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第34回2010.01.27

出入国管理政策懇談会

2010年1月、第5次出入国管理政策懇談会が千葉景子法務大臣に「今後の出入国管理行政の在り方」と題した報告書を提出しました。

出入国管理政策懇談会は,出入国行政について各界有識者から意見を聴くために設けられた法務大臣の私的懇談会で、1990年11月に第1次懇談会が設けられました。第3次出入国管理基本計画の策定(2005年3月)を機に発足した第5次懇談会は,同計画において今後検討することとした課題について意見を聴取することを目的としています。

報告書が提出されると各紙が報道しましたが、特に注目されたのが、専門分野の人材の中でも特に高度の知識・技術等を有する「高度人材」の積極的な受入れのためのポイント制導入の提案でした。ポイント制とは、学歴、収入、年齢、語学力などを点数化し、高点数の外国人の入国を優遇する制度で、カナダやオーストラリア、英国などで導入されています。これは、内閣官房に設置された高度人材受入推進会議の報告書(2009年5月)でも提案されていたものです。

また、医療・介護分野における外国人の受入れについて、日本の国家資格を取得した歯科医師、看護師等の就労年数の制限を撤廃することや、日系人の受入れについて、就職先の確保や日本語能力等を入国、在留許可等における考慮要素とすることも提案されました。

政府の出入国政策は、1988年以来、専門職や熟練労働に就く外国人は積極的に受け入れるが、非熟練労働に就く外国人は受けいれないという基本方針が維持されています。実際には、日系人、研修・技能実習生、超過滞在者など数十万人の外国人が非熟練労働に就いており、人口減少社会の進展を踏まえて中長期的観点から、出入国政策の抜本的見直しの必要性が指摘されています。

今回の報告書は、必ずしもそうした期待に応えるものではありませんが、「人口減少時代における外国人の受入れの課題」への言及もあり、「我が国の将来の形や我が国社会の在り方そのものに関わるこの問題について、国民的議論の活性化が図られることを望むものであり、政府において、国民各層の意見の集約を図る場を設けるなど、今後、積極的な検討が迅速に行われていくことを期待する」との一節もあります。

また、「外国人との共生社会実現のための基盤の構築」も求めており、「今後、日本の人口が減少していく中で、地域社会の活力を維持するためには、外国人を含めたすべての人が助け合い、能力を最大限に発揮できるような社会作りが不可欠であり、この点からも、地域において外国人との共生を推進する必要性は一層高まると考えられる」と指摘している点は評価できます。