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第18回2008.09.24

韓国自治体の外国人施策

今月初めに一週間、韓国を訪問しました。ちょうど一年前の拙稿「韓国の外国人政策」で、韓国政府の外国人政策が大きく転換したことを報告しましたが、今回は自治体の取り組みについて紹介したいと思います。
 行政安全部(地方行政を所管、総務省に相当)が発行した『地方自治団体 外国人住民の現況』(2008年8月)によると、90日以上韓国に居住する「外国人住民」(国籍取得者、不法滞留者を含む)は約89万人で、住民登録人口の1.8%に該当します。そのうち、外国人勤労者約44万人、結婚移民者が約14万人、そして国際結婚家庭子女が約6万人となります。地域別に見ると、ソウル特別市(以下、ソウル市)に約27万人、京畿道(ソウル市を取り囲んだ地域)に約28万人で、全体の6割がこの二地域に集中しています。

(1)ソウル市
 韓国の首都ソウル市は約1000万人の人口を抱える韓国最大の都市です。外国人住民の比率は約2.5%です。ソウル市は、今年の1月に外国人の生活、ビジネスおよび文化活動を支援するため、「ソウル・グローバル・センター」を開設しました。各種行政手続きから携帯電話の加入までワンストップサービスを目指しています。また、市内の外国人の多い地域5箇所に「グローバルビレッジセンター」を設置しました。

(2)ソウル市城東区
 ソウル市内25区で特に外国人施策に積極的なのが城東区(人口約33万人、外国人住民は約3%)です。城東区では、2001年に全国に先駆けて外国人勤労者センターを設置しました。このセンターは、相談室から教室、パソコン室さらに歯科を含めた無料診療所、フィットネス設備まで備わった本格的なもので、その後、全国の外国人支援の拠点づくりのモデルとなったそうです。

(3)京畿道
 京畿道の人口は約1100万人で、外国人住民の比率は約2.5%となります。京畿道の外国人住民施策の目標は「外国人住民の生活の質向上を通じた多文化共同体の形成」で、「多文化社会のインフラ構築」、「外国人住民・勤労者の権益伸張」、「結婚移民者家族の適応支援」の3つの施策の柱があります。京畿道は、2004年から安山市など道内5市による外国人福祉センターの設置を支援し、まもなく外国人住民支援条例も制定予定ですが、注目すべき事業は「移民政策研究院」の設立です。同研究院は、国際移住機構(IOM)と協力して、2009年3月に高陽市に開設予定です。

(4)京畿道安山市
 人口約70万人の安山市は、京畿道で最も外国人が多く、その数は約3万6千人(人口比約5%)です。全国ではソウル市永登浦区(人口比10%)に次いで二番目に多い基礎自治体となります。去年4月に居住外国人支援条例を制定した安山市は、京畿道の支援を受け、今年3月に外国人住民センターを開設しました。地下1階、地上3階建ての施設で、道内5センターの中で最も費用をかけています。市直営で17名のスタッフが配置され、年中無休で運営されています。相談室ではベトナム、モンゴルなど8カ国出身の相談員が常駐し、労働、医療などの問題について直接あるいは電話で相談を受け付け、通訳サービスも提供しています。また、診療所も開設され、漢方・内科・歯科などの診療を無料で提供し、韓国語やパソコン教室もあります。

外国人住民をめぐる環境が日本と似ている韓国の外国人政策の展開について、今後も注目していきたいと思います。ちなみに、JIAMでは自治体国際化協会と共催で毎年、韓国派遣研修を実施していますが、今年は来月実施予定で「多文化共生のまちづくり」をテーマに掲げています。