メールマガジン

第48回2011.03.23

東日本大震災

2011年3月11日、日本国内観測史上最大の地震が東日本で起き、直後に巨大津波が東北地方の太平洋沿岸を襲い、多くの犠牲者が出ました。3月21日現在で死者・行方不明者は2万人を超え、避難者は30万人を超えています。被災者にはもちろん多くの外国人も含まれています。特に被害の大きかった宮城、岩手、福島3県だけでも外国人登録者数は約3万5千人となります。

 1995年1月に起きた阪神大震災では、多くの市民ボランティアが被災者支援を行い、同年はボランティア元年とも呼ばれましたが、外国人に対してもボランティアが多言語による電話相談や情報提供を行い、これをきっかけに多くの多文化共生団体が生まれました。2004年10月に起きた新潟県中越地震では、こうした団体が被災地の自治体と連携して、震災発生直後から多言語情報提供など外国人支援に取り組みました。

 こうした経験をもとに、今回の大震災でも、震災直後から市民団体や大学、国際機関などが多言語(やさしい日本語を含む)情報の提供など外国人支援活動に積極的に取り組んでいます。特に今回は、インターネット上でウェブサイトやメールだけでなく、ツイッターなどソーシャルメディアと呼ばれる新しい情報発信が大きな役割を果たしています。NHKも多言語で震災報道を行い、インターネット放送も行っています。

 一方、宮城県国際交流協会など被災地を中心に一部の自治体や国際交流協会は多言語による電話相談や情報提供に取り組んでいますが、首相官邸や関係省庁の情報発信は日本語が中心で外国語は英語のみです。大災害を乗り越えるには、行政と民間の連携が不可欠ですが、政府は3月13日に辻元清美衆議院議員を災害ボランティア担当の首席補佐官に任命し、同16日に震災ボランティア連携室を設置しました。同室のスタッフには前述の二つの地震時の外国人支援に中心的役割を果たした田村太郎多文化共生センター大阪代表が含まれています。

 被災者支援の動きは海外でも活発です。地震発生以来、150を超える国や国際機関などから支援の申し入れがありました。また、米国やロシア、フランス、韓国、中国など10数ヶ国の救助隊が被災地で救援活動に携わりました。世界各地で被災者支援のチャリティイベントも開かれています。諸外国からの支援は、日本在住の自国民の保護という側面もありますが、国際社会の連帯の証といえます。

 こうした国内外の支援が活発に行われているものの、今回の地震は、戦後日本が経験したことのない危機的状況をもたらしています。福島県の原子力発電所が被災し、日本の原発史上最悪の事故が起こり、放射性物質の大量放出の危険性が生じているからです。地震に津波そして原発事故が重なったのは人類史上初めての大災害といえます。

 原発事故の深刻度を巡っては、国内外の政府発表やメディア報道の格差が際立っています。フランス原子力安全局やアメリカの研究機関は8段階(レベル7が最悪)の国際原子力評価尺度のレベル6に相当すると発表したのに対して、日本政府は当初レベル4と発表した後、レベル5に引き上げました。日本政府は原発から20キロ圏内からの退避と20~30キロ圏内の屋内退避を求めていますが、アメリカなど外国政府は自国民の80キロ圏内からの避難を勧告しています。

 こうした外国の政府やメディアの影響で、国内、特に東日本にいる留学生など外国人の多くが出身国に一時帰国しています。東京にある大使館や外資系企業には大阪や香港などに移転したところもあります。また国内に残った外国人の多くは、情報不足の中、大きな不安に襲われています。外国の政府やメディア自体も、日本政府の情報開示が十分でないことに不満の声を上げています。そうした中、3月18日に国際原子力機関の事務局長が来日し、菅首相に積極的な情報開示を要請しました。

 日本政府は、今回の震災と津波そして特に原発事故について、国内外のメディアを区別することなく、できるだけ積極的な情報開示をしていくこと、そして、それと同時に、国や自治体など公的機関は、国内在住の外国人に対して、できるだけ日本人と同じように情報を提供していくことが望まれます。なぜなら原発事故は世界に深刻な影響を及ぼし得る事態であり、国内外の総力を結集して解決する必要があるからです。また、仮にこれ以上の原発事故を回避できたとしても、これだけの大きな災害を乗り越え、復興をめざすには、国際社会の協力を仰ぐと同時に、国籍や民族の違いに関わらず国内にいるすべての人が力を合わせる必要があるからです。

<外国人への情報提供活動>

*宮城県国際交流協会
http://www.h5.dion.ne.jp/~mia/

*福島県国際交流協会
http://www.worldvillage.org/index.php

*岩手県国際交流協会
http://iwate-ia.or.jp/

*東北地方太平洋沖地震多言語支援センター&多言語ホットライン(英語、中国語、ポルトガル語、スペイン語)NPO法人多文化共生マネージャー全国協議会(大津市)が運営。
http://tabumane.jimdo.com/

*FMわいわい:多文化・多言語コミュニティ放送局(神戸市)
http://www.tcc117.org/fmyy/index.php

*東日本大震災に関する被災者向け情報<多言語版> 東京外国語大学多言語・多文化教育研究センターが運営。
http://www.tufs.ac.jp/blog/ts/g/cemmer/index.html

*緊急災害電話通訳(英語、中国語、韓国語、ポルトガル語、スペイン語) 電話通訳会社ブリックスが無料で実施。
http://www.bricks-corp.com/

*NHK WORLD : 多言語放送(18言語)
http://www3.nhk.or.jp/nhkworld/index.html

*内閣府定住外国人施策推進室
http://www8.cao.go.jp/teiju-portal/jpn/index.html

*国際移住機関駐日事務所
http://www.iomjapan.org/index.cfm

English(PDF):Great Eastern Japan Earthquake