メールマガジン

第136回2016.07.27

インタビュー:天童市総務部市長公室ふるさと納税推進係 主査 沼澤 賢次さん(上)

 ふるさと納税は平成20年度以前に設けられていたが、ここ数年急速に脚光をあびることになった。総務省の現況調査によれば、平成24年度の総額が104億円だったのが、平成25年度145億円、平成26年度388億円、そして平成27年度には1,652億円と飛躍的な伸びを見せている。平成27年度の全国ランキング第3位に入ったのが山形県天童市である。納税額が急増するきっかけとなったのは、担当者沼澤さんの「フルーツを主体に」「将棋の駒のストラップ」という発想だった。いかにも派手な職員を想像してしまいがちだが、実は、入庁後、税務課4年、財政課5年そして行政改革と地道な仕事をこなしその後、ふるさと納税の担当者となった。



沼澤 賢次氏

稲継  今日は、山形県天童市にお邪魔しまして、市長公室の沼澤さんにお話をお伺いします。どうぞ、よろしくお願いします。

沼澤  よろしくお願いします。

稲継  まず、天童市のことを簡単にご紹介いただけますでしょうか。

沼澤  はい。天童市は、山形県内のちょうど中央部。山形県は人の顔の形をしているんですけど、よく耳たぶぐらいの位置と表現しますが、その辺に位置していまして、南が県庁所在地の山形市、東に東北で一番人口の多い仙台市がございます。どちらかというと、工業地帯というよりは近隣市町村へのベッドタウン的な意味合いが強いまちでございます。ただ、昔から将棋の駒の産業がございまして、教科書などでも紹介されるのですが、全国の生産量の90%のシェアを誇ると言われている将棋の駒の産業が、伝統工芸の一つになっております。
 あと、気候的には出羽三山等の山々に囲まれた、夏が非常に暑くて、冬は非常に寒いという、盆地型の気候でございますので、サクランボとか、ラ・フランスとかそういったフルーツが、昔から盛んに栽培されているという場所になります。

稲継  将棋の駒というのは、いつごろから作られているんですかね?

沼澤  そうですね、江戸時代の藩士・吉田大八が、将棋は兵法にも通じるので武士の地位を貶めるものではないということで、天童藩が財政的に窮地に陥ったときに、武士に将棋の駒の製作を奨励したというのが始まりになっています。

稲継  もともと財政再建の一つのツール、地域活性化の一つのツールが将棋の駒だったんですね。

沼澤  そうです。

稲継  駒のもとになる木は?

沼澤  木地になる木は伊豆諸島にある御蔵島産や薩摩産の黄楊(ツゲ)という木というのがメインになります。

稲継  伊豆諸島とか薩摩とかすごく離れたところから、木地を輸入して、それを駒に仕上げていったというのが、起こりですね。

沼澤  そうです。

稲継  なるほど、ありがとうございます。あと、昨日、今日ずっとうろちょろしていると、結構白い小さな花が咲いている、果樹園がたくさんあって。あれがサクランボの木ですかね。

沼澤  そうですね。今、ちょうどサクランボが開花しまして、白い花が咲くのがサクランボですね。

稲継  なるほど。あと、ポスターで「人間将棋」と書いてあるのを見かけたんですが、これはどういうものですか?

沼澤  人間が将棋の駒になり代わって、舞鶴山という市の中心部にある山の山頂で、プロ棋士が将棋の対局をするという、天童市の一番メインのイベントですが、ちょうど明日と明後日が対局の日になります。

稲継  ちょうど今、山桜とかが開花していて、しだれ桜や川沿いの桜がきれいに咲いていますね。時期的にはそれに合わせる感じですか?

沼澤  そうですね。桜祭りというのが3週間ぐらいあるんですけど、その桜祭りの中のメインイベントが人間将棋というイベントになります。

稲継  ありがとうございます。この天童市役所に沼澤さんが入られたのは、平成15年ということですね。最初にどういう部署に配属になられたのでしょうか?

沼澤  総務部税務課市民税係というところに配属されまして、私が最初の年に担当したのは、法人市民税と個人市民税の賦課関係でした。

稲継  ここで実際にどういう仕事をやられましたか? あるいは、やっている中でこういうことを疑問に思ったとか、感じたとか、何かありましたらお話しいただきたいのですが。

沼澤  結構前の話なのですけど、当時、今は違うのですが、税の賦課をホストコンピューターで計算していたので、容量的に2年分しかデータを持てず、それ以前の修正は手計算だったんです。

稲継  2年間?

沼澤  2年間分しかパソコンを使えない。ホストの容量的に。税の更生可能な期間は5年間あるじゃないですか。残りの過去3年遡って更正する場合は全部手で計算していたんです。それが、非常に今に合っていないなと感じました。それで、Excel上で、ちょっとシステム化をしまして、自動で計算できるようなソフトを作らせていただきました。

稲継  それは、素人でも簡単に作れるものなんですか?

沼澤  私、パソコンって特に大学でやってなかったんですが、Excel上にあるビジュアルベーシックというプログラムを使いました。それを扱う先輩からいろいろプログラミングを聞いて、あとは、税の計算はかけ算、たし算、割り算、引き算の世界なのでそれでやっていくと。結構時間はかかりましたが、作れました。


天童市役所

稲継  そうなんですか。その結果、先ほどおっしゃった2年だけではなくて、過去5年に遡って計算できるようになった?

沼澤  そうでしたね。

稲継  汎用コンピューターで非常にお金をかけてやっていることと同じこと、プラスアルファの3年分がExcelでできるようになるというのはすごいことですよね。

沼澤  複雑な計算が結構多いので、何回もプログラミングを間違えるんですが、完成したときは嬉しかったですね。今まで過年度処理は1か月ぐらいかかる処理だったんですけど、それがだいぶ短縮されましたし、間違いもなくなりますし、作ってよかったと思いますね。

稲継  それは入庁してすぐのころですか?

沼澤  2年目ですね。平成15年に入庁して、最初は税の勉強をして、2年目に作った感じですかね。

稲継  平成15年に入庁されて2年目というのは平成16年。

沼澤  16年ぐらい。

稲継  ちょうどその頃、三位一体の改革だとか、大騒ぎしていた頃ですよね?

沼澤  そうですね、三位一体もございました。

稲継  税制も大きく変わったと思うんですけど、その頃どんな感じでしたか?

沼澤  そうですね、一体改革があった後の住民税の賦課の問い合わせがすごかったですよね。国税は下がっているんですけど、住民税の賦課がいきなり倍になっているので、その電話の応対が大変だったなと。特に、給料から天引きではない人は年4回で納めないといけないので、そのクレームとかが結構あったかなと思います。

稲継  三位一体の改革で国税、所得税を減らした代わりに、市民税、一律10%に上がったと。トータルで納める税金は変わってないんだけど、市民にとっては、痛みを感じてしまう。税務署に対してはなかなか言いにくいけど、市役所に対しては言いやすいので、いっぱい文句の電話がかかってきたと。

沼澤  クレームの電話は多かったですね。

稲継  どんなこと言われました?

沼澤  「暮らせない」と言われました。ここまで取られると。「税金だけ払って、俺らは食う飯もない」という問い合わせも出たりしますよね。

稲継  どういうふうにお答えになっていたんですか?

沼澤  基本的には、制度の仕組みをお話しするので、所得税と住民税を合わせると同じなんですよ、というお話をして、ご理解していただく。税は国民の義務でもあるので、本当に丁寧に制度の説明をするしかないのかなと思いました。

稲継  説明するって、なかなか難しいですよね。

沼澤  難しいですね。納得してない方の方が多いですからね。

稲継  それは、説明に長けた上司とか先輩の方々が周りにいらっしゃったわけですか?

沼澤  いるんですけど、問い合わせがひっきりなしで、みんなそれぞれ1対1で相談しているので、みんな対応しながら、経験して覚えるしかない感じですね。

稲継  その電話対応はどれくらいの間続きましたか?

沼澤  最初の1年ぐらいですね。最初の賦課計算をして、納税通知書を送ったときが一番ワーッとくる。あとはポツリ、ポツリと来るという感じになるので。

稲継  入庁されて最初に市民税係に配置になって、システムの開発、Excelで5年を遡れるシステムを作ったり、外的な要因で三位一体の改革で市民税が急に上がったことに対する市民の反応があったり、そういった経験をされました。この係には何年ぐらいいましたか?

沼澤  4年間ですね。

稲継  次はどういう部署に移りましたか?

沼澤  次は同じ総務部の財政課財政係というところに異動しました。

稲継  ここではどういうことを担当しておられました?

沼澤  そうですね、1年目が財務会計システム。それまでのホストコンピューターから、サーバー・クライアント方式の財務会計システムへの移行を1年目に担当しました。

稲継  導入は業者に委託してということでしょうか。

沼澤  そうですね。業者に委託してなんですけれども、ちょうど財務会計以外の部分で、電子決済システムとかが入っていたので、それと連携させる形で入れていったり。あとは、ホストコンピューターが2年分しか情報を持てなかったので、予算要求から決算統計までの、うちのフォーマットに合ったような形の、設計は業者任せでしたけど、そんな開発をしていましたね。

稲継  一番、苦労されたのはどういうところですか?

沼澤  財務会計システムの開発は対職員ということで苦労しました。

稲継  対職員で苦労?

沼澤  伝票をきる人はある程度、ホストコンピューターの場合は固定されます。全部のパソコンにホストコンピューターが入っているわけではないので、課に1台、2台しかないという中で、もう伝票をきる人は固定化していて、その人は何年何十年とそのシステムを使っていたので慣れているんですよ。それが、操作性が全く変わるシステムに移行するので、その説明は結構つらかったですね。

稲継  ああ、そうですか。内部の抵抗はすごいですか?

沼澤  システムを変えると内部の抵抗は非常に強いですね。

稲継  これはあまり市民には関係ない、市民からは何も言われることはないけれども。

沼澤  市民にはまったく言われないです。

稲継  庁内の職員から、わりとベテランさんから言われると。

沼澤  そうですね。

稲継  そのときには、どういうふうに説得されましたか?

沼澤  ホストコンピューター自体が時代に合わなくなっている、もう制度改正に追いつかないというのが現状だったので。ただ、電子化されるので、今までの電子化されていない状況で発生していた手間、例えばこの庁舎から、例えば会計課に伝票を持って行ったり、歩く手間とかがなくなるじゃないですか。そういうところで事務が軽減されますよ、というお話をさせていただきました。

稲継  なるほど。それを開発して入れました。職員の反応はどうだったですか。一般の職員もみんな関係してくるわけですよね。

沼澤  そうですね、今までは本当に庶務の担当の人しか伝票をきらなかったのが、今度は全員できるようになったので。でも、評価は半々でしたね。電子化することで今度は請求書をスキャンしないといけないので手間が増える、という意見もあれば、作業を分けられるので、一人に偏ることがなくなったし。逆にほかの職員の方も財務規則とかある程度熟知できるようになりますし。評価は半々ですね。

稲継  そうですか。でも、長い目でみると、導入されてから10年近くたって、今はもうみんな当たり前のように使っている。そうすると、やっぱり入れておいてよかったということですよね。

沼澤  そうですね。入れておいてよかったと思いますね。役所の予算を執行するとか、予算を要求するというのは、やっぱりある程度みんなができるようになっていかないといけないとは思うので。それをホストコンピューターの場合はなかなかできなかったので、財政の仕組みを分かっていただくという上ではよかったのかなと思います。

稲継  なるほど。これが1年目で、財務会計システムの開発をされたということで。2年目には何か新しいことを?

沼澤  2年目がちょうど財政健全化法の施行がございまして、その財政健全化法の健全化判断比率を算出するための資料が膨大に来たというのが1点と、あとは新地方公会計制度というのがその頃流行りだしまして、基準モデルか、もしくは総務省改訂方式のどちらかをとらないといけないと。長い目でみたときに、総務省改訂方式は段階的に基準モデルに近づいていくというお話があったので、どうせやるんだったら、ということで基準モデルで新地方公会計制度を整備したというのが2年目でしたね。

稲継  いきなり従来の単式簿記から複式簿記への移行というのは、役所の人間は全然慣れてない。それを導入するのは、これも結構大変な話だったと思うんですけども。

沼澤  そうですね。今思うと大胆だったなと思いますけどね。元々が税務課にいて、その後に財政課だったので、正直、役所の仕組みは全く何も分からないんですよね。歳入しか分からない。税務部署だから。市税は分かるんですが、歳出の方が分からない。そもそも予算の款項目ってなんだというところから、財政課に異動になって、交付税は財政課も税務課も基準財政収入額を使うのでいいのですが、「起債って何?」と。そういうレベルから、いきなり公会計というのが来て、「複式簿記って何?」と。逆に無知だったから基準モデルにいけたのかなと思います。

稲継  怖いもの知らずで。そこそこ知っていたら、そこまでは飛躍できないなと。

沼澤  そうですね。結局基準モデルで役所の持っている資産を全部評価し直さないといけないというのがあったので、土地の評価をするのだけで3万筆ぐらいあったんですかね。そのほかに建物とか付帯設備の評価があって、役所の資産の洗い出しと評価というのが、時間がかかりましたね。

稲継  今までこういうことって、役所としてやってなかったんですよね、資産の洗い出しというのは。

沼澤  台帳と取得原価はあるのですが、それしかない。

稲継  減価償却も何もしてないし、今いくらの資産かは分からない状態ですよね。それを、できるようにしたというのが公会計制度ですよね。

沼澤  そうですね。

稲継  職員の方からの反応はどうでしたか?

沼澤  職員は、他の基準モデルをやったところのように組織を整備して評価したというわけではないんですよ。ただ資料を出してもらって、時価評価は私がしたので、職員の反発とか、そういうのはないですね。それよりも土地とかを覚えるのに非常に苦労しましたね。
 土地をまったく勉強したことがない、そういった部署にいなかったので。土地の地目から何から何まで。役所のここにこういう資産があって、こういう経緯でこういうものがあるんだよみたいな。路線価ってこうだよとか、そういうのを勉強するのが大変だった。

稲継  いったん、資産の洗い出しをしておくと、例えばそれを時価評価したり、公共施設の再配置の議論のベースのデータを作ったりといったことが非常に容易になりますよね。

沼澤  そうですね。

稲継  それがなかったら、証拠なしに言い合いしているようなところを、これがあればエビデンスに基づける、証拠に基づいて議論できるようになるので、非常に私は大事な話だと思っております。これを開発されたのが平成20年ですね。今8年経ちました。実際に、何かこういうことに活用されている、ということはあれば教えてもらいたいんですけど。

沼澤  そうですね、一番いいのは公共施設の再配置、再編関係に使えたり、予算の編成に使えれば一番理想的だなとは思うんですけど、なかなかそこまでいかないですね。施設ごとの行政コスト計算書というのを出せれば本当は一番いいし、ランニングコストとの二者コストを比較するのが一番理想なんでしょうけど、今の段階では作って、役所のフローとストックの部分を把握して、で、水準としてここまでいくと危険かなというベースにはなりますけれども、そこまでまだ成熟してないです。

稲継  まだこれから、ということですね。

沼澤  だと思います。

稲継  総務部財政課財政係に動かれて1年目に財務会計システム開発、2年目に公会計の基準モデル導入ということをやってこられました。この財政係には何年ぐらいおられることになったんでしょうか?

沼澤  5年です。

稲継  5年間。ほかの期間はどういうことを担当しておられました?

沼澤  予算の査定とか、交付税とか起債とか、そういう感じですね。

稲継  では、天童市の予算についての査定の権限の一端を担っておられたということで理解してよろしいですか?

沼澤  一番下のポジションなので、その補佐をしたというか、フォローをしたというか、そんな感じですね。

稲継  財政を担当すると、市の仕事の全体像がなんとなく見えてくる。

沼澤  見えますね。

稲継  全体が見えたときに天童市について何か感じられたことはありますか?

沼澤  トータル的にはそろっているなという感じがしましたね。基本的にコンパクトなシティなので、当時県内でも市民一人当たりの借金残高は少なかったですし。いろんな公共施設も比較するとある程度そろっている。うちは区画整理が昔から一生懸命な自治体なので、地盤もある程度そろっている。トータル的にはバランスは取れている自治体だなとは思いました。ただ、歳出の方も見えてくると、よく言われるんですけど、それを外部に発信する力が弱いなという感じでした。

稲継  それをというのは、財政のバランスが取れていることを発信するということですか?

沼澤  天童市の魅力を外に発信する力が。あまり積極的ではないかな、という感じです。

稲継  割と控えめな土地柄の方々だったんでしょうか、江戸時代から。

沼澤  そうでもないんでしょうけれども、隣に勢いのある市があるので。

稲継  どこですか?

沼澤  東根市なんですけど、あちらは人口がしばらくずっと増えているんです。そっちがだいたい新聞とかに取り上げられるので、よく比較されて、「天童市はなんでこんなんなんだ」という話をよくされるんですよ。でも、実態を見るとトータルバランスはこちらの方が、というと語弊があるかもしれませんが、トータルバランス的には優れているなというふうにはとれるので、そこをちゃんとPRできるようにしていかないといけないんだろうなという。

稲継  なるほど、天童市の魅力をどうやってPRしていくのかということですね。ありがとうございます。5年おられたとおっしゃったんですけど、5年の後、どういう部署に異動になったのでしょうか?

沼澤  半分財政課なんですけど、次に異動したのが、行革推進本部事務局兼市長公室政策企画係兼財政課財政係。

稲継  3つも仕事もらって、給料は3倍にならなかった?

沼澤  (笑)同じですね。何も変わりませんでしたね。

稲継  3つも肩書きもらって、何をやったんですか?

沼澤  その年に肝いりで、今までの行革というのが歳出削減、または歳入確保という、要は身の丈にあった財政に合わせるという部分での行革はある程度までいっていたけども、そこから一歩進んで、身の丈にあった財政に合わせるんだけれども、行政としての経営をどう回すか、という視点の部分。生み出した財源をどう市民の方に還元していくか、という新たな視点の行革をやりましょうというお話になりまして、行政経営計画というのを策定する部署に異動させていただいたんです。

稲継  行革の方針を策定するということですね。

沼澤  そうですね。

稲継  それはどういうプロセスでどういうふうに作っていかれましたか?

沼澤  組織としては、市長を本部長として、あと、有識者の方を3名ほど入れて、有識者懇談会という形の組織であったんですけれども、あとはヒアリングですよね、基本的には原課の方とヒアリングをして、これから身の丈に合った経営をしていくために、見直しできることはないか、というところから始めて、そこから試算してこれだけの財源が生み出せると。新たに時代が変わって行政課題が変わってきているので、どういった方面に充てていきますか、という形のヒアリングをしていたような感じですかね。

稲継  各課順番にやっていった?

沼澤  そうですね。

稲継  私が仮に原課の担当者だったとしたら、「うちはまったく無駄がありません」と絶対に言い張るかなと思うんですが、実際はどうですか?

沼澤  現実にはありますよね。特に、業務見直しの基本方針というのを作って、人の話に切り込んでいるので、直営でできるもの、臨時職員に切り替えができるもの、委託できるもの、という棲み分けをしたので、そこの部分での抵抗というのはあったんでしょうけど。でも、比較的天童市は皆さん協力的でした。

稲継  じゃあ、皆さんに協力していただいて、ヒアリングの結果、それから、有識者の提言などをまとめて、行政経営計画を策定されたと。これはどれくらいの期間がかかりましたか?

沼澤  ちょうど1年です。その行革推進本部という部の位置づけをしたのは1年間のみ。1年で解散です。

稲継  この3つのポジションを兼務しながら仕事をされたのは、何か難しさみたいなものはなかったですかね。

沼澤  3つの組織の兼務だったので、行革推進本部では、そういうお話をさせていただいて、企画側では、総合計画の実現のために実施計画をまずつくると。あと、ちょうど総合計画の中間年度だったので、施策の検証をしないといけないと。で、検証の結果、足りないものについては、ある程度アクセルをふかさないといけない、というヒアリングをしていくんですけど、最終的な場面で、今度財政課を兼務しているので、自分たちがヒアリングしてふかしたアクセルを、財政課の身の丈にあったところでブレーキをかけないといけない。それをやっているのが、私はその行革推進本部の中でも、企画の中でも財政課の中でも一番年齢が若いので、そんな権限はない。その辺が難しかったです。

稲継  そこはどういうふうに調整というか折り合いをつけられましたか?

沼澤  それぞれの上司、企画なら企画、財政なら財政の係長、課長補佐がいるので、その方と連携するしかない。あとは企画と財政の連携。そこをうまく折り合いをつけていくしかない。

稲継  庁内でいろいろな連携をとっていく。立場が違う、スタンスが違うということはあるけども最終的には住民サービスの向上という点では一緒ですよね。それをどういう方法で、どういう経路でやるか。若干スタンスは違うけれども、同じ方向を向いているということなんでしょうね。

沼澤  そうです。

稲継  はい、ありがとうございます。1年で解散しちゃった。次はどういう仕事になりますか?

沼澤  次は兼務が取れたので、市長公室の政策企画係というところで。

稲継  どういう仕事をやっておられたんでしょうか?

沼澤  そのまま引き続き、総合計画の達成のために実施計画ですね。うちは3か年の実施計画を作るんですけれども、3か年実施計画の策定だったり、明治大学との連携事業であったり、高速交通関係の仕事だったり。

稲継  高速交通?

沼澤  空港が近くにあるんで、メインはほぼ県ですけど、事務局の一員というか、そんな感じの。あとは、行革の進捗状況だったり、そういう担当をしていました。


 入庁してすぐに、個人市民税や法人市民税の賦課、申告支援システムの導入や賦課計算ソフトの開発に携わった。三位一体改革の時期で税制にとっても大きな転換期だった。財政課では、財務会計システムの開発、2年目に公会計(基準モデル)の導入を行っている。効率的な行政経営の在り方を学ばれたと思う。そして、平成24年4月に行財政改革推進本部事務局(兼)総務部市長公室政策企画係(兼)総務部財政課財政係という職務を割り当てられる。忙しさは半端ではなかった。1年後に兼務がとれ、政策企画係専任となった。(以下、次号)


このコーナーは、稲継氏が全国の自治体職員の方々にインタビューし、読者の皆様にご紹介するものです。
ご意見、ご感想をお待ちしています。(ご意見、ご感想はJIAMまで)