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第59回2012.02.22

世界移住報告書と「移民の声」

昨年12月に設立60周年(駐日事務所30周年)を迎えた国際移住機関(IOM)が、「移住についての効果的なコミュニケーション」という副題のついた「世界移住報告書(World Migration Report)2011年版」を、同月刊行しました。IOMは、3年前の記事(第21回)でも取り上げた、世界の移民問題を扱う国際機関です。最近では、文部科学省が2009年度に始めた定住外国人の子どもの就学支援事業を受託して、「子ども架け橋基金」を運営していることでも知られています。

 報告書は、移住がグローバル化が進む現代の重要な特徴であるにもかかわらず、誤解が大きく、経済不況の中、世界各地で反移民感情が高まっていることを指摘し、冷静な議論のために効果的なコミュニケーションをとり、正しい情報を伝達することが大切であると訴えています。特に、移民自身の声が社会に届き、移住に関する議論にも反映されることが重要であることを強調しています。IOM駐日事務所が60周年を記念して設置したウェブサイトには、「移民の声」としてペルー人やブラジル人のケースワーカーの文章が掲載されています。

 日本では、戦前から暮らす在日コリアンや中国人などオールドカマーと呼ばれる外国人は、民族団体を組織するなどして、一定の存在感を示してきましたが、1980年代以降増えたニューカマーと呼ばれる外国人の声が社会に届き、注目されることはなかなかありませんでした。しかし、東日本大震災以後、ミャンマー難民や外国人留学生、ブラジル人グループなどが被災地でボランティア活動を始めたことが注目されています。今月、そうしたグループの一つであるブラジル友の会(岐阜県美濃加茂市)が、今年の国際交流基金地球市民賞を受賞したことが発表されました。東日本大震災は深刻な被害を日本にもたらしましたが、震災からの復旧・復興の経験を共有することで、日本人と外国人の距離が少し縮まったかもしれません。

*「世界移住報告書」IOMプレス資料
http://www.iomjapan.org/news/press_255.cfm

*IOM設立60周年記念ウェブサイト(日本語)
http://iomjapan.org/60years/index.cfm

*在住外国人による災害支援活動については、自治体国際化協会が作成したウェブサイト「外国人住民災害支援情報」(http://www.clair.or.jp/tabunka/shinsai/infoforeign.html)参照。