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第49回2011.04.27

東日本大震災と復興構想

「被災地の住民に未来への明るい希望と勇気を与えるとともに、国民全体が共有でき、豊かで活力ある日本の再生につながる復興構想」を取りまとめるため、政府は東日本大震災復興構想会議を設置し、第1回の会合が4月14日に開催されました。会議のメンバーは、被災3県の知事など東北地方関係者や阪神淡路大震災からの復興に関わった有識者など15名と特別顧問1名から構成されています。地域再生や漁業経営など個別の課題について専門的な立場から検討するため、下部組織として検討部会も設けられ、経済や金融の専門家ら19人が参加しています。6月末をめどに第1次の提言を取りまとめ、年末に最終提言をまとめる予定です。

 今回の復興構想会議は、1995年の阪神淡路大震災の復興委員会を参考にしていますが、これまでと異なり、福島原発事故が現在も危機的状況を脱していない中での構想づくりという困難があります。政府が今回の事故の評価を史上最悪の事故と呼ばれる旧ソ連・チェルノブイリ事故と並ぶ国際原子力事象評価尺度のレベル7に引き上げたこともあり、東京電力が今後9ヶ月以内に事故を収束させる工程表を発表しましたが、国際社会の不安の声は収まっていません。特に東京電力が今月前半に低濃度汚染水を海に放出してからは、日本の対応に批判的な見方が広がっています。

 すでに、日本の農産物や製品の輸入を規制する国が増えています。東日本だけでなく全国的に外国人観光客も急減しています。震災直後に多くの外国人留学生が一時帰国しましたが、今後、留学生の受け入れも停滞することが予想されます。高度人材の受け入れも難しくなるかもしれません。不安定な電力供給もあって外資系企業が東京から香港やシンガポールに移転する傾向も強まるでしょう。原発事故の深刻化・長期化によって、豊かで安全な国としての「日本ブランド」に大きな傷がつき、放射性物質で汚染された危険な国というイメージが定着しかねません。

 こうしたイメージを払拭するには、原発事故のさらなる悪化を防ぎ、情報開示を徹底することが最低条件ですが、その上で、震災からの大胆な復興構想を打ち出し、世界中にアピールすることが欠かせないと思います。そうしたビジョンは、防災や脱原発・省エネルギー、地方分権といった観点に立ち、21世紀の地球社会にとってモデルとなるようなものを目指すべきですが、そのために世界中から多様なアイディアを集め、東北地方そして日本の復興に貢献してもらえる人材や企業などを募ってはどうでしょうか。そして、復興のプロセスを世界に発信し、世界と共有することによって、初めて「日本ブランド」の再生が可能となるのではないでしょうか。

 今回の構想会議の構成を見てみると、委員と顧問を合わせた16名の中には女性が1名しかいません。しかも、残りの男性は60代が中心です。検討部会の19名も、50代以下の世代が増えますが、女性は僅か2名です。そして、二つの会議をあわせた35名の中に、外国人は一人も含まれていません。こうした構成で、若い世代を含めた日本そして世界の人々にとって魅力ある、創造的な未来のビジョンを描くことができるでしょうか。

English(PDF):Design of Reconstruction from the Great Eastern Japan Earthquake