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第41回2010.08.25

在日ブラジル人の20年

2010年7月30日に、東京の国連大学で、ブラジル政府主催でブラジル人の日本在住20周年と題したセミナーが開催され、全国から多くの在日ブラジル人や日伯交流の関係者が参加しました。私も講師の一人として参加しました。このセミナーは、ブラジル人の日本在住20周年を記念して開かれた一連の行事の1つで、7月31日には、浜松市にブラジル人労働者を支援する「ブラジル人労働者の家」が試験的に開設され、8月1日は「在日ブラジル人の日」と題した行事が開かれ、8月8日まで浜松市の他、名古屋市や大泉町、豊橋市でも関連行事が続きました。

1989年に改定された入管法が施行されたのが1990年6月1日ですから、正確には今年の6月1日にちょうど20周年を迎えたわけですが、入管法の改定が在日ブラジル人そしてブラジル人が多数居住することとなった地域社会に与えた影響は大きなものであったといえます。「定住者」資格が新設され、日系3世のブラジル人等南米出身者が多数、日本に定住する道が開かれたからです。そもそも、当時の入管法改定は、正規の在留資格を持たない超過滞在者が大きく増え、一方で経済界からは外国人労働者導入の声が高まる中、国会でほとんど審議されることなく、法務省主導で実現されたため、入国後の受け入れ態勢づくりが不十分であったことが指摘されています。2006年5月に河野太郎法務副大臣(当時)が日系人受け入れ政策は失敗であったと発言したことも大きな話題にもなりました。

セミナーは、冒頭にルイス・アウグスト・デ・カストロ・ネーベス駐日ブラジル大使や来日中のカルロス・ルビ労働雇用大臣、カルロス・ガバス社会保障大臣、さらに細川律夫厚生労働副大臣や藤村修外務副大臣などの挨拶がありました。その中で日伯社会保障協定が前日に調印されたとの発表がありました。南米諸国の中ではブラジルが社会保障協定の最初の締結国となりました。

その後、ブラジル政府から日伯交流に貢献した団体に対する表彰状の贈呈が行われ、引き続き、4人の講師による講演が行われました。午前中の講演は、アンジェロ・イシ武蔵大学准教授がブラジル側からの視点で、北脇保之東京外国語大学教授(前浜松市長)は日本側の視点から在日ブラジル人の20年間をふり返り、午後はリリアン・テルミ・ハタノ近畿大学准教授が教育問題に焦点を絞り、最後に私が日本の外国人政策の概要と課題について講演を行いました。

4人の講演は、いずれも在日ブラジル人の定住化を前提に、日本政府の受け入れ態勢の整備を求めるものであったと思います。従って、日本政府に対する批判的観点に立ったものと言えますが、私は講演の最後に、ブラジル政府への要望も述べました。すなわち、ブラジル政府が行っているブラジル人学校の認可は、ブラジル人学校の教育の質を高める上で極めて重要であり、日本政府や自治体がブラジル人学校を支援する拠り所となっているので、より厳格に行ってほしいということです。

それにしても、ブラジル政府がこのようなセミナーを企画したのは画期的なことと言えますが、日本政府こそ今後の外国人受け入れのあり方を考える上で、この20年を総括する必要があるのではないかと思いました。