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コラム

データ&ストーリーLLC 代表 柏木 吉基 氏

2019.04.24

『地方創生にデータで挑戦したい自治体職員のための、実践データ活用術』

"制約"の中で"最適解"を求められる行政

 限られた予算、人、時間の中で行政ができることは益々限られます。同時に、取り巻く状況が速いスピードで変化し、過去の前提が崩れるケースも多いでしょう。その中で、過去の踏襲や「他の自治体がやっているから」という横並びによる意思決定は通用しません。

「市民の日々の生活を支える」という重要な活動と並行して、これからの自治体には、最適な活動を常に吟味、実行することが強く求められるのではないでしょうか。
例えば、お金や人の使い道について、"客観的な優先度"を付けられるか、それともこれまで通り"全方位的"に満遍なく配分するのか。後者ができる間は良いでしょうが、もはやその余裕がない中で必要なのは、関係者が納得できる合理的な決断です。そのためには、客観的なデータを用いた、以下のような評価が必要になります。

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データを用いてこれらを実現するやり方は多々ありますが、今回は基本的・本質的な3つのポイントについて紹介します。

「まずはデータを見る」を止める
自治体職員に限らず、多くの民間企業でも「データはあるのに使えていない」という共通の悩みを持っています。その主原因の一つは「まずは目の前のデータを見てみる」ことから始めることです。並んだ数字を見たら、まずはグラフを作ってみる、平均値や合計を出してみる・・・など、身に覚えはありませんか?実はそれがあなたを「データを活用できない」人にしているのです。


データ分析を実務で活かせていない人は、
「目の前のデータを適切にいじると、何か有用なものが見えてくるはず。何も見えてこないのは、分析方法や知識が欠如しているからだ」と思っています。ズバリ!

データがあなたに答えを持ってきてくれることはありません。どんなに高度な統計や分析を駆使しようとも、です。

代わりに、
「あなたは何を知りたいのか。それを知って何をしたいのか。そのためには、どんなデータ(指標)が必要なのか」
を具体的に考えることが必要です。
この部分がすっぽり抜けたままデータを眺めたところで、使えないグラフが量産されるだけです。

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方策に飛びつかない(正しいプロセスで)
データで現状確認(例えば人口減少や産業の衰退など)をした次に、皆さんは何をしますか?
「ではこの現状をどう解決すれば良いか」
つまり"方策"を考えてはいないでしょうか?
もちろん具体的な方策案は最終的に必要です。でも、このままでは、先に書いた「効率」や「優先度」「重要度」などは全て置き去りです。

「なぜ、その方策が有効と考えられるのか?」
「その方策はどんな根本問題を解決してくれるのか?」

など、当たり前とも言えるこれらの質問に一切答えることなく、実行だけはできてしまうところが、問題の本質を見えにくくしています。

では何が抜けているのでしょうか。
下図のように、方策を考える前に「なぜその問題が起こっているのか」「何が原因(要因)なのか」を深掘りしていないのです。これでは、データは単に現状把握をしただけで、肝心な方策は「誰かの思い付き」に留まります。それは「データを活用した方策」とは呼べません。

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何でもかんでもすぐに「方策検討」に走らず、「自分は要因まで掘り下げたか」を常に自問するようにしましょう。要因に紐づいた方策だからこそ、実効性や論理性があるのです。
要因の解決に直結するものが「重要」であり「優先」である、という考え方、示し方ができるようになりたいものですね。

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比較により評価を行う
最後に、「"現状把握"をどのようにすべきか」について考えましょう。
仕事でデータを活かすには、単に結果や現状値を確認するだけでは事足りません。
例えば、以下のグラフから「我が町の人口が減り続けています。3万人を切っています」と言ったところで、「どこでも人口は減っている。ところで我が町はどこまで"深刻"なんだ?」と聞き返されてしまうでしょう。

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"結果"を示すことだけではなく、それを"評価"することで数字に意味が生まれ、次のアクションにつながります。「グラフはたくさん作るけど、結局それを見てお終い」というよくありがちな状況もこれが原因の一つです。まずは、次の原則を頭に叩き込みましょう:

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評価は、何かと比較することが必要です。比較によって、その値が良いのか悪いのか、高いのか低いのか、などの評価ができます。その際に考えるべきことは次の2つです:

どのようなデータ(指標)を使うことが適切か
何とどのように比較するか

①については、「「まずはデータを見る」を止める」の記載内容を思い出してください。
②は、決まった正解がないばかりでなく、何と比較するかによって結論が変わります。分析者の目的次第、と言えます。

一例です。我がOO市(左下)は、全国や県全体と比べると下落傾向(右肩下がりの角度)がより大きいが、隣接する同規模のYY市との比較ではそこまで深刻ではないと言えます。

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では何が正しい答えなのでしょうか?
いずれも正しい結果です。あなたは「何と比較して何を訴えたいのか?」が先に定まっていないと、ここで思考停止してしまうことでしょう。例えば、産業や地理的状況が似ているYY市と比較して、我が市の人口政策のどこがうまくいっていて、県比較ではなぜより深刻なのか、を深掘りするというアクションにつなげられるかもしれませんね。
「見せ方」の工夫も大事です。先のグラフは縦軸の尺度がバラバラでした。下落傾向(角度)を比較することが目的であれば、次のように起点を揃えて、下落率を示すことが可能です。

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結論は先と変わりませんが、目的に沿った「見せ方」を工夫すれば結論が効果的に伝わります。

最後に、仕事でのデータ活用の達人に近づくための大事なポイントをもう一つ。
作業から最初に手に入るものは"結果"です。仕事で使うためには、それを"結論"に変換する必要があります。"結論"は「目的」なくして作ることができません。故に、最初に「何が知りたいのか、何をしたいのか」を徹底的に考える必要があるのです。その目的に対して、結局何が言えたのか、を計算結果ではなく、分かりやすい言葉に置き換えて結論としてみましょう。結論が言えない、思いつかない場合、目的なく(または不十分なまま)作業を始めている可能性が高いです。これを自己チェックできるようになると、データ活用スキルは格段に向上し始めるはずです。

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今回紹介した内容は、基本的なポイントです。これらを含め、研修や実践プロジェクトなどで全国のやる気と危機意識のある自治体を多くサポートさせて頂いております。ご興味がある方はご相談ください。