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第62回2012.05.23

オックスフォード大学移民・政策・社会センター(COMPAS)

私が現在籍を置くオックスフォード大学は英語圏最古の名門大学ですが、この大学には移民や難民に関する研究所が三つあり、ヨーロッパの移民研究の拠点の一つとなっています。三つの研究所とは、国際開発学部に設置された難民研究センター(Refugee Studies Centre, RSC)と国際移民研究所(International Migration Institute, IMI)、そして人類学部に設置された移民・政策・社会センター(Centre on Migration, Policy and Society, COMPAS)のことです。この三つの研究所の研究領域は重なるところがあり、2010年11月にはMigrationOxford という共通のウェブサイトも立ち上げ、協力関係にあります。この中で、グローバルな人の移動から地域社会の移民受け入れまで幅広く研究しているCOMPASについて紹介したいと思います。

 COMPAS は2003年に設立され、移民に関する理論や知識を発展させるために研究を行い、政策決定者や市民に情報を提供し、移民に関する経験を有する個人や組織との協力関係を築くことを目指しています。研究スタッフは20人を超え、外国出身者も大勢います。現在、人の移動とダイナミックス、労働市場、シティズンシップと帰属、都市の変化と定住、福祉という5つのテーマにそって研究がおこなわれています。

 インターネットを使った発信に積極的で、2010年8月にツイッター、2011年5月にフェイスブックそして同年7月にはスタッフが交代しながら毎週執筆するブログを開設しています。イギリスでは、この10年ほど移民問題が社会の大きな関心を集め、政治の主要な争点となっていますが、2011年3月には、中立的な立場からイギリスの移民問題に関する基本的なデータを提供する「移民観測所(Migration Observatory)」と題したウェブサイトも開設しています。

 COMPASは前述の2つの研究所と共に大学院の教育にも大きくかかわっています。国際開発学研究科と人類学研究科が共同で設置している移民学の修士課程や、人類学や地理学、国際開発学、政治学、国際関係論などの博士課程で移民研究を行う大学院生の指導に協力しています。

 COMPASでは、学期中の毎週木曜日にイベントが開かれます。(IMIは毎週水曜日、RSCは毎週火曜日と水曜日にセミナーを開いています。)午前にスタッフ向け非公開セミナーがあり、午後には公開セミナー、そして夜には近くのパブに有志が集まります。今学期の公開セミナーの共通テーマは、「毎日の多文化主義(Everyday Multiculturalism)」となっています。一方、ロンドンでは、毎月、政策決定者を対象とした「朝食ブリーフィング」も開かれています。

 私は春学期1回目の非公開セミナーで日本の多文化共生都市の報告をして以来、できるだけ多くのセミナーに参加していますが、毎週木曜日が楽しみです。

※COMPAS
http://www.compas.ox.ac.uk/home/welcome/

※COMPAS Blog
http://compasoxfordblog.co.uk/

※Migration Observatory
http://migrationobservatory.ox.ac.uk/