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第70回2013.01.23

マイグレーション・ポリシー・グループ(MPG)

2012年12月に英国オックスフォードからベルギーの首都ブリュッセルに研究拠点を変えました。ブリュッセルは、EU(欧州連合)の主要機関が集まった「ヨーロッパの首都」でもあります。今回、籍を置くのは、ブリュッセルの「ヨーロッパ地区」にある非営利の政策研究機関であるマイグレーション・ポリシー・グループ(Migration Policy Group, MPG)です。

 MPGは、「平等と移動に関する戦略的な思考」をめざした汎欧州機関で、人の国際移動、多様性と統合、反差別と平等の3つの領域において、オランダ、イギリス、フランス、ベルギー、アメリカなど多様な国出身の10数名のスタッフが様々なプロジェクトを担当しています。

 1995年に設立されたMPGがユニークなのは、政策の研究や提言だけでなく、政府組織や非政府組織など多様な利害関係者と協力して、政策を実現する力をもっている点にあります。これまでにあげた主な成果の一つが、加盟国に差別禁止法の制定を義務付けたEUの民族・人種平等待遇指令と雇用均等待遇指令(ともに2000年)の制定です。1991年に結成され、その後、EU全域から400を超える反差別団体が集まったスターティング・ライン・グループは、指令制定に大きな影響力を発揮しましたが、そのまとめ役を担ったのがMPGでした。

 また、2004年に始まり、2007年、2010年とこれまで3回、ブリティッシュカウンセルと組んで実施してきたのが、第51回記事でも少し少し紹介した移民統合政策指標(Migrant Integration Policy Index, MIPEX)です。これは、EU加盟国を中心に各国の移民統合政策を評価、比較、改善するために、7つの政策分野(労働市場の流動性、家族の再結合、長期滞在、政治参加、国籍取得、反差別、教育)について、148項目の指標を設け、数値化したものです。MIPEX は、欧州各国のメディアによってしばしば引用されており、欧州の移民政策関係者の間では広く知られています。

 そのほかにも、移民政策に関わる様々な分野でプロジェクトが進行しており、スタッフの出身国が多様であることもあわせ、「ヨーロッパの首都」に拠点を置く組織であることを日々感じています。

マイグレーション・ポリシー・グループのウェブサイト
http://www.migpolgroup.org/
移民政策統合指標のウェブサイト
http://www.mipex.eu/