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第39回2010.06.23

新宿区と大田区

東京都は全国で最も外国人登録者数が多いにもかかわらず、多文化共生の課題が必ずしも明確に位置づけられていないことは既にお伝えしたとおりですが、この一、二年、23区における取り組みのペースが上がってきました。東京都の総人口に占める外国人登録者の割合は約3.2%(2010年4月現在、以下同様)で全国一位ですが、実は区部と市部を比べると、前者が4.0%であるのに対して、後者は全国平均と同じ1.7%に過ぎないことがわかります。

これまで23区で多文化共生の取り組みが先行してきたのは新宿区と言えます。新宿区の外国人登録者数は約3万5千人で、住民に占める割合は11.0%です。これは群馬県大泉町に次ぐ全国2位の高率です。また、新宿区は外国人住民が多いだけでなく、日本経済新聞の4月からの長期連載記事でも紹介されているように、大久保地域という外国人の集住地域を有することでも知られています。

新宿区では、2002年11月に中山弘子氏が区長に就任してから、徐々に取り組みが本格化していきました。2003年度に外国人区民と日本人区民を対象とした多文化共生実態調査を行い、2005年4月に担当部署として文化国際課を設置し、同年10月には全国に先駆けて多文化共生の拠点施設「しんじゅく多文化共生プラザ」を開設しました。2007年度には2回目の実態調査を行い、今年度、多文化共生担当の副参事と多文化共生プラザの専任所長を置いています。

その他の区では、足立区が2006年3月に多文化共生推進計画を策定しました。そして、2009年度になると足立区と板橋区そして大田区が新宿区と同様な実態調査を行いました。また、外国人区民に絞った調査は、港区が2008年度に、練馬区が2009年度に行いました。

新宿区が23区のフロントランナーとすると、この一、二年に取り組みが始まった第二グループの中で注目に値するのが大田区です。大田区の外国人登録者数は約1万9千人で住民に占める割合は2.7%です。2009年4月に地域振興部に国際都市・多文化共生担当課長を置き、昨年10月には、外国語による相談や区役所での各種手続サポートなどを行う「大田区多言語情報センター」を立ち上げました。また、上述の実態調査も行い、その結果をもとに2010年3月に多文化共生推進プランを策定しました。そして今月、「多言語情報センター」を改組し、「多文化共生推進センター」を設置するための条例が制定されました。

大田区の場合、今年秋に羽田空港の国際便が大きく増加し、大田区に住み、働く外国人の数が増大することが予想されることから、「地域力が区民の暮らしを支え、未来へ躍動する国際都市」をめざすことを掲げ、国際都市づくりの中心に多文化共生の推進が位置づけられました。

新宿区の取り組みが進んだのは、中山区長のイニシアティブが大きかったように、大田区の場合も松原忠義区長のイニシアティブが大きいといえます。また、大田区では、新宿区同様、多文化共生をめざした地域の市民活動も活発で、トップダウンとボトムアップの二つの力が加わり、取り組みが加速しようとしています。

日経新聞も報じているように大久保地域での試行錯誤を重ねながら一歩ずつ前進している新宿区、そして羽田空港の国際化という日本経済の再生に関わる大きな外的要因によって、動き出したとも言える大田区、共に東京における多文化共生の牽引役として期待したいと思います。