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第21回2008.12.24

国際移住機関

国際移住機関(International Organization for Migration, 略称IOM)は、世界的な人の移動の問題を専門に扱う国際機関です。IOMのウェブサイトによると、「正規のルートを通して、人としての権利と尊厳を保障する形で行われる人の移動は、移民と社会の双方に利益をもたらす」という理念に基づき、移民への直接支援から関係国への技術支援、地域協力の促進まで、幅広い活動を行っています。

IOMの前身は、1951年に欧州からラテンアメリカへの移住を支援するため設立された欧州移住政府間委員会で、その活動範囲を徐々に世界各国へと拡大し、1980年には移住政府間委員会へと名称変更がなされ、1989年に国際移住機関となりました。IOMの本部はスイスのジュネーブにあり、世界各地に420以上の事務所があります。加盟国は2008年12月現在125カ国で、日本は1993年に加盟しました。

日本におけるIOMの活動は1980年代のインドシナ難民受け入れ支援に始まり、近年では、人身取引対策や新日系フィリピン人への支援などに取り組んでいますが、多文化共生との関連で重要なのは、移民政策をテーマとした各種シンポジウムの開催です。2004年から毎年、外務省と組んで、移民の社会統合をテーマに国際会議を開くなど、日本の外国人政策の構築に貢献しています。2008年6月に発表された自由民主党の移民政策の提言づくりにも協力しました。

実は、お隣の韓国では、近年、IOMと政府の協力関係が急速に進んでいます。IOM、法務省そして京畿道の協力によって、移民研究・研修センターを韓国につくる計画が進んでおり、2009年に京畿道高陽市に開設の予定です。IOMは、先月、高陽市で移民研究と研修をテーマにアジア太平洋の専門家を集めた2日間の国際会議を開き、筆者も参加しました。法務省の秋圭昊出入国・外国人政策本部長が開会の挨拶を行いましたが、IOMと組んで、世界標準の移民政策の構築を目指す意欲を感じました。

東アジアの主要な移民受入れ国である日本と韓国が、今後どのような方向に進むのかを探る上で、IOMの動向にも注目したいと思います。