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第56回2011.11.22

外国人集住都市会議いいだ2011

2011年11月8日に長野県飯田市で外国人集住都市会議いいだ2011が開かれました。当日は400名を超える参加者が集まりました。

 今年度の外国人集住都市会議の参加都市は昨年と変わらぬ28都市で、飯田市が来年度まで座長都市を務めることになっています。28都市は、群馬・静岡ブロック(リーダー:大泉町)、長野・岐阜・愛知ブロック(リーダー:大垣市)そして三重・滋賀・岡山ブロック(リーダー:津市)の三つの地域ブロックに分かれて、それぞれ、「多文化共生における防災のあり方~災害弱者をつくらないために~」、「外国人の子どもの教育~未来を切り拓く学びの保障~」、「外国人住民とともに構築する地域コミュニティ~互いに支えあえる豊かな地域づくりのために~」として研究を進めています。

 会議では、参加都市首長と関係府省庁担当者が2011年3月に策定された政府の「日系定住外国人施策に関する行動計画」についての分野別討議を行いました。参加府省庁は、内閣府、総務省、外務省、法務省、厚生労働省、文部科学省及び文化庁でしたが、参加者の役職は部長級から係長級まで様々でした。

 今回の会議の特徴としては、森ゆうこ文部科学副大臣の来賓挨拶があったように、文部科学省や文化庁の姿勢が前向きな印象を与えたことにあったかもしれません。来年度予算で、文部科学省は日本語指導を行う加配教員の増員を要求していることなど、文化庁は多文化共生社会実現のための日本語教育推進体制の整備を要望していることなどが報告されました。その背景には、これまで外国人集住都市会議に強い関心を寄せてきた中川正春衆議院議員が野田内閣で文部科学大臣に就いたことを挙げることができます。

 今回の会議で筆者が注目したのは、末松則子鈴鹿市長が第三国定住制度※により昨年秋に来日し、今年の3月から鈴鹿市で生活しているミャンマー難民3家族15人にについて発言したことです。南米系日系人の多い都市の集まりとして2001年にスタートした外国人集住都市会議で、その他の外国人にかかわる具体的課題に言及したのは、今回が初めてと思われます。実は、参加都市はどこもブラジル人が外国人登録者の中で一番多いのですが、座長都市である飯田市は唯一、一番多いのが中国人となっています。

 外国人集住都市会議は、これまで南米系日系人にかかわる課題を中心に取り上げながら、外国人登録制度の改革や外国人児童生徒教育の改善など、外国人全体の受け入れ態勢整備にかかわる提言を行ってきました。実際、参加都市の多くでは、近年、南米系外国人だけでなく、中国人や韓国人、フィリピン人などアジア系外国人も増えています。しかしながら、2011年3月に策定された政府の行動計画は「日系定住外国人」に対象を限定したものでした。外国人集住都市会議が南米系日系人の多い市町の集まりであることが影響したかもしれません。そうした観点から、今回の会議で鈴木康友浜松市長が、今後はアジア系外国人の多い自治体など、多文化共生をめざしている国内外の都市との連携も推進していきたいと発言したことにも注目したいと思います。

 なお、会議前日の午後には、「災害時における外国人住民をとりまく課題と外国人集住都市会議の役割」をテーマとした外国人集住都市会議の公開研修会も開かれました。東日本大震災で外国人住民が支援されるだけでなく支援者となったこと、自治体とNPOそして国の連携が大切なこと、そのためには平時から担当者間で顔の見える関係を築く必要があることなどが指摘されました。

※第三国定住制度
 紛争や迫害が続く祖国に戻ることも、避難先に定住することもできない難民を別の国が受け入れる制度。日本は、2010年から2012年までパイロットケースとして計90名のミャンマー難民の受け入れが予定されています。アジアでの受け入れは日本が初めて。