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第38回2010.05.26

文部科学省「定住外国人の子どもの教育等に関する政策懇談会」

官僚主導から政治主導への転換を謳って昨年9月に政権に就いた民主党ですが、なかなか成果があがっていません。この半年余り、多文化共生の分野で政治主導の動きはほとんどみられず、文部科学省の中川正春副大臣が「定住外国人の子どもの教育等に関する政策懇談会」を昨年12月に設置したのが唯一の取り組みと言ってよいでしょう。

その懇談会において中川副大臣が自治体関係者や研究者等から意見を聴取し、「喫緊の課題として、日系人等のいわゆるニューカマーと呼ばれる外国人の子どもの就学や留学生に対する日本語教育等に焦点を絞って」、今後の政策のポイントをとりまとめ、5月19日に発表しました。

定住外国人の教育等に関する基本方針として、「日本語指導の充実等を図るとともに、制度面についての検討を行い、小中学校に入りやすい環境を整備する。また、外国人学校の各種学校・準学校法人化を促進する。さらに、留学生に対する日本語教育等の体制の充実を図る」としています。

今回打ち出された政策のポイントは目前の問題への対応が中心で、自治体関係者などが求めている中長期的な観点に立った基本方針とは言えません。ただし、今後、関係府省庁、自治体等の関係機関が連携して総合的に取り組むべきと、以下の課題を指摘していることは注目に値します。

・外国人の受入れに関する基本方針の策定
・外国人の子どもの教育課題に対処するための関係機関との連携の在り方
・外国人に対する行政サービスの在り方
・日本語教育の総合的推進
・外国人学校の法的な位置付け及び日本語教育への支援

先月は、鳩山由起夫首相が外国人住民の割合が約15%で全国一高い群馬県大泉町を視察しました。滞在時間は僅か2時間足らずでしたが、日本の首相が外国人の多い地域を視察したのは初めてのことと思われます。首相は「多文化共生の時代をつくりあげ、国を開いていくことが非常に大事だ」と述べ、外国人に開かれた国づくりを推進する考えを表明しました。首相に同行した内閣府の大島敦副大臣は、日本に住む日系ブラジル人ら外国人に関する施策について「関係省庁と議論して5月に論点整理をし、夏ごろに定住外国人の基本方針を策定する予定だ」と述べたようです。鳩山政権が多文化共生社会の形成に向けた理念と政策を打ち出すことを期待したいと思います。

文部科学省「定住外国人の子どもの教育等に関する政策懇談会」
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/kokusai/008/index.htm