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コラム

株式会社 紡 代表取締役 玉沖 仁美

2018.08.16

コーチング型プロジェクトマネジメント

 私はカウンセリングの資格を複数取得し、カウンセリング技術を用いて地域づくりに取り組んでいます。地域づくりにおける課題解決のために、複数の関係者や参加者で取組む場合の手法の一例として、ご紹介します。

 今回は「ソリューションフォーカストアプローチ(解決志向アプローチ)」という技術を引用し地域づくりに取組む場合のステップを解説致します。特徴は十分な現状把握、ゴールを明確にし共有する、コンプリメント(後述)という労う、認めることを行いながら推進するなどの点です。この技術を引用するメリットは、多様な関係者と1つのチームとなって取組む場合のゴールまでのステップや達成状況の共有やモチベーションが維持しやすいことです。この技術を軸に置きながらマネジメントやコミュニケーションの取り方を工夫していけば、こんなはずじゃなかった・・・ということを最小限に抑えられると思います。

 主にリーダー役を務める方に向けて、"ちょっとしたコツ"もご紹介しながら次に5つのステップに整理し、お伝えいたします。

 

5つのステップ

はじめに

 まず、「そもそもどうしてこれに取り組むのか(取り組みたいのか?)」を共有します。なぜなら、一生懸命取り組んで行く過程で、今どこにいるのかが認識できなくなることがよく起こります。そのような時に「そもそも何がやりたかったんだっけ?」と立ち返る場所になるからです。また、目標を達成する過程では、選択と決断を迫られることが多々あります。その場合の選択基準にもなります。

 どうして取組むのかを共有できたら、以下の5つのステップに進みましょう。

 

① 現状把握

 今よりも変えたいことがあるからチャレンジをされると思いますが、現状を悲観的に捉えるのではなく「事実」として把握しましょう。またスタート地点でもあります。この時、改善策の手法を論じ合うことになりがちですが、早々に②のゴールについて会話を移すことが大切です。

 

② ゴールを明確にする

 ゴールとは、目標でもあり成果でもあります。つまりは「どうなりたいのですか?」ということです。数値目標がクローズアップされがちですが数値を定量目標とし、現象面についても定性目標として設定しましょう。そもそも、数値目標も住民が幸せになるための目安です。しかし、この数値目標に、がんじがらめになって"仕事の仕事"が増えるなど本末転倒な結果になる例も少なくありません。例えば「観光客を年間1万人増やす」という数値目標なら、1万人増えたら、どういう現象が起こるのか?ということも共有しましょう。ある町で皆で頑張って観光客が増えたら役場の観光収入が増える、ではそれで町内の木材で製作した座り心地の良いベンチを買って欲しい、という話になりました。この場合は素敵なベンチを設置することが定性目標です。定性目標は取組む皆さんが身近に感じることができてワクワクするもの、くじけそうになった時に元気になれる合言葉になるようなものが理想です。今回の例では「観光客が来てくれたらベンチが増える!」になります。

 

③ 過程を見立てる  

 スタート地点(現状把握)とゴールが設定できれば、どういう道筋で進めば良いかボンヤリと想像がつくと思います。次にそれを時間軸に組立てます。例えば「ゴールまで一年だとしたら、関係者の調整と準備に3ヶ月要して・・・夏から秋にキャンペーンを実施して・・・」という風に。

 ここで、取組む内容の大まかなコンテンツを抜粋します。

 

④ 逆算した行動計画

 ③で挙げておいた取組む内容のコンテンツを、ゴールの期日から逆算して所要時間を入れて、実施計画を組立てます。

 例えば、以下のように1〜5まであるとすると、1(スタート)と、5(ゴール)だけが明確に決まっていて、5のゴールから1に向けて逆算して設定して行きます。

1.4月(スタート):現状

2.◯月:◯◯◯を実施

3.◯月:◯◯◯を実施

4.◯月:◯◯◯を実施

5.来年3月(ゴール):達成したいこと

 

⑤ 組立てた軌道に沿ってゴールへ!

 ④で設定した内容を、1のスタートからゴールに向かって取組んで行きます。

 

●リーダーの役割

業務マネジメント

 リーダーの方の最も重要な役割は、プロジェクトを前に進めて行くことです。いわゆる「業務マネジメント」です。業務マネジメントというと難しく聞こえますが「いつまでに」「誰が」「何をする」ということを共有しておき「いつ」の時点で進捗状況を共有するようにしておけば、停滞することはありません。

 

●モチベーション

 前向きに楽しみながらゴールに向けて進みたいものです。ソリューションフォーカストアプローチの特徴でもある「コンプリメント技術」をご紹介します。これは、労う、褒める、認めるというものです。

・直接コンプリメント技術

  「今日のお洋服素敵ですね。」

  「先日の進行は素晴らしかったです。」

  と、自分の気持ちで直接、伝える方法。

・間接コンプリメント技術

  「先日、会長が◯◯さんの仕事ぶりを丁寧だと絶賛しておられましたよ。」と、他者の評価などを引用して伝える方法。

 相手が喜んだ変化が見られなくても必ず通じていますから、コンプリメントを行い続けることです。褒められた当事者ではなくてもプラスの言葉を耳にすると明るい気分になり全体のモチベーションの向上にも役立ちます。

 

皆さんの目標が達成し願いが叶う一助となりますよう、願っております。