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第55回2011.10.26

日韓欧多文化共生都市シンポジウム

韓国ソウル市内で、韓国多文化学会と日本の国際交流基金そして駐韓日本大使館の共催による「日韓欧多文化共生都市シンポジウム」が8月19日に開催されました。このシンポジウムは当初3月に予定されていたのが、東日本大震災の影響で延期となり、8月に実現にいたったものです。

 シンポジウム第一部では、住民の多様性を都市の活力の源泉とする欧州評議会の「インターカルチュラル・シティ・プログラム」(第43回拙稿参照)と日本および韓国における自治体の取り組みの全体状況が紹介されました。第二部と第三部では、韓国と日本の自治体関係者の発表がありました。韓国からは、ソウルグローバルセンター、安山市外国人住民センターおよび光州市国際交流センターの所長による発表があり、日本からは、新宿区と大田区の多文化共生担当課長および新宿区の韓国人コミュニティ代表者による発表がありました。

 韓国では、2006年5月に「外国人政策の基本方向及び推進体系」が制定されて以来、急速な勢いで外国人政策の改革が進み、国の強力なイニシアティブによって、地方自治体による外国人住民の受け入れ態勢が整備されてきました(第6回及び第18回拙稿参照)。今回のシンポジウムでは、韓国側が過去5年を振り返って、地域に根差した取り組みの弱さや日本の集住都市会議のような自治体間のネットワークがないことなど、国主導による取り組みの課題が指摘されたことが印象的でした。

 多文化共生をテーマにした日本と韓国の自治体交流のイベントは、2009年に同じくソウル市で開催された日韓地方行政フォーラム(自治体国際化協会主催)以来と思われます(第29回拙稿参照)。今回、欧州の「インターカルチュラル・シティ」の報告が加わったことにより、日韓自治体の取り組みを、より大きな国際的文脈の中で評価する視点を得たことになります。新宿区や大田区のように多文化共生の担当課を定め、首長のリーダーシップで多文化共生を推進している日本の自治体はまだまだ限られますが、こうした機会に、国内外で同様な課題に取り組んでいる自治体と交流することがエンパワーメントにつながることが期待されます。

 なお、8月22日には東京で、「インターカルチュラル・シティ・プログラム」をテーマにした自治体職員向けワークショップ(国際交流基金主催)も開催されました。