メールマガジン

第06回2015.09.24

外国人観光客の受入整備と多文化共生の地域づくり

2013年、訪日外国人観光客1,000万人の目標達成の翌年に、日本政府は東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年までに2,000万人の外国人観光客の受入目標を発表しました。2015年1月から8月までの間だけで、既に1,287万人を超えており、外国人観光客による経済効果は確実に日本社会を牽引する大きな力になりつつあります。

ところで、外国人観光客による経済効果の波及範囲は、ほとんど大手百貨店や全国展開の電化製品取扱店、衣料品販売店、ホテルなど、一部のお店に限っており、古き商店街、小売店、民宿といった地域のお店や宿泊施設が出遅れたかたちになっています。全国津々浦々まで景気回復どころか、観光立国においてもその波に乗れていない地域が目立ちます。せっかく外国人観光客がたくさん来日にているにも関わらず、地域とつながっていないのはとてももったいないことです。一方で、外国人観光客の受入を手探りたくても、言葉が通じない、メニューや看板など多言語に対応できていない、具体的にどうすればよいかわからないという地域の声も聞こえます。

全国各地で多文化共生に取り組んでいる地域国際化協会、行政、民間団体、市民には、従来の地域の日本語教室や外国人コミュニティサポート支援などの事業を通じて、多言語、多文化に対応できる人材がたくさん現れてきています。多文化共生の現場で培ったノウハウ、資源を外国人観光客の受入整備にうまくつなげていけば、きっと多文化共生の推進、外国人観光客の受入整備、また地域の活性化による一石三鳥の効果が期待できると私は思います。

観光立国を目指している日本政府は外国人観光客に来てもらうための情報発信、WiFi環境整備、多言語案内パンフレット作成のような事業には積極的に取り組んでいますが、果たして外国人観光客の安心安全を保障できるだけの体制整備ができているでしょうか。たとえば、生活者の外国人住民にとっての安心安全にもつながる災害時多言語支援、医療通訳の必要性は認識されているものの、受入体制整備が決して十分とは言えない現状です。

国際交流からスタートした地域の国際化が1995年の阪神淡路・大震災がきっかけとなり、今日の多文化共生施策につながっています。ほとんどの市町村の場合、国際交流、多文化共生を担当しているのは国際課であり、外国人観光客受入整備担当の観光課と必ずしも連携できているわけではありません。今後、地域国際化協会やNPO団体がコーディネート機能を果たし、多文化共生的な手法による外国人観光客の受入整備を後押し、ひいては地域活性化につながる新しい取組みの誕生を期待しています。