メールマガジン

第14回2008.05.28

外国人から移民へ?

4月にテレビ朝日の報道番組「サンデープロジェクト」で発表されて以来、自由民主党の国会議員が集まった外国人材交流推進議員連盟(中川秀直会長)による移民政策の提言が、大きな注目を集めています。今後50年で総人口の1割にあたる移民を受け入れて、多民族国家をめざすという大胆な提言です。ここでの移民は単なる定住外国人を超えて、日本国籍を取得する人々が想定されています。6月中に最終提言をまとめるそうです。

実は、こうした移民政策の提言は初めてのことではありません。小渕恵三首相(当時)が設けた「21世紀日本の構想」懇談会が2000年1月に発表した報告書にも、移民政策へ踏み出すことが含まれています。また、月刊誌『Voice』2003年9月号に、民主党の若手議員有志が「1000万人移民受け入れ構想」を発表したこともありました。

移民政策は、どのような外国人をどれだけ受け入れるかにかかわる出入国政策と入国した外国人をいかに社会の構成員として受け入れていくかにかかわる統合政策に大きく分かれます。出入国政策と統合政策は車の両輪のようなもので、どちらが欠けても移民政策はうまくいきません。ところが、移民政策というと前者に関心が集まりやすく、マスコミ報道も前者に偏りがちです。

統合政策を考える時には、すでに国内で暮らす200万人あまりの外国人の受け入れのあり方を踏まえる必要がありますが、すでにこの連載でも取り上げてきたように、居住、教育、労働、医療、保健、福祉、防災等課題が山積みです。日系人労働者の受け入れのあり方については、外国人集住都市会議から繰り返し政策提言が出されていますし、研修・技能実習制度については、国内外から人権侵害の指摘と抜本的見直しの声が上がっています。新たな移民受け入れの構想には、こうしたすでにある課題の解決策が含まれていなければなりません。

また、1990年に改定入管法が施行され、日系人の入国要件が大幅に緩和された時には、一部の省庁や与党関係者の間で実質的な政策決定がなされ、その後急増した日系人労働者への対応に追われることになる地方自治体や地域社会の意見が反映されることはまったくありませんでした。今後、新たな外国人の受け入れ制度をつくる時には、自治体、市民団体、企業、国際機関など、できる限り幅広く意見を集約して、政策決定を行うことが望まれます。