メールマガジン
分権時代の自治体職員
第21回2006.12.20
職員研修―6
研修所のタイポロジー
研修所研修といっても、職員研修を行う機関には、いくつかの類型がある。
第1に、自己研修所である。府県や政令指定都市はじめ一定規模以上の自治体は、それぞれの独自の自治体研修所を持っている。また、施設としての研修所を有していなくても、研修担当者を配置して、研修計画を策定し、人事課主催の研修を行っている場合も多い。これらをまとめて、自己研修所研修と呼ぶこととしよう。この場合に、受講対象者は当該自治体の職員に限られることになる(当該自治体の外郭団体職員をも対象とする場合も多い)。
第2に、府県単位で、市町村職員を集めて行われる研修所である。市町村職員を対象とした県自治研修所がその典型例である。県自治研修所(県内の市町村職員を対象とした研修所)は、県職員研修所(県職員を対象とした研修所)とは別組織であるのが一般的であるが、同じ建物内に並置して、教室などの施設を共用する場合もある。さらに、市町村職員と県職員をまったく同等に扱って、同じ研修プログラムを適用するふくしま自治研修センターやひろしま自治人材開発機構(広島県自治総合研修センター)などの例も出てきた。
第3に、全国規模で職員を集めて行われる、自治大学校、市町村アカデミー(全国市町村振興協会・市町村職員中央研修所)などの組織がある。このメルマガの発行元であるJIAM・国際文化アカデミー(全国市町村振興協会・全国市町村国際文化研修所)も、そのような組織として位置づけられる。
上記の1型、2型、3型の研修所は、それぞれ、対象とする職員が異なるだけでなく、そこで提供される研修もまた、一定の棲み分けが必要である。
例えば、接遇研修のようなものは、1型で行われるのが一般的だろう。接遇研修の指導者を養成する研修は、2型の研修所で行われる場合が多いだろう。また、「使用料・手数料、債権回収に関する手法」や「市場化テストの具体化」などは、3型の研修所における研修になってくるものと思われる。
重要なことは、これらの研修所類型間の棲み分け、機能分担について、関係機関相互で、協議し、相互補完を心がけることである。現在でも一定の情報交換やニーズ調査、意見交換会などがもたれているようであるが、今後、研修費用がますます削減されていく中で、全国の自治体全体の研修がどのように機能分担を図るべきか、調査し、検討していく機会が、一層必要になってくると思われる。
コラム:広域研修機関と県職員研修所の合体―ふくしま自治研修センター
大部分の都道府県においては、広域的な市町村の共同研修所が設置されているが、都道府県の研修所とは独立したものとして扱われている。同じ建物の中にあったとしても、それぞれの研修は別になっており、希に、相互交流と称して研修の乗り入れを行っているに過ぎない。
しかし、その原則と例外がまったく逆になっている研修機関がある。「(財)ふくしま自治研修センター」である。センターの設立までの経緯は次のとおりである 。
1984年、研修に対する市町村格差が出ていたこと、市長会や町村会からの要望があったことから、福島県市町村職員研修所が開設された。その後、1986年、福島県知事と市町村長代表の懇談会において、自治研修所の設置要望が出されたことがきっかけとなって検討が進められ、1988年3月設置検討委員会が「県職員及び県内市町村職員の一体的研修を実施する財団法人の研修所の設立」を提言し、同年11月、県と市町村の折半出捐により、(財)福島県自治研修センターが設立された。1992年4月に、研修施設が完成したことに伴い、財団名を(財)ふくしま自治研修センター、と改称し開所している。また、1997年には、研修センターを母体として、地域の視点に立った政策研究や提言活動、企画能力の高い職員の育成などを目的とする「シンクタンクふくしま」も設置している。
ふくしま自治研修センターの特徴は、なんと言っても、県と市町村を完全なイコールパートナーととらえ、すべての研修において県職員と市町村職員が合同(市町村職員:県職員=6:4)で行っている点にある。
ふくしま自治研修センターの場合は、基本的には全ての研修で、県職員と市町村職員との間の区別はない 。この研修システムのおかげで、県と市町村職員との間のネットワークも、他県に比べてずっと強いものがある。
(稲継裕昭『自治体の人事システム改革―人は自学で育つ』230-231頁。)