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第13回2008.04.23

外務省

3月25日、静岡市で外務省と国際移住機関(IOM)、静岡県共催の「外国人住民と社会統合に関する国際シンポジウム」が開かれました。副題は、「国際的経験の共有と地域における日系ブラジル人住民の課題を中心にして」です。

外務省とIOMが組んで国際シンポジウムを開くのは、今年で4年目となります。最初の年、2004年度は「国境を越えた人の移動-経済連携協定と外国人労働者の受け入れ-」(7月)と「外国人問題にどう対処すべきか-諸外国の抱える問題とその取り組みの経験を踏まえて-」(2月)をテーマに開催されました。2005年度からは毎年3月に開催され、「外国人問題にどう対処すべきか-外国人の日本社会への統合に向けての模索-」(2006年3月)と「外国人問題に関する国際シンポジウム-移民の社会統合における国際的経験と日本の課題-」(2007年3月)をテーマに開かれました。私は去年に続けて、今年のシンポジウムにもモデレーターとして参加しました。

今回のシンポジウムの特徴は何といっても、これまで毎回、東京都渋谷区の国連大学で開いてきたのに対して、初めて地方都市での開催となったことにあります。その結果、静岡県の関係者が多く登壇し、またフロアでも多数を占め、議論がより具体的で迫力のあるものになりました。

シンポジウムは大きく2つのセッションに分かれました。第1セッションは「多文化主義の現状と課題」と題し、ヨーロッパの中でも、移民の言語や文化の維持を推進する多文化主義的な統合政策の推進に最も積極的であるとみられているスウェーデンとオランダから講師を招き、両国の取り組みに焦点をあてました。スウェーデンでは1975年、オランダでは1983年に、それぞれ統合政策の基本方針を定め、以来、積極的な政策が採られてきましたが、2000年代に入ってから、移民政策が選挙の主要争点となり、政権交代が起こり、多文化主義的な政策の見直しが進行していることがわかりました。

第2セッションは、「日系ブラジル人と社会統合」と題し、静岡県における日系ブラジル人にかかわる課題を取り上げました。まず、浜松市におけるブラジル人の子どもの不就学や児童労働の実態がビデオで紹介され、会場に衝撃を与えました。また、小学生の時に来日し、困難を克服して大学に入学したブラジル人学生の体験談は聴衆の心を打ちました。パネル討論では、ブラジル人社員のために社内で日本語教室を開いている企業の実践が紹介され、社会統合における企業の役割のモデルとして大きく注目されました。

日本政府の取り組みは、自治体やNPOに比べると遅れぎみで、この二、三年の間にようやく動き出したところですが、今回のシンポジウムでは、児童労働の問題など、行政関係者が認めたくないような現実も取り上げ、課題を浮き彫りにしたことを高く評価したいと思います。