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第40回2010.07.28

動き出した日本語教育?

6月18日、「国民の声集中受付月間」において提出された提案及び「全国規模の規制改革要望」に係る過去の未実現提案等への対処方針について閣議決定がなされました。未実現提案等のうち、各府省において実施するとされた事項の中には、「外国人の生活・就労に必要な日本語等を習得する機会の保障」が含まれています。

具体的には、「定住外国人の子どもを含む外国人に対する日本語教育の在り方等については、『定住外国人の子どもの教育等に関する政策懇談会』の委員の意見を踏まえ、定住外国人の子どもの教育等に関する基本方針として『文部科学省の政策のポイント』を取りまとめる。『生活者としての外国人』に対する日本語教育の目標及び標準的な内容等については、文化審議会国語分科会の日本語教育小委員会における検討を踏まえ、各地域における現場の実情に沿った日本語教育を具体的に編成・実施する際の参考として、標準的なカリキュラム案を取りまとめる」と記されています。外国人の日本語習得に関して閣議決定がなされたのは初めてのことです。

「外国人の生活・就労に必要な日本語等を習得する機会の保障」という提案は、2008年6月以来、外国人集住都市会議が規制改革要望として提出してきたものです。今年2月に同会議が提出した提案では、「外国人の生活や就労に必要な日本語の習得機会の保障と学習成果の認定や日本語能力の基準の設定及び能力判定方法の開発を国において検討・制度化し実施する。また、日本語の習得に併せて、日本の法制度や生活習慣など、必要な基礎知識の習得も行える制度とする。上記制度に関連し、日本語能力のレベルや基礎知識の習得状況に応じて、在留資格の取得や期間の変更・更新などにおけるインセンティブとなる優遇措置を導入する」ことが具体的内容となっています。

日本語教育小委員会は、内閣官房に置かれた外国人労働者問題関係省庁連絡会議がとりまとめた「『生活者』としての外国人に関する総合的対応策」(2006年12月)が「日本語教育の充実」を謳っていることを受けて、文化庁の文化審議会国語分科会に2007年7月に設置されました。これまで29回開かれ、日本語教育の現状と課題について整理した後、日本語教育の体制整備および内容の改善について検討してきました。今年の5月には、国が各地域における多様な日本語教育の実践の指針となる標準的な教育内容を具現化するものとして,標準的なカリキュラム案を示し、話題になったばかりです。

中川正春文科副大臣が主宰した「定住外国人の子どもの教育等に関する政策懇談会」を受けて、同省がとりまとめた政策のポイントにおいても、「日本語教育の総合的推進」が関係機関の連携によって総合的に取り組むべき課題に挙げられていました。

新聞報道によれば、国内外の日本語教育にかかわる各府省の担当者を集めた「日本語教育関係府省連絡会議」および日本語教育にかかわる関係機関による「日本語教育推進会議」が設置されるようです(日本経済新聞2010年7月21日朝刊)。

移民の多い諸外国では、社会統合政策の一環として言語教育に力を入れていますが、日本においてもようやくそうした方向に舵を切ることになるでしょうか。