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第29回2009.08.26

日韓地方行政フォーラム

8月6日に、自治体国際化協会のソウル事務所が主催した「日韓地方行政フォーラム」が韓国の仁川広域市で開催されました。このフォーラムは、1995年以来、毎年、韓国国内の様々な都市で開催されているもので、日韓両国の地方行政にとって関心の高いテーマを定め、両国の地方行政関係者及び有識者が参加しています。今年のテーマは「多文化共生社会の実現を目指した取り組み」で、日本からは5つの自治体関係者と私が参加しました。多文化共生をテーマとするのは初めてのことでした。

フォーラムの第一部では、仁川国際交流センターの崔京甫代表理事が「仁川広域市の国際化と多文化社会について」と題して、北九州市の橋本嘉一副市長が「北九州市のグローバル戦略と多文化共生」と題して、それぞれ基調講演を行いました。

第二部では、「外国人との地域生活の共同」と「外国人の子どもの教育」の二つの分科会に分かれ、日韓それぞれ二つの自治体関係者が報告を行いました。前者の分科会では、京畿道安山市、ソウル市、川崎市、群馬県大泉町の報告があり、後者の分科会では、仁川広域市江華郡、大邱広域市達西区、愛知県、三重県鈴鹿市の報告がありました。前者のコーディネータは韓国・聖公会大学の梁起豪教授が、後者のコーディネータは私が務めました。

今回のフォーラムに参加して、グローバル化と少子高齢化という二つの歴史的潮流の中で、いかに単一民族志向を乗り越え、多様性を尊重する社会を築いていったらよいのか、そして、移民政策を貫く経済と人権という二つの視点の間でどうバランスをとったらよいのかを模索する点で、両国には共通する部分が多いことをあらためて感じました。一方、具体的な政策や制度面では、雇用許可制度の導入や在韓外国人処遇基本法や多文化家族支援法の制定など、国主導の動きを見せる韓国と、自治体主導で多文化共生施策が推進されている日本、多文化家族(国際結婚家族)支援が中心の韓国政府と日系人労働者支援が中心の日本政府といった具合に、両国の間には大きなちがいがあることも確認できました。

自治体国際化協会では、今年4月に多文化共生課を設置したばかりですが、今回のソウル事務所のフォーラムは時宜にかなった催しであると言えるでしょう。今回のフォーラムを契機に、日韓両国の間で多文化共生をテーマにした自治体同士の交流に弾みがつき、さらに国レベルや市民団体レベルの交流も盛んになることを願っています。