メールマガジン

第25回2009.04.22

JIAMとCLAIR

地方自治体の多文化共生の取り組みをサポートしている二つの全国組織があります。一つは市町村職員の「国際化対応能力の育成・向上」を図ること等を目的に研修プログラムを実施する全国市町村国際文化研修所(JIAM)です。1993年に滋賀県大津市に設立されました。このメールマガジンの発行元でもあります。もう一つは自治体を主体とした地域の国際化を推進し、外国の地方行財政制度の調査研究や海外での自治体の活動支援等を目的とする自治体国際化協会(CLAIR)です。1988年に東京都千代田区に設立されました。どちらも、2000年代前半から本格的に多文化共生に重点を置き始めています。

JIAMでは、設立10周年を記念して刊行された機関誌『国際文化研修』特別号5(2003年3月発行)に拙稿「外国人の定住化と地方自治体-人権・国際化・多文化共生」が掲載されました。私は多文化共生の課題について論じ、国際交流から多文化共生への重点の移行を訴えました。

JIAMは2003年度から「国際化対応コース」(1994年度開設)の内容を見直し、「在住外国人との共生」をテーマに実施するようになりました。また、2004年11月から2005年3月まで国際化対応能力研究フォーラムを開き、JIAMの国際系研修プログラムの見直しが議論され、多文化共生の初級、中級、上級コースの開設が提案されました。

JIAMは、2006年度に「国際化対応コース」を「多文化共生社会対応コース」と改称するとともに、「多文化共生マネージャー養成コース」を設置しました。前者は幅広い分野の参加者を対象とし、後者は多文化共生事業を担当する職員の専門性を高めることを目的としています。後者の修了者はすでに100人を超え、「多文化共生マネージャー」に認定されています。今年2月に同マネージャーが集まったNPO法人「多文化共生マネージャー全国協議会」が設置され、JIAMと共催で3月に緊急セミナー「多文化共生地域会議」を開いています。

CLAIRは、2003年10月に「専門通訳ボランティア研修プログラム」を公表し、2004年3月には「多言語情報作成マニュアル」を刊行しました。そして、2004年6月に地域国際化協会課題研究会を設置しました。同研究会は全国の自治体や国際交流協会等による多文化共生の取組み事例を集めた「多文化共生社会に向けた調査報告書」を2005年3月に作成し、それ以降、CLAIRは多文化共生社会をめざした取り組みへの支援を強化しています。同研究会には総務省国際室長も参加しており、研究会の成果が翌年の総務省の「多文化共生の推進に関する研究会」の設置につながったものと思われます。

また、CLAIRの機関誌『自治体国際化フォーラム』では、2005年5月号に「多文化共生のとびら」と題したコーナーが設けられ、「2005年は多文化共生元年?」と題した拙稿が掲載されました。以後、不定期に多文化共生関連記事が掲載されています。

2009年度になって、新たな動きが起きています。JIAMでは、「多文化共生社会対応コース」を「多文化共生の地域づくりコース」と改め、修了者を「多文化共生推進サポーター」に認定します。CLAIRは2009年4月に地域支援課を多文化共生課に改めました。両組織は今後ますます多文化共生社会づくりにおける縁の下の力持ちの役割を担っていくことでしょう。