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第21回2016.12.28

2016年多文化共生10大ニュース

日本における多文化共生社会の形成にとって大きな影響を及ぼすであろう2016年の10大ニュースを選びました。

・大阪市がヘイトスピーチへの対処に関する条例を制定 ヘイトスピーチを規制する全国初の条例である「大阪市ヘイトスピーチへの対処に関する条例」が制定されました。被害を受けた市民からの申し立てで、有識者等からなる「ヘイトスピーチ審査会」が審査し、その結果をもとに大阪市がヘイトスピーチと認定し、発言内容の概要や団体・氏名を市のホームページなどで公表する仕組みとなっています。同条例は7月1日に全面施行されました。(1月)

東京都が多文化共生推進基本指針を策定 昨年7月に多文化共生推進検討委員会を設置した東京都が、多文化共生推進の基本的な考え方と施策の方向性を示した「東京都多文化共生推進指針~世界をリードするグローバル都市へ~」を策定しました。東京都にとって多文化共生に関する初の指針となります。「多様性を都市づくりに活かし、全ての都民が東京の発展に向けて参加・活躍でき、安心して暮らせる社会の実現」を基本目標に掲げています。(2月)

ヘイトスピーチを規制する法律を初めて制定 昨年の国会では、ヘイトスピーチ問題に対処するため、人種差別撤廃施策推進法案が審議されていましたが、継続審議の末、差別的言動に焦点をあてた「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」が制定されました。差別的言動解消に向けた国や自治体の責務を明らかにし、相談体制の整備、教育の充実、啓発活動等の基本的施策を定めています。なお、法務省はヘイトスピーチに関する実態調査の報告書を3月に公表しています。(5月)

日本再興戦略が外国人の生活環境整備を掲げる 政府の重要文書である「日本再興戦略」において、多様な働き手の参画の一環として、「外国人材の活用」が位置づけられ、「外国人受入れ推進のための生活環境整備」が掲げられました。可能な限り早期に日本語指導を必要とする外国人児童生徒の日本語指導受講率 100%を目指すことや、本年度中に「外国人患者受入れ体制が整備された医療機関」を40か所程度に拡充するといった数値目標も示されています。(6月)

・文科省の有識者会議が外国人児童生徒教育等の報告書を作成 文部科学省が昨年11月に設置した「学校における外国人児童生徒等に対する教育支援に関する有識者会議」が、「学校における外国人児童生徒等に対する教育支援の充実方策について」と題した報告書を取りまとめました。「これからの外国人児童生徒等教育にあたっての基本的な考え方」として、「多文化共生に基づく外国人児童生徒等教育」を掲げるとともに、「外国人児童生徒等教育における国の基本的な方針を示す」ことを求めています。(6月)

・ミスワールド日本代表に外国ルーツの吉川プリアンカさんを選出 世界3大ミスコンテストの一つに挙げられるミスワールドの日本代表に、インド人の父と日本人の母を持つ東京都出身の吉川プリアンカさんが選出されました。2015年のミスユニバースにも外国ルーツの宮本エリアナさんが選ばれており、2年連続で「ハーフ」の女性が日本代表となりました。吉川さんも宮本さん同様、多くの外国メディアに取り上げられました。吉川さんは宮本さんの活躍に勇気づけられ、日本代表を目指そうと思ったと語っています。(9月)

日本語教育を推進する超党派議連が発足 超党派の国会議員が集まり、日本語教育推進議員連盟を結成しました。会長に河村健夫衆議院議員(自由民主党)、会長代行に中川正春衆議院議員(民進党)、事務局長に馳浩衆議院議員(自由民主党)と、3名の文部科学大臣経験者が幹部に就任しました。日本で働く外国人や留学生等の日本語教育を充実させるため、日本語教育振興基本法(仮称)の制定を検討する方針で、日本語教育を推進する基本計画の策定を政府に義務づける内容になる見通しです。(11月)

経団連が「外国人材受入促進に向けた基本的考え方」を発表 日本経済団体連合会が提言「外国人材受入促進に向けた基本的考え方」を公表しました。今後、受け入れを推進すべき外国人材として、「高度人材」、「社会基盤人材」と「生活基盤人材」に整理したうえで、「多文化共生政策の推進」を掲げ、「外国人の受け入れ拡大に備え、日本全体の問題として多文化共生に取り組む」ことを求めています。また、多文化共生に関わる活動を企業自ら取り組むことも有益であるとしています。(11月)

夜間中学の拡充等を進める教育機会確保法が成立 「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」が成立しました。その中には、不登校児童生徒への支援の他、夜間中学(義務教育の未修了者を対象とする中学校夜間学級)における就学機会の提供も含まれています。現在、夜間中学は8都府県に31校が設置されていますが、文部科学省では、夜間中学が少なくとも各都道府県に1校は設置されるよう、その設置を促進しています。文科省が2014年度に初めて行った実態調査では、夜間中学在籍生徒の約8割が外国人でした。(12月)

公立小中学校で外国人の日本語指導を担当する教員が増員に 政府が2017年度予算を閣議決定し、同年の公立小中学校の教職員定数は、全体で今年度から3282人減らすものの、発達障害を持つ児童生徒らへの通級指導や外国人児童生徒への日本語指導を担当する教員を増やすこととしました。教職員定数は、児童生徒数に応じて自動的に決まる基礎定数と課題に応じて特別に増員される加配定数からなりますが、これまで、加配定数に含めていた通級指導や日本語指導を基礎定数に組み込み、安定的に教員を配置できるようにします。(12月)

<番外編>
・政府が2030年に訪日外国人数を6000万人とする新目標を設定 政府は、「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」(議長・安倍晋三首相)において、訪日外国人数を「2020年に4000万人、30年に6000万人」に増やす新目標を定めました。政府は日本の経済成長には「観光立国」の推進が不可欠とみて、インバウンド観光の推進に力を入れています。2015年の訪日外国人は1973万人で、「2020年に2000万人、30年に3000万人」とした従来目標から大幅に上積みし、受け入れ環境の整備も急いでいます。(3月)