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第03回2015.06.24

ダイバーシティの推進に向けた都市と大学の連携

2015年5月12,13日両日に、ノルウェーの首都オスロで、欧州評議会が主催するインターカルチュラル・シティ(ICC)の会議があり、ヨーロッパ開催のICCの会議としては3年ぶりに参加しました。

今回のテーマは、ダイバーシティの推進に向けた都市と大学の連携で、欧州を中心に40名ほどの参加がありました。イスラエルのハイファやカナダのモントリオールからの参加者もおり、日本からは東京外国語大学の長谷部美佳講師(国際交流基金による派遣)と私が参加しました。

会議は全体会と4つの分科会から構成されていました。分科会のテーマは、科学的根拠に基づいた政策づくりに大学が果たす役割、高等教育と社会的流動性、ステレオタイプ・ヘイトスピーチ・外国人嫌悪に対抗する学界、ダイバーシティと経済成長でした。

初日午前の全体会では、オスロ市の教育担当副市長Anniken Haugliによる歓迎の挨拶の後、オスロ大学社会人類学部のThomas Hylland Eriksen教授による基調講演「グローバリゼーションの三つの危機」、リムリック大学(アイルランド)のPaul McCutcheon副学長とロンドン大学ゴールドスミス校のRoger Green教授による大学の社会貢献に関する対談、そしてICCの生みの親ともいえるPhil Wood氏によるダイバーシティのアドバンテージ(利点)に関する講演がありました。Wood氏の講演はこれまでに何回も聞いていますが、多様な社員からなる企業が大きな成果を挙げている例として、デンマークの清掃チームを紹介したのが印象的でした。

初日午後と二日目午前の分科会では、全体が4つのグループに分かれましたが、私は第1分科会に参加しました。第1分科会では、ノルウェーの自治体の難民受け入れプログラムの比較調査やモントリオール市とモントリオール大学の連携によるインターカルチュラル政策づくり、オスロ市と市内の大学や研究所が連携して、オスロ市を国際的な知識産業の中心とすることをめざすプロジェクト、ノルウェー警察大学校による警察官のダイバーシティに関する理解促進プログラム、ギリシャ・オープン大学(パトラ市)による文化的仲介人材の育成、欧州ヴェルゲラン・センター、ホロコースト・宗教的少数者研究所およびオスロ大学による学校における反差別研修プログラム(ノルウェー教育省が助成)などの報告がありました。私は、中野区や新宿区での明治大学生による多文化共生実態調査や政策提言の活動について報告しました。

二日目午後には、再び全体会があり、各分科会からの報告とまとめの後、ノルウェー・ビジネス・スクールのInge Jan Henjesand学長による知識経済に関する講演、オスロ・アーケシュフース ユニバーシティーカレッジのFrode Eika Sandnes教授による科学と教育におけるダイバーシティを推進する大学の役割についての講演があり、全プログラムを終えました。

日本は在住外国人が少なく、国の取り組みも遅れていると外国から見られがちですが、今回、長谷部講師や私が報告した学生達の地域での実践は一定の参加者の関心を集め、評価を得ることができました。現在、日本では、課題解決に向けて生徒や学生が主体的に学ぶ「アクティブ・ラーニング」に関心が集まっていますが、国の取り組みを待たずに、大学が地域と連携して、学生主体で多文化共生の実践を積み重ねていくことが重要であると思いました。

Council of Europe: Intercultural Cities
http://www.coe.int/t/dg4/cultureheritage/culture/Cities/Default_en.asp