メールマガジン

多文化共生社会に向けて

明治大学商学部教授 山脇 啓造 氏

第07回2007.10.24

国際メトロポリス会議

2007年10月8日から12日まで、オーストラリアのメルボルン市で、移民問題に関する世界最大の国際会議である国際メトロポリス会議(International Metropolis Conference)が開催されました。この会議は、移民問題に関する研究と政策そして実践をつなぐために1996年にイタリアのミラノ市で始まり、以後、毎年一回、開催され、今年で12回目となります。会議のテーマは、「人の移動・経済成長・社会的結合(Migration, Economic Growth and Social Cohesion)」でした。

会議を組織したのは、オーストラリア多文化財団、モナシュ大学グローバル・ムーブメント研究所そしてカナダ市民権・移民省メトロポリスプロジェクトチームを含む実行委員会で、スポンサーはオーストラリア移民・市民権省、ビクトリア州政府、メルボルン市、スカンロン財団(オーストラリア)となっています。

会議の参加者は、研究者と政府や自治体、NGO関係者などあわせて750名を超えました。地元のオーストラリア人がおそらく半数近く、国外からはカナダから100名を超える参加があり、ニュージーランドからもたくさん参加していました。あとは米国と西欧からの参加者が多かったようです。カナダやオーストラリアの参加者の中には、アジア系移民が含まれていましたが、アジアからの参加者は非常に少なく、私の出会った日本人はわずか3人でした。

会議は5日間で、初日は開催地のNGOや移民コミュニティなどを訪問するスタディツアーが行われ、2日目から最終日までは、午前中に全員が参加し、大きなテーマを扱う全体会があり、午後には具体的なテーマを扱い、同時に多数開かれるワークショップがありました。全体会では、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの移民政策担当大臣の講演もありました。

今回、オーストラリア・ニューサウスウェールズ州政府と国際交流基金に招聘された私が参加したのは、会議4日目に開かれたワークショップと最終日の全体会でした。ワークショップのテーマは、日本とカナダ・ケベック州、オーストラリア・ニューサウスウェールズ州の受入れ政策で、全体会のテーマはアジア太平洋でした。私は、総務省の多文化共生推進プログラムや外国人集住都市会議の活動などを紹介しましたが、全体会での日本人の報告は初めてだったようで、大変注目されました。

会議に参加して、欧米諸国は専門・技術職の移民の受入れをめぐって競争しながらも、互いの移民受入れ全般の経験を共有する協力関係もあることが印象に残りました。アジアでも、日本や韓国など受け入れ国と中国やフィリピンなど送り出し国の研究者や政府、自治体そしてNGO関係者が集う知的交流の場があるとよいのではないかと思いました。

International Metropolis Conference
http://www.metropolis2007.org/