の反発を招くことは目に見えている。では、どうしようか?と考えて、まず、公共施設の全容を把握することから始めました。そのときに、集めたデータを集約したものが、「公共施設白書」になります。ですから、取り組みのスタートは白書作りからということになります。

稲継   全容を把握するというのは、具体的にどのようにしていかれたんでしょうか?

志村   秦野市は、昔から財政状況が厳しいので、こういう仕事をするにも委託の予算はほとんど付かないんです。ですから、自分たちで工夫してやるしかないというのが当たり前なので、一から調査票を作りまして、それを施設の管理課に全部送って、とにかく全部の公共施設をここに書き込んでくれというやり方でデータを集めました。

稲継   この調査票ですが、具体的にどういうことを書くようになっているんですか?

志村   公共施設の土地の面積、建物の面積、あるいはその公共施設がいつできたのか、何を根拠につくっているのか、そういったものから、耐震補強はされているか、バリアフリーになっているか、それに加えて今度はコストの情報ですね。1年間どれだけのお金をかけているか。そして、サービスの状況、どれだけの利用者がいるのか。コストの情報とサービスの情報から利用者一人あたりどれくらいのお金がかかるのかは自動計算される。そういうものです。

稲継   今、お聞きしていますと、フローの部分とストックの部分と両方データとして入れていき、両方合わせると公共施設評価といったものにもつながっていくと思うんですが、そういった趣旨のものでもあったんですかね。

志村   当初は、やはり調査票で集めたデータを基に評価をして優先順位をつけようとか、なるべく多くの施設を残せるように長寿命化を図りましょう、長期修繕計画をつくりましょう、そのように考えていたことは事実です。しかし、その後方針と計画をつくるに当たって、外部の先生の検討委員会をつくりましたが、そこで衝撃的な現実を突きつけられました。「残せる施設がどれだけあるのかきちんと計算してごらんなさい」と言われて計算してみたところ、秦野市の財政状況や、将来の人口推計を加味すると、そんなに多くの施設は残せないだろうということがわかったんです。

稲継   わかった時は、どのようにお感じになられましたか?

志村   もう、愕然としたというのが正直なところですね。それを市民に知らせていいんだろうか、それができるのか、そこが非常に心配でした。ただ、勇気を持ってこれは知らせなければいけないと思いました。というのは、市民の皆さんにも危機感を持ってもらわないと、こういった取り組みは進んでいきませんので、最終的には、当時の部長などの判断もありますけど、これはきちんと公表しようということになり、全て公表しました。そのときも今も、市民の皆さんは賢明だなと思うんですが、もちろんこちらからきちんと説明はしているつもりでいますが、その公表に対していたずらに騒がずに、冷静に受け止めてくださっています。

稲継   調査票に書かれたものをまとめたのが白書だとお伺いしたんですが、単に調査票をまとめるだけでは、市民の方にはなかなかわかりづらいですよね。

志村   そうですね。

稲継   どのように工夫されましたか?

志村   調査票をまとめただけのものでは、単に情報の羅列にすぎないんですね。やはり、この先一歩踏み込むためには、課題を抽出しよう、このデータを分析しようということになりました。役所生活を20年以上もやっていれば、あそこのあれがおかしいよね、というのは誰でも思っている部分があると思うんです。まず、そういうところを課題として抽出してみたりしました。それ以外にも、秦野市独自の視点での様々な分析をやってみましたが、そういう分析結果がたくさん載っているのが、秦野市の白書です。よく「なんでそんなにいろいろな分析ができたんですか?」と聞かれるんですが、あまり難しいことは考えてないというか。数字を見ていると、何となくそうじゃないかなと仮定できるんです。で、その仮定を立証してみようとやっていくと、やっぱり、ほら、そうだったというものがたくさん出てきたんです。

稲継   分析結果を市民にわかりやすく説明しているということですね。

志村   はい、そうです。

稲継   これについては、こちらに掲載させていただきます。また、事前に拝見させていただいた資料の中に「時限爆弾」という表現をお使いになられていますが、これはどういう趣旨でしょうか?

志村   実は、「時限爆弾」は私の言葉ではないんですね。

稲継   ああ、そうなんですか。

志村   はい。この言葉は、当時横浜市立大学にいらっしゃった南学先生がよく使われていたので、拝借させていただきました。何で使わせていただいているのかというと、この仕事をしていますと、この問題は正に「時限爆弾」だなというのが実感できるんですね。

稲継   「時限爆弾」とはどういう意味ですか?

志村   「ある時期が来ると、一斉に問題が噴出して、市民にものすごい負担がのし掛かってくる」ということです。これが公共施設更新問題です。正に「時限爆弾」という表現は的を射てるなということで使わせていただいています。私のオリジナルの言葉は、その資料内の「施設白書はパンドラの箱です」というやつですね(笑)。

稲継   どうして、「パンドラの箱」なんですか?

志村   この問題に取り組むと、嫌なものがいっぱい出てくるんです。市民の皆さんの既得権、あるいはエゴといったものも見えてきますし、役所の中の前例踏襲とか、事なかれ主義とか、そういうものを全部明らかにしてしまうんです。ですから、これはまさに「パンドラの箱」だなと。でも「パンドラの箱」の話は最後に箱から「希望」が出てくるという結末であり、まさに今やらないと公共施設の再配置の方針と計画という将来の希望にはつながっていかないんです。そういうことで、「パンドラの箱」という表現がぴったりだなと思って使っています。

稲継   公共施設を作るときは、議員さんなんかも「これを作ってくれ」と言って、財政が豊かなときにはどんどん市長としても作っていかれたし、市民としても、利用者数は少なくても自分の家のそばにあるのは非常に便利だし、ということだったと思うんですが、トータルのマネージメントから言うと、明らかに時宜を過ぎているとか、建て替えではとてつもない費用がかかるとか、そういったことをトータルで管理する仕組みが今までなかったということなんですね。

志村   そうですね。作るときには、建てられるかどうかしか考えなかったのが行政なんです。国から補助金はいくら出るか、では一般財源をいくら充てて、残りの借金はいくらになり、それで建てられるか、予算が組めるか、ここまでしか考えてなかったのが今までの箱物行政なんです。その後、利用者が少なくて、赤字になっても、それさえも行政論を展開して正当化していくわけです。今まで税収が豊かだったときは、それで済むんでしょうが、これからは税金の使い道は非常に絞られてきますから、そういった情報をしっかり考えて、ライフサイクルコストで物事を考えていくように展開していかなければいけないと思います。

稲継   ライフサイクルコストを考えて、公共施設について評価をしている自治体はある程度増えてきてはいますけど、かなり大物施設だけをやっているという印象があるんですね。秦野市の場合は、全ての施設ということなんですか?

志村   そうですね。全ての箱物を対象にしています。

稲継   相当大変だったんじゃないですか?

志村   そうですね。大変なんですが、根が欲張りなんでしょうね。全部じゃないと嫌だなと思ってやってきましたので。今でも計画の中では全部の施設に触れていますし、具体的に実施時期を明記しないようなものでも、こういうことを5年間、10年間のスパンでは実現は難しいかもしれないけど、検討を続けていきましょうなど、次につながるように、みんな何かしら書いてあります。盛りだくさんにはなりますが、最初にしっかりと全部をつかんでしまう方がいいと思うんです。後から広げようとすると、やはり色んな抵抗がありますから。初めから全部出してしまって、抵抗から何から全部受け止めてしまうと。今、振り返れば、そういうふうに進めて良かったと思います。

稲継   全部を明らかにした上で、そこから計画とか戦略が始まると思うんです。例えば、稼働率の低いところと高いところがあれば、低いほうは閉じて、高いほうに更新のためのさまざまな投資をしようということなると思うんですが、具体的にはそういったことはどのようにされていかれましたか?

志村   利用者の数だけを比べて、少ない方だけを廃止して、多い方に統合する。実は、それをやると失敗すると思うんです。

画像:取材の様子
取材の様子

稲継   ほう、ほう。

志村   例えば、秦野市で利用者の多い公民館と少ない公民館の利用者の数だけを比べると、少ない公民館は廃館にすべきだという意見が出てくると思うんです。でも、その中身、時間別にはどうだろうと分解してみると、利用者の多い公民館でも少ない公民館でも、午前中の稼働率はほとんどフル回転してるんですね。これは、全部の公民館に共通することなんです。そうすると、トータルの利用者数が少ないから、こっちの公民館は廃館して、その人たちはよそを使ってくれと言っても、使えないわけです。そういう状態の中で利用者数だけを見て廃館することを決めることは、正しい選択とは言えないではないのではないかと思います。
 時間別の稼働率では、利用者の少ない公民館では、午後と夜間には使われなくなることもわかるんです。そうであれば、廃館するよりも午前中はそのまま生かしておいて、午後と夜間をいかに有効活用していくのか、あるいは収入を上げていくのか、そういうことを考えるほうがいいのではないか、そういう計画になっています。
 例えば、まだ実現するには道が遠いと思いますが、夜、公民館が使われていないなら、学習塾として使ってもいいんじゃないかという発想だって生まれてくるわけです。なぜそう思ったかというと、自分の娘が中学校に通っているときに、テストが終わると学校から成績の一覧が送られてくるんです。テストの成績って、平均のあたりが一番多くなっていて、一つの山ができるはずですよね。それが通常のパターンだと思うんです。ところが、今の子どもたちは山が二つできてしまうんです。何かと思ったら、成績が高い方の山は、子どもを塾に行かせるお金のある家庭の子。もう一つの成績が低い方の山は、全部とは言いませんが、子どもを塾に行かせるお金のない家庭の子。それはちょっとおかしいなと。親の所得で子どもの学力が決まってしまう世の中でいいんだろうかと、個人的な思いがあるんです。
 駅前のビルを借りて塾をやると月謝3万円だけど、公共施設を開放して、そこで家賃ではなくて時間に応じた使用料でやれば、月謝1万円とか、1万5千円で同じ塾をやってもらえるのではないかと思うんです。あるいは、それでも月謝が払えない家には、バウチャーじゃないですが、塾へ通う意欲があるのならそのチケットをお渡しするなど、いくらでもやりようはあるんじゃないかと。こういう分析結果を見ていると色々と、妄想かもしれませんが、そういったことが膨らんでくるんです。それをやるためには、社会教育法の枠をかけてしまっていると、だめなんです。営利ができないとなっていますので。ですから、そういうことも含めてこれからのことを考えると、公民館は公民館のままでいいんだろうかという課題も浮かび上がってくるんです。

稲継   今、お伺いしていると、非常に興味深いといいますか、各公の施設はそれぞれの所管、省庁が決まっていて、下りてくる補助金が決まってきて、各法律に縛られている部分がありますよね。ところが、公共施設白書ということで、市役所として公の施設を全部検証したら、いろんな利用の仕方があり得ると。そして、それは今のさまざまな規制の壁を破ったほうが、むしろ市民の利益になることがあり得るということが、この白書をつくることによって、そして稼働率の時間別の分布を見ることによって、見えてきたと。

志村   そうですね。

稲継   単に公の施設の管理、運営、その評価だけではなく、そもそも社会教育のあり方とか、あるいは学校教育のあり方とか、塾のあり方とか、いろんなところに波及してくるすごく大きな話になってきますよね。

志村   そうですね。どんどん広がっていくんです。同じ公民館で言えば、稼働率だけで見ると調理室ってあまり使われないんです。これはどの公民館も全部同じなんです。それならば、午前中は他の部屋がフル回転しているのなら、会議室みたいなサークル活動に使える部屋に変えてしまえばいいという意見もあると思うんです。ところが、現場で見てみると、そういうものじゃないとなるんです。その調理室では、地区の社会福祉協議会の方が、地域の高齢者への配食サービスのボランティアでお弁当を作ったりしているんです。そういった実態も見ると、表面の数字だけでこの機能はなくすわけにはいかない。これから高齢化が進んでいけばなおさらなんですね。
 では、どうすればいいかですが、秦野市の公民館は学校と隣接しているものが多くて、学校にも調理室はあるんですね。それで、学校の調理室が年がら年中使われているかというと、そうではない。家庭科の調理実習があるから調理室を作らないといけないというのであるんですが、稼働率という視点で見れば、公民館と大差ないと思うんです。そうしたら、この二つを一つにしたらどうかと思うんです。今まで公民館に100平米の調理室がある。学校にも100平米の調理室がある。どちらも使える時間の2割も使われていないとしたら、その2つを1つにしてしまえば、今までよりも少し我慢する、譲り合うことは必要かもしれないが、100平米で2つの公共施設が持っていた機能を賄えるのではないかということが見えてくるんです。客観的データを用いれば、残せる箱物の面積が限られている中で、面積は減らしながら機能は維持していくという方法もいくらでも出てくるのではないかと思うんです。
 ところが難しいのは、学校の中にもいると思いますし、公務員の中にも多いですけど、俗に言う「もんだ族」という方たちですね。

稲継   「もんだ族」とは?

志村   公民館とはそういうもんだ、学校とは、教育とはそういうもんだということに固執してしまう人たちです。そこから抜け出てこられないと、1つの施設を双方が使おうといった発想はなかなかうまくいかないのかなと思います。これも私の妄想かもしれませんが、調理実習の授業で高齢者への配食サービスのお弁当を地域のボランティアの方と一緒に作ってもいいと思うんです。教科書に載っている簡単なサラダとトースト、ハムエッグじゃなくて、ほんのお手伝いでもそういうお弁当を一緒に作る。最後に、中学生がメッセージカードでも書いて、それぞれのお弁当に添えてあげたら、受け取るほうは非常に嬉しいんじゃないかなと。単に家庭科の授業だけではなく、子どもの教育という部分でもいろいろと波及して効果が表れるのではないかと思っているんです。ただ、さっきも言ったように、学校の中にも「もんだ族」がたくさんいますから、指導要領とかあってそういうもんじゃない、という話になるかもしれませんが。そういった部分まで発想がどんどん広がっていくんですが、それはすべて公共施設白書を作ったからこそできるんじゃないかと思うんです。

稲継   なるほど、はい。今おっしゃった、もんだ族というのは、どこにでも生息していて、その意識を変えるのが本当に大変だけど、自分の専門分野から皆さん「もんだ、もんだ」っておっしゃるんだけど、では、一市民の視点からしたらどうかというと、横串でいろんなところが連携し合うほうが、むしろ市民にとってはプラスになるということですね。

志村   そうですね。

稲継   その横串で一連の物が見られるようなものが今までなかったけれども、この公共施設白書によってそれが見られるようになったということですね。

志村   そうですね。この仕事を始める前は、自分ももんだ族だったかもしれないですからね。

稲継   そうですか(笑)。

志村   こういう仕事を経験したことで、もんだ族はよくないなと。特にこれからはそれでは無理だなというのが見えてきたというか。

画像:秦野市役所
秦野市役所

稲継   なるほど。このパンドラの箱を開けるとおっしゃいましたが、公共施設白書を作る自治体としては、秦野市がパイオニア的な存在だったと思いますが、全国にもかなり出てきたとお聞きしたましたが。

志村   秦野市よりも先に作っているところはいくつもあるんですが、「差し障りのあることを書いている」ということで、秦野市の白書は非常に特徴的なのかなと思います。もちろん、庁内から袋だたきに遭いましたよ(笑)。なんで、そんな寝た子を起こすようなことをするんだ、ということですね。でも、我々は、そうしていかないともうだめなんだとわかっていたので、当時、部長は課長と私に「3人でサンドバックになるぞ(耐えろよ)」とよく言っていましたが、まさにサンドバック状態でしたね。最初はがちゃがちゃします。これはどの自治体に聞いてもそうです。そこでひるんでしまって、やめてしまう、表現を変えてしまう自治体が多いんです。でも、秦野市は頑として譲らなかった。それが今につながっているのではないかと思います。

稲継   頑として譲らなかった背景には、何がありますか?

志村   公共施設白書を作ってみて、将来、市民にとって大変なことが起きてしまうということが、我々はわかっていたからです。ここで我々が踏ん張らずに、それを引っ込めてしまうということは、将来の市民に対して非常に無責任なことになる。庁内だってみんな仕事でやっているわけですから、話せばわかると。そのうち理解してもらえるんだということで、「何とか歯を食いしばってやっていくんだ」とよく3人で話をしていました。最初は、サンドバックなんて嫌だと思いましたけどね(笑)。

稲継   そうですよね(笑)。

志村   最初は、部長1人でサンドバックになってくれと思っていましたけど、仕事が進めば進むほど、部長のおっしゃっている言葉の意味がよくわかりました。誰かが踏ん張って明らかにしておかなければいけないことだと、まさに本当にそうだなと。

稲継   この白書を公表された後、方針と計画を策定されました。この辺のことについて教えていただけますか?


 庁内の各部署が管理する公共施設のすべてについて、土地、建物の面積、設置年、根拠法、耐震補強の有無、年間経費、稼働率などを調査して、市の保有するすべての公共施設に関する白書を作成した志村さん。財政力から考えて、将来残せる施設がそれほど多くないことを知り愕然としたという。
それを公表するにあたり、庁内各部署からの抵抗も強く、サンドバックになることを覚悟した。