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第37回2010.04.28

総務省「多文化共生の推進に関する意見交換会」

先月、総務省が設置した「多文化共生の推進に関する意見交換会」が報告書を公表しました。この意見交換会は昨年9月に設置されたもので、5回の会議を経て、今回の報告書が取りまとめられました。

この意見交換会は、2012年7月までに外国人住民が住民基本台帳の適用対象となることが予定される中、多文化共生の推進に向けた地方自治体の取り組みを支援するために設置されたものです。具体的には、多文化共生施策に取り組む地域の先駆的な事例の整理・分析を行い、地域の実情に応じた多文化共生施策の推進に関する課題の明確化を目指しました。

今回の意見交換会で特に着目したのは、地域によって外国人住民の構成が大きく異なる点でした。そこで、南米系ニューカマーが多い愛知県や静岡県磐田市、アジア系ニューカマーの多い東京都新宿区、在日コリアンの多い大阪市、農村部などに外国人が分散居住する宮城県など多様な自治体が今回の意見交換会に参加しました。

報告書には、参加自治体の取り組み事例が紹介された後、自治体が外国人住民の現状を把握するための視点として、「集住」と「非集住」、「オールドカマー」と「ニューカマー」、「南米系ニューカマー」と「アジア系ニューカマー」といった類型が示され、今後の検討課題として、自治体における外国人住民の現状把握のあり方と具体的取り組みを進める際の関係主体の連携のあり方が指摘されています。

総務省は、2005年度に「多文化共生の推進に関する研究会」を設置し、多文化共生の具体的取り組みを提言した同研究会の報告書を受けて、「地域における多文化共生推進プラン」を策定し、全国の自治体に多文化共生施策を総合的かつ計画的に推進することを求めました。翌2006年度も同研究会は防災ネットワークのあり方及び外国人住民への行政サービスの的確な提供のあり方について必要とされる具体的取組についての提言を行いましたが、その後、研究会は置かれなかったので、今回の報告書は3年ぶりのものとなります。

これまで、外国人集住都市会議の政策提言などによって、南米系ニューカマーの多い自治体に注目が集まり、関係省庁の取り組みもそういった自治体への支援策を中心とする傾向がありましたが、今回の報告書が外国人住民の構成などが異なる多様な自治体に目を向け、多文化共生がすべての自治体にとって重要な課題であることを示したことには大きな意義があるといえます。

総務省では、今年度、自治体における外国人住民の現状把握のあり方と具体的取り組みを進める際の関係主体の連携のあり方について更に検討を行うようですが、多文化共生の推進に向けた地方自治体の取り組みを支援する国の体制整備が図られることが期待されます。