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第114回2014.09.24

インタビュー:玉野市人事課の皆様(上)

 Facebookを活用する自治体が急増している。武雄市は自治体広報Facebookの先駆け的な存在だが、採用試験情報に関していうと、玉野市が特筆される。受験生にいかに市役所を良く知ってもらうか、いかに採用試験プロセスでの透明化をはかるか、玉野市人事課ではさまざまな工夫をしている。


画像:玉野市役所
玉野市役所

稲継  今日は岡山県玉野市にお邪魔しまして、人事課(あるいは元人事課)の皆さんにお話をお伺いすることにいたしました。よろしくお願いします。

全員  よろしくお願いします。

稲継  私がこの玉野市の人事課に注目したのはもう3年近く前になります。Facebookの採用情報というページで、玉野市さんが玉野市のFacebookではなくて、玉野市職員採用情報という、それに特化したFacebookを作っておられて、受験生に様々な情報を提供しておられることを知り非常に驚いた記憶があります。
 当時はまだ国や自治体の方でも非常に珍しい事例で、その後玉野市さんを追いかけるように、いろんな自治体、あるいは国の方でも一部やるようになったんですけど、当時は非常に珍しかったと思います。
 まず、このFacebookの話について、三ノ上さんにお話をお伺いしたいと思います。
 これは、どうして始められました?

画像:中央 三ノ上 創氏(総務部人事課課長補佐)右 増田 浩子氏(社会福祉部長寿介護課介護保険係係長)左 岩崎 康博氏(総務部人事課人事研修係係長)
中央 三ノ上 創氏(総務部人事課課長補佐)
右 増田 浩子氏(社会福祉部長寿介護課介護保険係係長)
左 岩崎 康博氏(総務部人事課人事研修係係長)

画像:取材風景
取材風景

三ノ上 採用情報のページよりも先に、平成23年の11月に玉野市のFacebookページが立ち上がりました。その頃、民間企業のFacebookページは結構ありましたけど、自治体での事例は少なくて、県内の自治体では玉野市が初めてでした。
 私個人も、その1年前位からFacebookを使っていましたが、本名を明かして顔出しで使うものですから、これは趣味だけじゃなくて、仕事上でも使えるんじゃないかという感覚は持っていました。そんな中で、広報担当が市役所公式のFacebookを始めました。私は採用の担当をしていましたので、この流れで採用に使えると面白いなと思って、平成24年の年明けぐらいから準備を始めました。しばらくは民間企業の採用のページにどんな投稿がされているのか情報を集めたり、広報担当と一緒にFacebookページの使い方を勉強したりして、実際にオープンしたのが平成24年の6月です。

稲継  そうですか。2012年の6月ということになりますね。

三ノ上 12年ですね。

稲継  当時自治体で採用のFacebookをやっていたところは、他にもあったんですか?

三ノ上 多くはありませんでしたけど、例えば和歌山県の有田川町さんのページは、いろいろ参考にさせていただきました。

稲継  ただ、玉野市さんのやつは何でも載せているというイメージで衝撃的でした。

三ノ上 最初のうちはやっぱり職員の紹介とか、そういうのが中心だろうなと思っていました。Facebookを開始したころは、採用試験の二次試験の内容を変更したり、人物重視を謳い始めた時期でしたので、「こんな試験をやります」というものを載せました。受験する方にとっては、一次試験のペーパーテストがどんなものか想像がつくかもしれませんが、それ以外の試験科目、例えばプレゼンテーション面接の様子なんかはわかりません。受験案内に書いていることしかわからないという状態なので、Facebookでは二次試験でプレゼンをしているポーズを若手職員に取らせて、「こんな感じでやりますよ」みたいなのを出すとインパクトがあるんじゃないかなと。試験の詳しい審査基準までは出せませんが、それ以外なら採用に関することを何でも出せばいいんじゃないかと思っています。例えばプレゼン面接だったら、「プレゼンの内容よりも、コミュニケーションが普通にできる人かどうかというのを見ていますよ」とか、そういうことも出して、安心して玉野市の採用試験を受けてもらおうと。そうすることで、受験する人も増えるんじゃないかなと。

稲継  普通受験生はブラックボックスで採用試験要項と、あと受験場所ぐらいしか情報がなくて。

三ノ上 そうですね。

稲継  一体どんな人たちがどんな試験をやって何を見ているのかって全然わからないので予備校に行って、いろいろお金を払って知るわけです。そういった情報は全部玉野市さんの場合はFacebookでわかるわけですね。

三ノ上 それと、公務員という漠然とした一般像はあるのかも知れないですけど職員の仕事ぶりというのもなかなかわかりづらいと思います。我々も採用されるまで、どんな仕事をやっているのか、ほとんど分からない状態でした。それが具体的に税や保健、協働、施設修繕、企画的な部門や、我々みたいな人事、いろんな仕事があるんですよというのを具体的に職員に語らせたり、我々が取材して掲載することで、市役所の業務に具体的なイメージを持ってもらって、市職員の仕事に魅力を感じてもらいたいと思います。

稲継  やっぱり一般人、学生にとってはごくわずかな人は除いて、役所というと本当に市民課の窓口しか知らないと。あと、テレビドラマなんかで見るのは、刑事ものの警察ぐらいしかないですよね。普通の本当に一般事務職員がどういう現場でどういう仕事をしているのか全然わからないところがあると思います。それをFacebookの方でいろいろ紹介するのは、学生、受験生にとっても非常に安心できる材料ですよね。

三ノ上 そう思います。あと、受験生ばかりじゃなくて、地元の方、一般の市民の方が結構見てくれています。間接的ですが、地元の方に対しても市の職員頑張っているよとアピールできているのかなと思います。

稲継  なるほど。見ている方は受験生、市民、他には?

三ノ上 他は県内外の人事担当者。

稲継  人事担当者が見ている。

三ノ上 ええ。

稲継  彼らから何か反応があったりしますか?

三ノ上 先ほど言った有田川町の採用担当の方とは、採用情報のFacebookをきっかけに、採用試験の情報交換をするようになりまして、有田川町の方が参加されている勉強会に誘われて、玉野市や岡山県内の他の採用担当者も参加するようになりました。
 他の市役所で部長をされている方から、Facebookで投稿した記事に応援のメッセージを入れていただいたりとか、そういうつながりもできています。

稲継  なるほど。市民の方からどういう反応がありますか?

三ノ上 直接はないですね。

稲継  ないですか?「ここまで表に出していいのか」とか、そういう批判とかありませんか?

三ノ上 今のところ批判はありません。ただ、玉野市に関係する方からではないんですが、Facebook上で冷やかしのようなコメントは何回かありました。コメントでこちらから返事をしたり、不適切な内容なら「非表示」にして他の方からは見られないようにするといった対応をしています。Facebookページの「基本データ」にも、不適切なコメントは非表示にしたり削除する、というような説明を書いています。

稲継  なるほど。いろんなものを出す中で、実際に人事で働いている人たちの顔も後に出していくわけですよね。三ノ上さんご自身......。

三ノ上 増田や岩崎も......。

稲継  2号と呼ばれる増田さん、それから3号と呼ばれる岩崎さんも顔を出していくわけですけども、その辺、顔のさらしは抵抗なかったですか?

三ノ上 そうですね。以前から広報紙でも職員の写真を載せて制度の紹介記事を出したりしていましたので、それほど抵抗はありません。やっぱりFacebookは実名が基本ですし、顔の見える記事でないと面白みがないので、若手職員を紹介するのも、顔写真出して名前も入れてということで始めていました。そんな中で1カ月ぐらいして、若手職員に出てもらっているのに自分たちが出ないのはダメだなということで、2人で。

稲継  ついに出ましたね。何で1号とか言うんですか?

三ノ上 あれは、もともとは「人事の中の人」とか言っていたんですけど......。

稲継  中の人ですか。

三ノ上 広報がやっている市のページでは「こんにちは、中の人です」という言い方をしています。その広報担当と人事担当がFacebookのコメントでやりとりすることがあって、そのときに広報担当が「人事の中の人」という呼び方をしたんです。それがきっかけで我々自身も「人事の中の人」と名乗るようになったんですが、「中の人」というのは裏に隠れたような存在で顔が見えにくいので、ちょっと抵抗はありながら続けていました。
 このインタビューを受ける機会にと思って先日調べてみたんですが、1号、2号と言い始めるのは、かなり後になってからでしたね。採用情報のFacebookを始めて半年くらい経った平成25年の1月に、リクナビに情報を掲載することになりました。リクナビでは職員の指向タイプ診断というのがあって、私と増田の指向タイプがこうだった、という記事をFacebookに載せたことがあります。そのときに投稿した増田が、「1号は何々タイプ、2号は何々タイプ」という言い方をしたのが最初です。そこからもしばらくは「中の人」と言ったりしていたんですけど、増田が異動することになって、3月の末に最後の投稿をしたときに「人事の中の人2号です」という言い方をしました。で、後任の岩崎は最初2号を使おうとしたんですが、これはもう個人に付いた番号だから、おまえは3号だと。

稲継  永久欠番みたいな。

三ノ上 そうです。

稲継  なるほど。

三ノ上 それで岩崎が「人事3号の岩崎です」と名前を出したんです。で、もう名乗ってしまったら、その次からも名乗らないといけない雰囲気になってしまって、私も「1号の三ノ上です」と名乗り始めました。ですから、名前を名乗って書き始めるまでには結構時間がかかっています。

稲継  なるほど。そうですか。今何かお話をお聞きしていると、非常に明るい人事課の雰囲気をほうふつとさせますが、人事課というと非常に堅くって守秘義務に守られていて、ほかの部署の人とはなかなか飲みにもいかないというのが、一般的なほかの自治体の一般的なイメージです。しかし玉野市の人事課はかなり明るいイメージを持ったんですが、人事課の風土みたいなもの、2号の増田さんどうですか?

増田  そうですね。先生がおっしゃられたみたいに、人事課の風土としては明るい風土がある気がします。難しい仕事もありますが、日中は結構冗談が飛び交っていたり、笑いが起こることの方が......。

稲継  人事課の中で笑いですか?

増田  はい。笑いが起こることは多いです。

稲継  それはどういうところから来ているのでしょうか?

増田  三ノ上さんでしょうか?

三ノ上 変な冗談ばっかり言ってます。

増田  冗談がちょくちょく飛び出して、それを必ず誰かが突っ込むというやりとりが頻繁にあって、そういうところで和むことは多い気がしますね。

稲継  岩崎さんもどうですか? 人事課に異動してきて、明るいなという雰囲気でしたか?

岩崎  そうですね。でも仕事面では、「ああー」みたいなことがありますけど......。

稲継  暗いのは同じですよね、分限処分をしたり。

岩崎  そういうのもあるので。人事課の仕事として情報が出せるものと出せないものとがあるので、出せないものはやっぱりしっかり守っていかないといけないと思っています。それ以外のところで言えば、やっぱり先生が言われたように明るい雰囲気というのはあるのかなと思います。メリハリがある気はしますね。

稲継  人事課の仕事って日本の自治体のイメージとしては、人事を動かしている中枢権力のど真ん中にいると。しかも、分限処分あるいは懲戒処分をする権限を持っている、さまざまな給与決定にあずかるものであるという、何か超越したイメージがあるんだけど、そういうことは全然意識せずに、それは権限として与えられているんだけど、それは淡々とやって、本来、人の力を引き出して役所がいいものになるものが、本来の人的資源課というんですかね。人事課の役割だと私なんかは思っています。そういう意味ではこの明るく仕事ができる人事課の玉野市さんというのは、非常に僕はうらやましいな、いいなと思ったりしているところです。
 先程、人事課の皆さんと廊下を歩いていたら、すれ違った職員の方が皆さん挨拶をされていましたね。

三ノ上 職員同士だけじゃなくて、市民の方や出入りの業者さんにも挨拶するようにしています。どこの課に行ったらいいのかわからなくて、困ってそうなお客様がいれば、近くに居合わせた職員が声をかけたりもします。
 実は何年か前まではそういう雰囲気じゃなかったんです。市民の方からは「職員は挨拶もしない」という苦情をいただいたりもしていました。それじゃあダメだということで、平成19年度に当時の人事課長が先頭に立って「あいさつ一声運動」という活動を始めました。人事課の職員が、職員の登庁時に役所の入り口に立って、挨拶しながら職員にチラシを配るという、地道な活動でした。
 それでもなかなか職場の雰囲気は変わらないので、市長からの強い指示もあって、平成22年度に「住民満足度向上研修」というのを半年間かけて行いました。ちょうど増田が人事課に異動してきた年で、最初の大きな仕事になりました。


 採用情報Facebookをはじめた玉野市人事課。職場の雰囲気はとても和やかで明るい。市役所の雰囲気も良い。取材に訪れた際、市役所の中を一人で歩いていると、色々な職員から声をかけられた。これも人事課が「あいさつ一声運動」を展開して、現在の状態まで職員力を向上させたことによるものだ。