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第57回2011.12.28

2011年の多文化共生10大ニュース

日本における多文化共生社会の形成にとって大きな影響を及ぼしそうな2011年の10大ニュースを選びました。

  • 政府は、経済連携協定(EPA)に基づくインドネシア人およびフィリピン人看護師・介護福祉士候補者について、国家試験に不合格の場合、3年間の滞在期間を1年間延長する方針を閣議決定しました。第1陣の外国人看護師候補として2008年8月に来日したインドネシア人は104人で、そのうち今年は91人が受験し、13人が合格しました。厚生労働省は、不合格だった78人のうち、68人の滞在期間延長を認めることを6月に決め、候補者を受け入れている医療機関に通知しました。(3月)
  • 東日本大震災が発生し、東北地方と関東地方の太平洋沿岸部に壊滅的な被害をもたらしました。また、福島第一原子力発電所では、大量の放射性物質を放出する史上最悪の原子力事故が起きました。その結果、留学生や研修生などを中心に相当数の外国人が本国に緊急帰国しました。岩手、宮城、福島の被災3県では、県の国際交流協会を中心として、外国人被災者への支援活動が行われました。(3月)
  • 政府は、「日系定住外国人施策に関する行動計画」をとりまとめました。これは、「日本語能力が不十分な者が多い日系定住外国人を日本社会の一員としてしっかりと受け入れ、社会から排除されないようにする」という基本的な考え方に立った「日系定住外国人施策に関する基本指針」(2010年8月)に基づくもので、2011年度から開始し、3年後に見直すこととしています。(3月)
  • 5月の大型連休期間に首都圏に暮らす難民を中心とする震災ボランティアが岩手県陸前高田市や宮城県石巻市で瓦礫の撤去などを行いました。その後も、日本で一番外国人住民の比率の高い群馬県大泉町のブラジル人グループが宮城県と福島県で炊き出しを行うなど、各地の外国出身者が震災ボランティアとして活動しました。(5月)
  • 浜松市が外国人の子どもの不就学をゼロにすることを目指した「不就学ゼロ作戦」事業(3カ年)を5月に始めました。まず、就学年齢の外国人登録者のうち、公私立小中学校および外国人学校に在籍している児童生徒を除いた子ども727名の実態調査を行い、不就学の子どもが96名いたことを10月に公表しました。続いて、不就学家庭との面談を行い、不就学の理由を分析し、必要な支援体制の構築を検討しました。(5月)
  • 東京大学が、外国人留学生の受け入れおよび在学生の海外留学を推進するために、諸外国にあわせて、入学時期を春から秋に移行する検討に入ったことが報道され、秋入学そして大学のグローバル化への関心が高まりました。東日本大震災の影響で留学生の減少が予想される中、秋入学への移行は大学のグローバル化に向けた切り札になることが期待されています。東大では、来年1月に中間まとめを公表することにしています。(7月)
  • 厚生労働省の「外国人高度人材に関するポイント制導入の際の基準等に関する検討会」(座長:後藤純一慶応大学教授)が、論点整理の取りまとめを公表しました。ポイント制の意義、優遇すべき高度人材像、制度設計の方向性、高度人材の選別要素、永住許可の早期許可、親の帯同、家事使用人の帯同、配偶者の就労などの論点を取り上げたものです。その後、厚労省に経済産業省や法務省なども加わった関係省庁の間で調整が続いています。(8月)
  • 民主党の野田佳彦代表が第95代、62人目の首相に選出され、野田内閣が発足しました。文部科学大臣には、外国人集住都市会議に参加する鈴鹿、亀山、四日市の3市を地元とし、民主党議員の中でおそらく最も外国人政策に精通している中川正春衆議院議員が就任しましたが、これまでのところ、外国人政策における大きな変化は起きていません。(9月)
  • 法務省は、2011年9月現在の外国人登録者数が208万8,872人であることを公表しました。震災前の2010年末の外国人登録者数は213万4,151人でしたが,震災直後の2011年3月末には,209万2,944人で4万1,207人減少し,その後はほぼ同水準を維持しています。2010年末からの減少率は、全国平均では2.1%ですが、岩手、宮城、福島の被災3県平均では14.2%減となっています。国別内訳ではブラジル人の減少率が最も高く、6.7%減となっています。(11月)
  • 政府は、国際戦略総合特区として、外国企業のアジア統括部門を誘致する東京都の「アジアヘッドクオーター特区」など全国7地域を指定しました。東京都は、同特区構想の中で、外国人の生活環境の整備を進め、「日常生活に係る様々な情報提供を多言語で行うとともに、各種相談対応や各種手続の代行、医療機関や行政機関に関する情報の提供などを行う機関を設置」し、医療・教育面での外国人の生活環境整備を図ることを目指しています。(12月)