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第88回2014.07.23

ベルリン

2014年6月4日から6日まで、ドイツの首都ベルリンで、都市と移民に関する国際会議が開かれました。主催したのは、カナダ・トロントの非営利組織であるメイトリー財団とベルリンにある緑の党系シンクタンクであるハインリヒ・ベル財団です。メイトリー財団は、2009年にCities of Migration と呼ばれるウェブサイトを開設し、北米やヨーロッパを中心に自治体の移民受け入れの取り組みの情報交換を行っています。2010年10月に、オランダのハーグで都市と移民に関する国際会議を開きましたが、今回は2回目の開催となります。

この会議は、これまで私が参加した会議と異なり、政策論議のセッションに加えて、カナダの移民親子の葛藤を描く寸劇やサッカーにおける人種差別問題のディベート、著名な心理学者による偏見に関する講演なども盛り込まれ、幅広い観点から移民受け入れにアプローチしているのが特徴的でした。また、ソーシャル・メディアの活用も積極的で、特にツイッターを使って、主催団体だけでなく参加者も会議の最中に会議内容を世界に向けて発信していました。

ヨーロッパの参加者にとっては、北米、特にカナダの都市の取り組みが新鮮だったようです。私は、最終日の分科会で、日本の都市の取り組み、特に都市ネットワークが国の政策に及ぼす影響力について報告しました。今回の会議にアジアやアフリカ、中南米からの参加者は数名しかおらず、報告者は私以外にいませんでした。

会議二日目の夜には、ベルリン市内のフィールド・ワークのコースがいくつか設けられ、私はベルリンの移民多住地域として知られるノイケルン区(住民の4割が外国生まれ)のコースに参加しました。そこで、プロテスタント教会をインターカルチュラル・センターに改め、多宗教の活動拠点としている取り組みや移民の母親が新たな移民の母親を支援するネイバーフッド・マザーズ・プロジェクトを見学しました。後者はノイケルンで2004年に始まり、今では他の都市にも広がっています。

今年5月の欧州議会選挙(5年に一度実施)では、反移民政党が躍進し、特に、イギリスとフランスで国内第一党となったことが注目されましたが、反移民勢力の拡大はヨーロッパ全体の潮流のようにも思われます。一方、ドイツでは、反移民政党は特に大きな支持を得ませんでした。ドイツ経済はヨーロッパでほぼ唯一好調を維持していることが影響しているかもしれません。

今年5月に発表された経済開発協力機構(OECD)の報告書では、2012年にドイツに移住した移民の数は前年から3割増し、アメリカに次ぐ最大の移住先となったことが明らかになりました。今回の会議は、カナダとドイツの民間財団が協力して実施したものですが、この会議の目的は、ドイツが移民国家カナダの経験から学び、ヨーロッパのカナダを目指すことにあるのかもしれないと、会議中にふと思いました。

シティーズオブマイグレーション・ベルリン会議(2014)
http://2014conference.citiesofmigration.ca/

シティーズオブマイグレーション・ハーグ会議(2010)
http://conference.citiesofmigration.ca/

Cities of Migration: Neighborhood Mothers Leading the Way in Neukoelln
http://citiesofmigration.ca/good_idea/neighbourhood-mothers-leading-the-way-in-neukolln/

European Parliament: Results of the 2014 European elections
http://www.results-elections2014.eu/en/country-introduction-2014.html

OECD: Migration Policy Debates, May 2014
http://www.oecd.org/berlin/Is-migration-really-increasing.pdf