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第46回2011.01.26

多文化共生の意識づくり

総務省の「地域における多文化共生推進プラン」(2006年3月)に示されたコミュニケーション支援、生活支援、多文化共生の地域づくりの3本柱の中でも、地域づくり、特に地域社会の意識啓発はなかなか取り組むのが難しい課題です。

第43回に紹介した欧州のインターカルチュラル・シティでは、首長や議員など政治指導者が公的な場でインターカルチュラル・シティをめざすことを宣言し、メディアとも協力して、文化的多様性が都市の活力になることをアピールするように心がけていますが、日本では多文化共生の意識づくりはまだまだこれからといえるでしょう。これまでの取り組みといえば、講演会やシンポジウムを開いたり、お祭りを催したり、あるいは啓発冊子を作成したりということが一般的であったと思います。そうした中で、いくつか新しい動きが出てきましたので、紹介したいと思います。

まず、大阪市の啓発ウェブサイト「Imagine...Soul to Soul 認め合い、ともに活躍する多文化共生社会の実現」を挙げることができます。大阪市の外国人登録者数は約12万人(2009年12月末現在)で、人口265万人に占める外国人登録者数の割合は4.6%です。大阪市では人権啓発事業の一環として、多文化共生のウェブサイトを2010年2月に開設しました。メッセージソングも新たにつくり、外国籍住民のインタビューなど、豊富な音声コンテンツが含まれています。

次に北九州市では、2009年度から毎年10月を多文化共生推進月間として、多文化共生を市民にアピールするキャンペーンを行っています。北九州市は人口約99万人で、外国人登録者は約1万2千人(1.2%)です。2009年11月には市民の投票により、「多文化共生のまち 北九州市」のシンボルマークも定めました。

また、自治体国際化協会も、2010年7月に多文化共生ポータルサイトを開設しました。このサイトは市民向けではなく、自治体職員向けのものではありますが、日本社会に向けた発信として意義あるものと思います。

なお、国においても、2010年8月に策定された「日系定住外国人施策に関する基本指針」において、「日系定住外国人のための施策を進めるに当たっては、日系定住外国人自身が日本の文化・慣習を十分に理解することが重要である一方、彼らを日本社会の一員として受け入れることが、将来に向かって社会の活力になること、そのためにはお互いの文化を尊重しながら受け入れていくことが重要であることについて、日本国民の理解を深めていくことが重要である」と述べています。今後、国からも多文化共生をめざした発信がなされるのか注目したいと思います。

*大阪市「Imagine...Soul to Soul 認め合い、ともに活躍する多文化共生社会の実現」
http://www.city.osaka.lg.jp/contents/wdu060/kokoro-net/index.html
*自治体国際化協会「多文化共生ポータルサイト」
http://www.clair.or.jp/tabunka/portal/