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第08回2005.11.24

自治体組織の人材育成―3

 人材育成のために、最も重要なポイントは「自学」(自ら学習する、自己啓発)をいかに促すのかという点である。能力開発のためのプログラムをいくら用意したところで個々の職員がそれにコミットしなければ全く効果がない。効果測定不在の集合研修を何度受ける機会を与えたところで,また,いくら有名な講師を呼んだところで,受講者が能力開発の意欲をもたない限りすべて公費の無駄遣いに終わる。個々の職員がどれだけ新しい知識や考え方を学び,自らの能力を高めようとするのか,というモチベーションを引き出す仕組みが最も重要である。

「人は自学で育つ」

 人的資源を開発するのは、当該従業員、職員自身である。「馬を水辺まで連れて行くことはできるが、水を飲みたがっていない馬に無理に水を飲ませることはできない」といわれる。事情は人間でも同じである。いくら豊富な「職場外研修」(Off-JT)のメニューを用意したところで、職員本人がその水を飲みたがっていなければ、喉が渇いていなければ、効果はない。せいぜい、研修時間中座っていることを強制できるだけであるが、本人の頭の中にストンと入っていくためには、それを受け入れる姿勢、気持ちが必要である。

「人は自学で育つ」
  人材育成の基本は「自学」(自己学習、自己啓発)である。自ら学び,学習し,成長する必要がある。人が育つプロセスの本質は、本人の自学のプロセス、自ら学習する自学のプロセスである。人材育成のために周りの人間が行い得ることは、その「自学」のプロセスに刺激を与えることにすぎない。厳密にいえば人は育てられない、育つのを助けることができるだけである。
 では、どのようにすれば、個々の職員の自学を刺激することができるのであろうか。
 
  9月号の質問への回答を考えると、いくつものヒントが湧いてくるはずである。
9月号で出した質問は次の通りである。
「自治体職員であるあなたは,今まで、どのような時に一番成長しましたか?どのようなことがあなたの能力を向上させたと思いますか?」

 各人それぞれ、答えを頭に浮かべたことと思う。筆者の所に(JIAMを通じて or 直接)に寄せられた回答は次のようなものだった。
    「重要だと思える仕事を任せられ、勤務時間だけでなく、夢に出てくるほど仕事に没頭していたとき」
  「他に頼る人がなく、追いつめられて自力で局面を打開する必要が出てきたとき」
  「先輩や上司から課題を与えられてそれを達成したとき」
  「どうしてもやらなければならないとき」
  「海外長期派遣研修生として州政府で働くことになったとき」
  「ちょっと無理をしないとできないな、と思えることに敢えてチャレンジしたとき」
  「異なる組織の人と継続的に交流をして刺激を受けたとき」
  どうやら人は、そうせざるを得ない状況に置かれたとき、もっともよく学び、自己変革を遂げるもののようだ。そのような状況をつくってあげること、自学促進のための状況を現出することこそ、人的資源管理の担当セクションである人事担当の責務である。
 自学がどのような時に刺激されるのかを考えていったとき、ポイントの一つはジョブローテーションや職務割当の変更であり、人事評価である。人は新しい仕事を割り当てられたときに、チャレンジ精神が鼓舞され、それに一生懸命に取り組もうとすることが多い。また、上司や同僚に、よく頑張ったね、とほめられたとき(評価されたとき)、何ともいえない達成感を味わう。
  昇任を目の前にして、試験に取り組んで様々な知識の広がりを習得することもあるし、昇任後、新たな役職に任命されて、そのための自学に取り組む人も多い。
  さまざまな人事諸制度が、自学の刺激につながるのである。図に示した、様々なシステムが相互に連動しながら、自学を刺激していくものと考えられ、ひいては、能力開発・人材育成へとつながるのである。研修制度はその中のひとつに過ぎない。

自学を促す人事給与システム

図:自学を促す人事給与システム

  しつこいようだが最後に繰り返しておきたい。

「人は自学で育つ」