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第80回2013.11.27

日韓欧多文化共生都市サミット 安山2013

2013年10月25日に、韓国安山市で日韓欧多文化共生都市サミットが開かれました。今回3回目となる日韓欧多文化共生都市サミットは、日本や韓国で多文化共生に取り組む都市と欧州評議会がすすめるインターカルチュラル・シティ・プログラムに参加する欧州都市の首長と実務担当者が集まり、互いの知見や経験を共有することを目的に、日本の国際交流基金と欧州評議会の共催によって、2012年1月に東京で初めて開催されました。日本からは、浜松市、新宿区、大田区の3首長が出席し、会議の最後に多文化共生都市の国際連携を謳った東京宣言が採択されました(第58回参照)。2012年10月には、浜松市において第2回サミットが開催され、多様な主体が地域で連携して多文化共生を進め、文化的多様性を都市の活力とすることを謳った浜松宣言が採択されました(第68回参照)。

そして、第3回となるサミットは、初めて韓国で開催されました。韓国の多文化共生は、近年、国の強力なリーダーシップによって、全国各地の自治体で推進されていることが知られていますが、安山市は多くの外国人労働者が暮らす韓国の産業都市の代表的存在です。安山市は第1回サミットに参加したことを契機に、そして日本の外国人集住都市会議を参考に、外国人の多い都市に呼びかけ、全国多文化都市協議会が2012年11月に設立されました。同協議会には現在、24都市が参加しています。

今回の会議には、日本から、これまでの両サミットに参加している3都市に加え、外国人集住都市会議座長の滋賀県長浜市が参加しました。韓国からは、安山市に加え、光州市光山区、仁川市南洞区、ヨーロッパからは、ダブリン市(アイルランド)、ビルバオ市(スペイン)、サポティツァ市(セルビア)が参加しました。

当日の午前は、韓国、欧州、日本の専門家による基調報告の後、実務者のセッションが開かれ、多様な社会における教育の役割、外国人労働者と都市の活性化、文化的多様性のローカル・ガバナンスの三つのテーマに関する報告がありました。午後には、各都市の首長等が登壇し、同じ3テーマについて、報告がありました。

今回の会議は、韓国で欧州のインターカルチュラル・シティが本格的に紹介される初めての場となったことに大きな意義があると言えます。会議の中で全国多文化都市協議会と欧州評議会との間で今後の協力を謳った覚書が締結されましたが、韓国都市の取り組みの報告で、インターカルチュラル・シティを参考に文化背景の異なる住民間の交流に力をいれた取り組みが紹介されたことも印象的でした。また、日韓関係が停滞する中で、日本の多文化共生をリードする鈴木康友浜松市長と韓国の多文化共生をリードする金哲玟安山市長が初めて顔を合わせて、互いの都市の課題を共有するとともに、個人的信頼関係を築いたことも大きな意義のあることと言えます。

一方、今回のサミット開催を通じて、新たな課題も明らかになってきました。第一に、第1回サミット開催からまだ二年未満という短い期間ではありますが、サミットに参加する日本の自治体が、第1回に参加した3都市からなかなか広がっていかないことです。第二に、第一の課題と関連しているかもしれませんが、多文化共生都市サミットが掲げる多様性を生かした都市づくりという理念が政策や実践上、どのようなことを意味するのかがわかりにくいことがあります。第三に、これまでのサミットの開催には国際交流基金が資金的にも事務的にも大きな役割を担ってきましたが、今後、自治体主導で日韓欧交流を続けていく見通しがまだ立っていないことがあります。

こうした課題を抱える多文化共生都市サミットですが、日本の自治体にとっては、国際的な観点から自らの取り組みを振り返るとともに、欧州や韓国の自治体ネットワークや国の外国人受入れ体制について最新情報を得る貴重な場となっています。今後もこうした交流が続くことを期待したいと思います。