メールマガジン

コラム

アウェイクナーコーチングオフィス 代表 岡崎 克哉 様

2019.10.23

ファシリテーションスキルの向上

 皆さんはファシリテーションと聞いてどのようなイメージを思い浮かべられますか。
 人によっては会議やミーティングの司会進行、もしくはディベートの場を取り仕切るというようなイメージなのかもしれませんが、もともとファシリテーションという言葉には「促進する」「容易にする」という意味しかありません。
  何を促進し容易にするのかと言うとグループで目指しているゴールまでのプロセスです。換言すると、メンバーの相互理解を促進し組織としての潜在能力が容易に発揮できるような場を作ることがファシリテーションだといえます。
 
 そして、ゴールまでの効率を高める要素の一つとして実のある会議があります。
 実のある会議とは活発な意見の出る会議 、参加者全員がゴールに向かって参画意識を持っている会議、参加している皆に納得感のある結論が出せる会議を指しています。
 
 では、実のある会議のために普段からできることは何でしょうか。
 実のある会議といっても普段の仕事の延長線上にしかありません。日常的に発生する相談事や1on1もしくは少人数でのミーティングの場、ここで相手から意見がでなかったり決めたことが形だけで実行されなければ、より多人数で他部署他部門との連携が必要な際にはゴールまで達成することも難しいでしょう。
 
 相手に意見を言ってもらう、本音を話してもらうにはこちらの聞く態度が影響を及ぼします。
 もちろん皆様は聞く姿勢態度をしっかりととられていることと思います。しかしながら相手(部下)の側からはどのように見られているのでしょうか。自分の評価を下げられないために本音を隠したり、気付いたことを言ってしまうと余計に自分の仕事が増えてしまうと思って黙っていたりすることはないでしょうか。
 こちらはそんな意図を持っていないのに相手が防衛的になっている場合もあります。それを乗り越えて話をしてもらうには、聞く姿勢態度はもちろんのこと聞く意欲があることを周知しこちらからも積極的に話しかけ、相手の話を批判判断せずに一旦受け止める心構えが必要です。
 一見、簡単で些細な内容にも思えますが日常業務の忙しさや諸々のストレスを感じながらも常に聞く姿勢を保ち続けることは案外と骨が折れます。特に自分の思う常識とは違う意見に対しても批判せずに一旦受け止めるためにはこちらにも余裕が必要な時もあります。
 さらに、複数名が集まる実際の会議の場では参加者同士の関係でも発言量に影響があります。

 次にゴールに向けての参画意識ですが、上意下達で決められたことを実行するようにと指示されてもあまり参画意識が高まらないことは想像がつくと思います。指示に従うだけの場合、内容に幅のある部分は本人にとって都合の良い解釈で実行されます。それよりも、自分の出した意見が何らかの形で反映されていると思った方が積極的にかかわるモチベーションも上がります。
 会議の場で一言だけ話した内容が結果に反映されるのかというとそれは厳しいかもしれません。だからこそ、内容の質は問わず量を重視し全員から意見を聞いた方が全体の参画意識を高めていくことにつながります。どうしても優秀な人(もしくは決定権を持っている人)が発言した後は気後れして自分の意見を言い出しにくくなることがあります。しかし、より良い意見にブラッシュアップしていくためには別の視点からの意見も大切です。
 
 A案とB案で選ばれなかった方は完全に棄却してしまうという方式ではなく、両方の良い所を持ち寄ればより良いC案が作り出せるかもしれません。そのためにも多様な視点からの意見は必要なのです。
 意見をたくさん出してもらうためには、普段から相手の話を否定せずに聞く、意見が出てくることに価値があるということを態度で示し続ける必要があります。掛け声だけは意見を求めていると言っても、実際に意見が出てきた時に一方的に決めつけてしまったり、相手の話を最後まで聞かないなど言行が不一致であればすぐに意見は出てこなくなります。
 これらの事はファシリテーターだけが意識していればよいわけではなく、会議の参加者全員で共通認識としておく必要があります。
 
 それと同時に相手の意図を正しく理解することも必要です。同じ言葉を使っていても立場が違えばその言葉から連想するイメージも当然違います。早合点や勘違いのまま計画が進行すれば露見したときに修正の手間が増えてしまいます。
 未然に防ぐためには共通言語化や曖昧な表現は使わないなど確認が必要ですが、完璧に理解しあえるまで時間をかけることは現実的ではありません。それよりも、進めてみて途中で確認し話し合う、お互いに疑問があれば遠慮せずに質問できる関係を維持するほうがゴールを達成するためには効率的です。

 そして、会議の結果に納得感を持てるかどうかの要因として、決めたことの実現可能性やメリットの多寡もありますが、会議の参加者として自分は本音を話し相手はそれを正しく理解してくれた、相手も本音を話し自分も相手のことを理解できたという感情的な面もあります。疑問点は聞き尽くした、言いたいことも言い尽くした、相手はそれを受け止めてくれたという感覚や参加者として相互理解が深まったという手ごたえが納得感につながります。
 いきなり、一回だけの会議で参加者全員が納得感を持つのは難しいかもしれません。また、計画が進行すれば新たな疑問が湧いてきたり状況に変化もあるでしょう。その時にためらわず相談しあえる関係を維持することがゴールまでの道のりを効率的にしてくれます。
 
 振り返ってみると、会議の場だけではなく普段からの関わり方が大切だと気付かれると思います。
 相手が意見を言いやすい雰囲気作りをしておくこと。お互いに考えが正しく伝わる共通言語を準備しておくこと。相互理解を深めておくこと。今回挙げたスキルをさらに掘り下げて職場で実践しやすいように研修ではお伝えしています。
 そしてファシリテーターだけがこれらを意識するのではなく組織の全員が人の話を聞く姿勢を持ち相互理解を深められれば、自ずと会議の質は高まり組織のゴールに向かうプロセスの効率も上がります。
 
 紙幅に限りもあり今回触れられなかった内容も多数ありますが、ファシリテーションにご興味をお持ちいただけましたら幸いです。
 皆様のますますのご活躍をお祈りしております。