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第01回2015.04.22

長野県多文化共生推進指針

2015年3月、長野県が多文化共生推進指針を策定しました。日系ブラジル人等外国人住民の多い7県1市が参加する多文化共生推進協議会の中で、多文化共生の指針や計画を唯一持っていない長野県が、初めて策定した多文化共生の指針となります。

長野県では、2000年代初頭から多文化共生くらしのサポーターや地域共生コミュニケーター制度、企業と連携したサンタプロジェクト(外国籍児童生徒就学支援事業)など、いくつかの特徴的な取り組みを実施してきました。一方、外国人県民の数は2005年をピークに以後、減少傾向にありますが、永住者が全体の4割を占めるなど、定住化が進んでいます。ちなみに、長野県内では上田市と飯田市が外国人集住都市会議に参加しています。

今回の指針の最大の特徴は、基本目標に「多様性を活用した豊かな地域を創造します」と謳っていることです。これまでの連載記事(「多文化共生社会に向けて」58回、68回、75回、92回)で触れてきましたが、2012年に東京と浜松で開催された日韓欧多文化共生都市サミットでの欧州都市との交流を契機に、外国人がもたらす多様性を積極的に地域づくりに生かす観点が、日本の自治体に広がりつつあります。こうした観点を私は、多文化共生の進化形として、多文化共生2.0と呼んでいます。全国に先駆けてそうした観点を取り入れたのが浜松市の多文化共生都市ビジョン(2013年3月)でした。そして、都道府県レベルで取り入れたのは長野県の指針が全国初と言えます。

長野県の指針では、3つの施策目標の一つが「多様性を活かした地域の創造」であり、「社会のあり方を見つめなおし、多様性を尊重し、女性、高齢者、障がい者、外国籍県民等を含め、誰もが活躍できる地域づくりを目指」すことを謳い、「多文化共生の意識づくり」、「多様性を地域の活力に取り入れる取組の促進」、「地域間連携の推進」に取り組むと言います。「多様性を地域の活力に取り入れる取組の促進」としては、「少数者に配慮したきめ細やかな事業活動の推進」、「グローバル人材・留学生を活かした産業振興の推進」、「活躍している外国籍県民のPR」が挙げられています。

長野県のこれまでの多文化共生施策は、外国人県民の自立促進や生活支援に主眼がおかれてきましたが、この指針では、「外国籍県民の存在を積極的にとらえて地域の活力につなげていく施策や、多様性を受け入れることにより誰もが参加し協働する地域づくりを推進する施策」に主眼を置いていると言います。

長野県は、2010年からの30年間で25%の人口減少が見込まれ、県内市町村の多くが消滅する可能性があると見られています。国が昨年12月に閣議決定したまち・ひと・しごと創生総合戦略に基づいて、現在、全国の自治体が地方版の総合戦略を策定することが求められています。長野県の総合戦略において、「多様性を活かした地域の創造」(多文化共生2.0)の観点が取り入れられるかどうか、注目したいと思います。

長野県多文化共生推進指針
http://www.pref.nagano.lg.jp/kokusai/sangyo/kokusai/tabunka/tabunka/shishin/shishinn-kekka.html