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第44回2010.11.24

外国人集住都市会議 東京2010

2010年11月8日に、東京都内で「外国人集住都市会議 東京2010」が開かれ、約500名の聴衆が集まりました。外国人集住都市会議は、この連載の9回と19回の記事でもご紹介したように、日系ブラジル人を中心とした外国人が多く住む都市の全国ネットワークです。

外国人集住都市会議は2001年5月に13都市が参加してスタートしましたが、今回の会議には28都市の市長等が参加しました。会議は三部構成で、第一部では三つの地域ブロック代表による提言の発表が行われました。まず、岐阜・三重・滋賀・岡山ブロック(12市)を代表して谷畑英吾湖南市長が「外国人市民と共に構築する地域コミュニティー―共生言語としての日本語学習機会の保障に向けて」と題して、続いて、長野・愛知ブロック(6市)を代表して中野直輝小牧市長が「大人の日本語学習の仕組みづくり―企業と地域の連携」と題して、三番目に群馬・静岡ブロック(10市町)を代表して斉藤直身大泉町長が「正しく伝えること、伝わること―情報提供のあり方」と題して、それぞれ提言を発表しました。また、他の会員都市市長による各市の取り組み報告もありました。

第二部では、内閣府、総務省、法務省、外務省、厚生労働省、文部科学省、文化庁の担当審議官等による各府省庁の取り組みの報告が行われました。そして、第三部では、会議座長である清水聖義太田市長、初代座長の鈴木康友浜松市長、そして次期座長の牧野光朗飯田市長と、末松義規内閣府副大臣、笹木竜三文部科学副大臣、小宮山洋子厚生労働副大臣による討論が行われました。昨年11月に外国人集住都市会議が発表した政府への緊急提言に含まれた外国人受け入れの基本方針の策定や外国人庁の設置、外国人の子どもの教育などが取り上げられました。

最後に、災害時の外国人支援について、会議の28会員都市の間で相互に応援する「災害時相互応援協定」を締結し、外国人庁の設置や日本語教育の体制整備などを求める「おおた宣言」を発表して、会議は終了しました。

今年で10年目を迎えた外国人集住都市会議ですが、今回の会議の特徴は、何と言っても、関係府省の副大臣との討論が実現したことでしょう。2001年の設立以来、国に対して政策提言を行ってきましたが、最初の数年はマスコミに取り上げられることも少なく、国の関心も低かったと言えます。それが、2006年の会議の様子がNHKのニュース番組で全国に放映された頃から、国の関心も高まり、次第に外国人集住都市会議を外国人受け入れの政策づくりのパートナーと見なすようになりました。

会議翌日の11月9日には、政府が「包括的経済連携に関する基本方針」を閣議決定しました。この方針は、「平成の開国」を掲げる政府が世界の主要国との間に高いレベルの経済連携を進める方針を示したもので、特に環太平洋パートナーシップ(TPP)協定への参加の是非が焦点となっています。経済連携を進め、「国を開く」ために、農業、規制制度改革と共に人の移動に関して国内改革を先行的に進めることを謳っています。具体的には、看護師・介護福祉士等の海外からの人の移動に関する課題について、検討グループを国家戦略担当大臣の下に設置し、2011年6月までに基本的な方針を策定するとのことです。

政府は2010年8月に日系定住外国人施策に関する基本方針を定めたばかりですが、看護師・介護福祉士に限定せずに、中長期的視点に立った総合的な外国人受け入れ体制整備に取り組むことを期待したいと思います。