メールマガジン

第77回2011.08.24

インタビュー:足立区総務部長兼危機管理室長 定野 司さん(下)

 災害対策課長として学校への備蓄を進め、また、新しい防災計画を作る仕事に携わっていた定野さんに突然、財政課長への異動命令が出る。定野さんはそれまで財政課に属したことはなかったので、通常の自治体人事からいえば異例の抜擢といえるだろう。


稲継 その次に財政課長になられたんですね。

定野 はい。普通なら、私が財政課長になることはなかったと思うんです。年も40歳になったばかりで若かったし、多分、候補者はたくさんいたはずです。一つは区政の政権が大きく代わったことです。これも偶然でしょうね(笑)。もう一つは、災害対策課にいたときの仕事ぶりを見られていたんだと思います。財政課長になって仕事の幅が一気に広がりました。

稲継 全庁の仕事ですからね。

定野 全庁の仕事ですから、私としてはやりがいもあって、ものすごく楽しかったです。一番記憶に残る仕事は、「包括予算制度」ですね。

稲継 「包括予算制度」についてご説明いただけますか。

画像:定野 司さん
定野 司さん

定野 はい。予算化というのは各部から予算要求をしてもらい、それを査定という行為で潰していくわけです。財政課は、それで歳入と歳出のつじつまを何とか合わせるというのが、普通の予算査定の制度です。包括予算制度では、そうではなくて、あらかじめこの部にいくらという枠を与えておいて、その中の査定は各部にやらせる、つじつま合わせを各部にやらせるというのがこの包括予算制度の骨です。財政課がやる仕事は、そのフレームを決めることと、それから予算執行の後、事務事業評価を行う。これが包括予算制度の仕組みです。それを平成14年度に、環境部と衛生部にモデルとして導入し、平成15年度から全庁で実施しました。このネタは、多分その前の年、財政課長を半ば過ぎたぐらいから、自分自身の疑問から始まっているんです。
 それまでの予算査定では、小さい話で言えば、鉛筆1本の予算を削ったり、時刻表も各課ごとに要らないから半分とか査定するわけです。ところが、いろいろ詰めても、各課が努力をしても、その努力の果実は財政課長の果実なんです。つじつまを合わせた努力というのは財政課の努力で、各課が一生懸命努力してもフィードバックされない。

稲継 なるほど。

定野 「ありがとうね」ともらっていってしまう。あるとき、「ちり山作戦」というのを考えたんです。平成11年、12年頃の財政が厳しいときです。「ちり山作戦」で、各部で切り詰められるものはないか考えてこいと。「ちり山作戦」と言ったのは、私としては、楽しんで削ってくれという意味があった。考えてみると、みんなが一生懸命考えて削っても、がさっと財政課が頂きです。それで、こっちに付けようとかあっちに付けようとかやるので、何の努力の結果もフィードバックされない。

稲継 インセンティブが働きませんね。

定野 ええ。これは、担当課にとっては「ああ、切られちゃった」と不満だけが残るんです。挙げ句の果てには、何か仕事をしていても、住民の方から「これは何だ」と言われても、財政課に切られて予算がないからと言い訳に終始してしまう。今でも忘れないのは、予算課長(現在の財政課長)に就任したばかりのとき、「予算課長はどこだ!」と怒鳴り込んできた区民の方がいて、私なんか就任したばかりですから前任者のことを言っているわけです。予算査定で影響を受けた方が怒鳴り込んできたんです。これは違うなとその当時から思っていたんですが、やはりそうした査定を繰り返しているうちに「違う」という思いがつのって、この包括予算制度を組み立てたんです。一つの理由は、おっしゃるようにインセンティブが働いていない。庁内でインセンティブを働かせるということ。もう一つは、当時、行政評価がうまくいっていなかったんです。行政評価は「選択と集中」を科学的にやる道具だ、と我々は聞かされていたんです。行政評価室が予算課の隣にあって、うまくいかないんです。当時は、労多くして何の役にも立たないと考えられていました。

稲継 手間がかかりますね。

定野 手間がかかります。手間がかかっているのに、何のためにやるのかわからない。最終的には、それを予算査定の道具に使おうと思ったんだけど、現場ではそれを見越してみんな隠すわけです。指標をいいかげんに作ったり。優先順位なんかすごいですよ。法定事務を一番最後にもってきちゃうんですから。

稲継 優先順位が最後でも、法定受託事務なら削れない(笑)。

定野 指標だって満点に近いものを並べてみたり。これは使えないなと。その根っこは何かといったら、予算を切られるツールにさせたくないから各課は嫌がるんです。だから、私がつくったその包括予算制度では、各課に枠を与えたらその中の仕事のやり方はとにかく各課に任せる。ただ、事後にどういう事業をやったは評価室がチェックをする。実は「包括予算制度」の導入後、行政評価室と財政課は一緒にしてしまうんです。それで事前の査定ではなくて事後の評価へもっていくという流れをつくって、行政評価、事務事業評価を機能させる。だから、「包括予算制度」には、二つの目的があったんです。インセンティブを働かせるということと、事務事業評価を機能させるという点です。

稲継 なるほど。

定野 その後、平成15年4月に当時の経済財政諮問会議が視察に来ました。来られたのは当時の竹中平蔵大臣・・・

稲継 本間正明さんですね。

定野 はい、そうです。お二人で見えて、当時の竹中大臣が「何で足立区にできて国にできないの?」という質問をするんです。二つ理由を言いまして、まず一つ目ですが、自治体は、今は特例でいくつかありますが、当時は赤字債を出せない。歳入と歳出のつじつまを合わせるために国のように赤字債を出すということができなかったので、現金で合わせないといけない。これはものすごく危機感がある。そのためにこういうシステムを導入したんです、という説明をしました。私は今でもそうだと思っています。国は何やかんやと言いながら・・・

稲継 最後は・・・

定野 最後の切り札で、莫大な国債を出しているわけです。それに比べると自治体というのは、爪に火をともすようなことをやりながらつじつまを合わせているというところが全然違います、という説明をしました。
 もう一つの理由は「リーダーシップの差」と言ってしまったんですが、当時のリーダーは小泉純一郎首相ですから、「リーダーシップがない」と言ってから、あっ、まずいなと思いました(笑)。
 その後、いろいろな場所で「包括予算制度」の話をしています。実は足立区も何十年か前に一度実施しようとしましたが失敗しているんです。それは、財政部門が査定をすると偉くなったような気持ち、査定をやりたいという気持ちが根底にあったためです。
 私はそれを逆手に利用したわけです。私がこの「包括予算制度」を入れるときに、財政部門のほとんどの職員はみんな反対しましたから。

稲継 そうでしょうね、はい。

定野 だけど、財政課長である私に権限があったからできた。逆に言えば、すごい権限だったということです。財政部門が一人で考えるのではなくて、やはり現場の知恵で現場の問題を解決するという非常にシンプルな考え方なんですが、それができるようになったのはものすごくよかった。ただ、「あてがいぶち」の予算を消化するだけではなくて、考える頭を持った現場の人間になってほしいというところがポイントです。そうすると人間ってもっとよく働くんです。楽しみも出てくるわけです。それを、どこの誰だかわからない財政課長に、ああでもない、こうでもないと言われ査定されるわけじゃないですか。これほど面白くないことはないですよね。そうすると、上手に仕事を隠します。査定されないように、削られないように。そんなエネルギーがあるなら、ほかに使った方がいいと思いませんか。
 その後、動いた先が環境部の清掃課長です。平成14年度に「包括予算制度」のモデルとして導入した部署です。

稲継 最初に制度を導入したところですね。

定野 環境部の中の清掃部門は平成12年度に東京都から事務事業の移管を受け、大量の職員と予算を引き継いでいます。私自身、はっきり言ってここは改革の「ドル箱」だと思っていました。だから、いろいろな改革をしてアイデアを出せば、コスト削減も図れるだろうしプラスになるだろうと思って臨むんです。案の定、3年間でいろいろ楽しいことがありましたね。

稲継 例えばどういうことがありました?

定野 「粗大ごみの無料持ち込み制度」はその最たるものです。粗大ごみは1個500円とか200円とか料金を取るじゃないですか。資源循環型社会、リサイクル社会の中で、ごみは有料化という流れです。ところが足立区では、ごみを持ってきたら無料にするという制度を導入するんです。足立区内では、粗大ごみを中継所まで収集するだけで3億円かかっていました。その後の処理も入れるともっとかかります。では、手数料はというと300円、500円取っても収入は9,000万円程度です。ということは、差し引いて2億1,000万円の持ち出し。これこそ役所らしい仕事で、普通、民間ならプラスにならないからやらないわけです。でも、役所だからこそ税金を投入している。だったら、「取りに行かないから持ってきてください」とすると赤字事業を減らすことができます。収入も減りますが、経費の減り具合の方が大きいわけです。そこに目を付けました。今までだったら、財政課に持っていけば、やっと有料化したのに無料化するなんてあり得ないと言われるでしょう。でも、そこは「包括予算制度」ですから、実施できるわけです。トータルで物が考えられる。そういうアイデアを自分たちでつくったから困難を乗り切れる。無料持ち込み制度を実施すると収集にあたる事業者の仕事が減る。事業者から「私たちの仕事が減るじゃないか」と文句が出る。ほかの区からも、横並び意識が強いですから、何で足立区だけ無料なのかと。最後は、「無料にするとごみが増える」とも言われました。

稲継 そうですか(笑)。

定野 いや、本当に。そういうのを一つ一つ潰していきます。最後は、無料で持ち込めるのは、区民にとってもいい話ですからね。

稲継 そうですね。

定野 区民の目線で考えるとこのシステムはどれだけいいのか。そして、コストも削減できる。実は組合も仕事が減るから反対するわけです。最終的には民間委託でやることにしました。こうして、コストが3分の1に減ります。このコスト計算をするのに、ABC(Activity Based Costing:活動基準原価計算)の手法を入れたり、勉強しました。また、経済産業省の研究会に入らせていただいて、それが御縁で、「包括予算制度」「粗大ごみの無料持ち込み」その他のいくつかの仕事について、いろいろなところでお話をするきっかけができました。
 清掃課長として3年いまして、その後選挙監理委員会事務局長を2年務めました。事務局長は、選挙がないときはどんな仕事をしているのかご存じですか?

稲継 あまり無さそうですね。

定野 そうなんです。よく言われたものです。でも、それが充電期となってちょうどよかったんです。これまでやってきた仕事を分析したり、いろいろなところに行ってお話をさせていただいたり、ため込むことができたと。選挙管理委員会でも楽しい仕事はいくつかありましたけど、それよりも充電期というのが大きかったです。

稲継 その後本を書かれたんですよね。

定野 はい、本を書き出したのは、その次に環境部長として戻ってからです。環境部は以前いたところですから、「環境サミットin足立」とか、ちょうど時運に乗っていろいろなことをやりました。でもそれよりも大きかったのは、「環境部長だから環境省の事業仕分けを手伝ってくれないか?」と言われて、自民党の無駄撲滅プロジェクトに参加したんです。そこに行って、こういうものがあるのかと。「事業仕分け」は聞いたことはありましたが、私は手を出したことがなかったんです。当時、23区の環境部の部長会の会長として環境省に陳情に行くことはあっても、事業の仕分けをすることなど考えてもいませんでした。参加してみて、こういう面白い仕事があるのかと思いました。その後、構想日本からお誘いがあり、それで一緒にやるようになるわけです。事業仕分けは、自分の仕事の幅を広げましたね。中から外を見るだけではなく、外からまた自分のところを見られる。これは自分にとてもプラスになっています。役人って井の中の蛙じゃないですか。自分のところしか知らない。ところが、ほかを見ると自分のところがどうなのかがよくわかる。
 なおかつ、もう一つ面白いのは、庁舎の中にいれば、当時は環境部長、今なら総務部長という役職があるわけです。ところが、外へ出ると裸一貫で何もない。「あいつは誰だ?」と。自分がしゃべったり、物を書いたり、そういうところで能力を判断されるわけです。そういうことがテストされるのは、管理職試験以来です。これも醍醐味ですかね。だから、「事業仕分け」で私が何かをしゃべったときに住民の方が「そうだな」とうなずいているのを見たとき、ああ、来てよかったなと思うんです。平成22年度は6カ所の自治体の事業仕分けに参加しましたが、一つ一つどれも楽しい仕事でした。

画像:ビューティフル・ウインドウズ運動の横断幕
ビューティフル・ウインドウズ
運動の横断幕
 その後、平成22年度から総務部長となりましたが、環境部長の終わり頃から、治安再生という新しいテーマをいただいて、「ビューティフル・ウィンドウズ運動」を進めています。市町村でよくある所轄署とではなく、足立区と警視庁が直接覚書を結びました。犯罪の発生件数は、東京都の自治体の中で足立区が一番多かったんです。それも4年連続で、東京では有名です(笑)。ところが、犯罪の内容は、自転車泥棒が3分の1で、大きな犯罪ではなくて小さな犯罪が多い。人口比にすると犯罪の発生件数は中位にあります。しかし、そんな言い訳は通用しません。区民も自分であまりいいイメージを持っていないし、外からは実態より悪いイメージで見られている。だから、ここで犯罪の件数を下げることを一つの目標にして、もっと足立区を宣伝していきたい。私がいま宣伝できるのは「包括予算制度」ですが、それ以外できるとすれば、この「ビューティフル・ウィンドウズ運動」で、いま何を考えて、何をやってきたのかということを次の何かに結びつけていきたいなと思っているんです。

稲継 なるほど。これは環境部長のときに「ビューティフル・ウインドウズ運動推進本部長」になり、総務部長になっても引き続き務められているわけですね。

定野 そうなんです。そういうことです。私にやれという話ですから。

稲継 属人的なものですね(笑)。

定野 そういうことですね。環境部長の最後の年に「覚書を結ぶから、おまえがこの仕事をせよ」と命ぜられるんです。私はこういう性格ですから、「楽しそうですね。ぜひやらせてください」と言いました。たまたま総務部長になるんですが、私はどこの部長になってもやるつもりでした。もうこういう年令ですから、どこの所属に行ってもやる仕事は同じですよ。足立区のセールスマンになるというのが私の仕事で、そのためにどんな仕事をこれからするのか。これからどれだけの仕事ができるのかということだと思います。

定野 最初に腰掛けで足立区に入ろうと思ったところから・・・

稲継 どんどん楽しくなっていったという感じですね。

定野 そうですね。今が一番楽しいですね。昨日も職員に言ったんですが、私が入ったときは管理職試験しかなかったんですが、職員がだんだん増えてきて主任、係長、管理職と全部試験を受けなければいけなくなりました。やはり、自分一人で仕事はできませんから、若いときには仲間をつくってチームでやる。ところが、主任、係長になってくると、今度は組織もつくらないといけない。課長になると、今度はその他に予算が使える。ほかのものも使える。部長ならもっと使える。だから、役所の中で楽しくやろうとすれば、楽しくなるような工夫をしていかないといけないだろう。役職というのはその一つの道具です。ただ、役職で「私の仕事はここまで」という方が多すぎるから、私はそうではなくて、ただの道具なんだから、それがないときはどうするのかということを自分で考えればいいと思っているんです。

稲継 なるほど。

定野 若手職員には、「自分の殻を打ち破れ」と言っています。自分はここまでしかできないと思う瞬間って、人間は誰しもありますよ。それが「いっぱいいっぱい」という言葉なんですが、最近よく聞く言葉なので、そういうときはチャンスじゃないのかなと。「いっぱいいっぱい」ということは限界に来たということで、その限界を突き破るチャンスが今来たということですから。

稲継 限界を突き破るチャンスですか?

定野 ええ、チャンス。「いっぱいいっぱいになる」ということは、まだ余裕があるということですもんね。余裕がなくなったときに、自分の限界を越えられる。そうすると、ひと回り大きな自分がそこにある。
 実は、去年そういったことをまとめて、「包括予算制度」を考えながら自治体予算の本を書きました。でも好きなことはいっぱい書けるんですが、どうしても書かないといけない、でも書くことができないこともあるじゃないですか(笑)。アイデアが出ないときもあるわけです。自分で、あぁ、ここまでかな、と思うことが一度や二度じゃないんです。そんなとき、やはり自分を追い込んでいって、あるとき「ポッ」と、あの出る瞬間が忘れられなくて仕事をしているんだと思います。そういう瞬間が味わいたくて。だから、「これ、頼むね」と言われて断ったことはありません。

稲継 けっこう雑誌などに執筆されてますね。

定野 そうですね。書くことは嫌いじゃないので書くことがあります。新聞を読むときも、その記事に対する自分の考え方を書いておくことにしています。そうすると、いろいろなところで何が起こっているか間違いなく読むし、掘り下げられるじゃないですか。自分の考えもそうだけど、いま東京都やほかの区、市で起こっていることを、よく、深く読むことができる。ただ読んでいるだけだとだめだと思うんです。

稲継 流れちゃいますね。

定野 そうです。それはただの情報でしかない。そうではなくて、自分なりの考えを持っておくということですかね。これがとても面白い。私にとってはそれも仕事です。「仕事って何なの?」、それは人生なんです。人生があって、仕事があって、できれば別ではなくて一緒の方がいいので、それをクロスオーバーさせておく。そうすると、仕事でもあるような、自分の生活の一部でもあるような、ということを繰り返していれば、どちらも楽しい。残念なのは、今、若手でも、うつになったり、何かにつまずいてしまったりする人がいます。多分、逃げるところがないんだと思います。だから、逃げるところをたくさんつくっておいた方がいい。
 若いとき、パソコン雑誌の記事を書いていたことがあります。要するに、趣味でも何でもいい、何か考えることを自分に与えるんです。今は当たり前だけど、アメリカで発売されたPDA(Personal Digital Assistant:携帯情報端末)の批評の記事を書いてくれと雑誌社に頼まれたていたこともありました。

稲継 そうですか。

定野 思えばあれも楽しかったですね。今、執筆依頼で多いのは、本業に近い予算制度の改革とか、コスト削減の話とか、最近は行政改革の話なんかも多いですね。
 行政改革って歳入と歳出のつじつま合わせなんです。私はそれを打破したいと思っていて。私たちがやっている行政改革というのは、税収が下がってきたけど、やることがあるから何とか歳出とのつじつまを合わせようとするだけで、住民には全然関係ないですよね。もし改革の努力が住民に返るようにしておくと、住民も喜ぶじゃないですか。さっきの「粗大ごみの無料化」のようなことがもっとできないのかなといつも思っています。行政改革は誰のためにやるのか。役所というのは税金が入ったら全部使う。簡単に言えばそうでしょう。
 役所って仕事をしないと金が残るんです。普通の会社ではあり得ない話です。普通の会社は、動いて利益を上げて給料(収入)を得ているじゃないですか。役所は定期的に給料(税収)が入るから、黙っていると金が残る。そこを何とか変えたいんです。それには行動が必要で、そういうふうに考える人間を増やさないといけません。役人って採用のときからそうやって訓練されていないので、寒くなると穴蔵に引っ込んで出ないようにじっとして、嵐が過ぎるのを待って、のこのこと出てくる。もうそれでは、ずっと生き埋めになってしまうのが現実です。そうならないように、外へ出て動ける職員を育てないといけませんね。そうでないと、守りに入っていては、住民に対しても説得力がないと思うんです。そういう人材をつくっていきたいし、そういう人材をどう育てるかも考えたいです。

稲継 なるほど。そういう人材をいかに育てるかということが重要ですね。貴重な話をありがとうございます。今日は足立区の定野司さんにお話をお伺いしました。どうもありがとうございました。

定野 ありがとうございました。


 定野さんと会ったことのある人はわかるが、この人はどの話題も常に楽しそうに話をする。毎日が楽しくて仕方がないといった感じだ。人生を楽しみながら、仕事を楽しみながら、そしてさまざまな変革をしかけていく。「いっぱいいっぱい」は限界を突き破るチャンスだと、定野さんは言う。「余裕がなくなったときに自分の限界を超えられる」という、少し禅問答のような話も、この人から聞くと、なるほどどうなずいてしまう。
 「役所は定期的に給料(税収)が入るから、黙っていると金が残る。そこを何とか変えたいんです。それには行動が必要で、そういうふうに考える人間を増やさないといけません。」と定野さんは言った。自治体職員に「変革力」が求められている。