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第20回2008.11.26

日本・ブラジル・在日ブラジル人

2008年11月9日に東京で、「在日ブラジル人これからの100年」というシンポジウムが行われました。駐日ブラジル大使館、外国人政策研究所、国際移住機関(IOM)が共催したもので、日曜であったにもかかわらず、200人近い人が集まりました。駐日ブラジル大使館が主催するシンポジウムというのは、おそらく初めてであったと思います。日本のブラジル移住100周年を記念して、ブラジル政府から大使館に開催の指示があったそうです。

午前の部では、まず来日して間もないルイス・アウグスト・デ・カストロ・ネーベス・ブラジル大使が基調講演を行いました。予定の時間を大幅に超えた熱意あふれる講演で、在日ブラジル人コミュニティの課題に最優先で取り組んでいきたいと発言しました。続いて、「在日ブラジル人の子どもの教育」をテーマにパネルディスカッションがありました。外務省の高杉優弘南米課長、鈴鹿市の水井健次教育長、三井物産CSR推進部の柴崎敏男氏、そして在日ブラジル人学校協会のジュリエッタ吉村会長が参加し、私がコーディネータを務めました。

午後の部では、最初に上智大学の三田千代子教授の問題提起があり、続いて、「日本の移民政策と在日ブラジル人」をテーマにパネルディスカッションを行いました。外国人政策研究所の坂中英徳所長と浜松氏在住のブラジル人弁護士の石川悦夫氏、上智大学のエディソン・ウラノ講師そして三田教授が参加し、IOMの中山暁雄駐日代表がコーディネータを務めました。最後にブラジルから来日した外務省のマイヤ次官が総括のコメントをして閉会しました。

日本とブラジルの間では、2004年に小泉首相(当時)がブラジルを訪問し、2005年にルラ大統領が日本を訪問し、両首脳は共同文書を作成しました。その中に「在日ブラジル人コミュニティに関する共同プログラム」が含まれました。その結果、教育、社会保障、司法・刑事に関する二国間協議が始まりました。また、「日伯21世紀協議会」が設置され、2006年に提言をまとめています。

在日ブラジル人に関するこれまでの両国間の交渉では、日本政府はブラジル政府が責任をもつことを訴え、ブラジル政府は日本政府が責任をもつことを訴え、なかなか進展がなかったようです。今回、新しいブラジル大使が初めての公の場でのスピーチで、ブラジル人コミュニティの課題に取り組むことを述べたのは、画期的なことといえるでしょう。これまでもっぱら移民受入れ国であったブラジルも、今後は在外ブラジル人コミュニティの課題への取り組みに力を入れるようです。

今月、アメリカで開かれた金融サミットに集まった世界主要20カ国首脳の記念写真では、中央に位置したブッシュ・アメリカ大統領の隣にルラ大統領の姿がありました。新興国のリーダーとしてブラジルへの注目が集まっていますが、今後、日本にとって日伯関係はますます重要になっていくでしょう。日本政府も在日ブラジル人の課題により前向きに取り組んでいく必要があるのではないでしょうか。

世界的な金融危機の発生によって、日本の企業も大きな影響を受け、間接雇用の在日ブラジル人の解雇が広がる中、このシンポジウムをきっかけに、在日ブラジル人の生活環境が改善されることを願っています。