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第87回2014.06.25

モントリオール

5月21日から3日間、カナダのモントリオール市で開かれた国際ワークショップ「インターカルチュラル・シティを築く:実践から政策へ、政策から実践へ(Building Intercultural Cities: From Practice to Policy and Back)」に参加しました。モントリオール大学とモントリオール市そして欧州評議会の共催によるものでした。

欧州からは、オスロ(ノルウェー)、ロンドン・ルイシャム(英国)、ボッチェルカ(スウェーデン)、レッジオ・エミリア(イタリア)、バルセロナ(スペイン)、ヌーシャテル(スイス)の6都市が参加しました。この会議の目的は、欧州評議会が進める「インターカルチュラル・シティ・プログラム」に参加する各都市のインターカルチュラル(多文化共生)政策を比較検討することにあり、それぞれの都市の取り組みを、自治体担当者と専門家が組んで発表しました。

この会議が開かれた背景には、ケベック州がカナダの中で独自の文化圏を築き、特別な位置づけにあることがあります。例えば、カナダ政府は英語とフランス語を公用語とする二言語主義を採用していますが、ケベック州政府はフランス語のみを公用語としています。移民統合政策においても、カナダは多文化主義(multiculturalism)の国として知られていますが、ケベック州政府は多文化主義に異義を唱え、インターカルチュラリズム(interculturalism)として広く知られる政策をとっています。そうした中、2011年にモントリオールでインターカルチュラリズムに関するケベックと欧州の対話をテーマにした会議が開かれたことを契機に、モントリオール市は欧州評議会が進めるインターカルチュラル・シティ・プログラムに参加し、スペインの中で独自の文化圏であるカタルーニャ州にあるバルセロナ市と交流を始めました。モントリオール市が特に関心をもったのは、バルセロナ市が2010年に策定したインターカルチュラリティ・プランでした。このプランは幅広い市民参加によって策定されたもので、平等、多様性、インターアクションという三つの基本原則を示しています。

私にとっては、2012年度の欧州滞在時に研究した欧州都市の取りくみでしたが、モントリオールの関係者には欧州都市が多様な先進的取り組みを進めていることが新鮮だったようです。カナダが受け入れる移民はトロント、バンクーバー、モントリオールの3大都市に集中する傾向がありますが、今回、カナダからはモントリオール市のみの参加であることが残念でした。会議では、モントリオールの参加者はほぼ全員がフランス語(英語の同時通訳あり)を用いていました。また、ロビーに掲示されたパネルもすべてフランス語でした。なお、今回のセミナーには、当初、2013年に「多文化共生都市ビジョン」を策定した浜松市の参加が期待されていましたが、実現しませんでした。

International Workshop on Building Intercultural Cities
http://villeinterculturelle.wordpress.com/forum2014/

Barcelona Interculturality Plan
http://www.bcn.cat/novaciutadania/pdf/en/PlaBCNInterculturalitatAng170510_en.pdf