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第33回2009.12.24

2009年の多文化共生10大ニュース

多文化共生社会の形成にとって大きな影響を及ぼしそうな2009年の10大ニュースを選び、月別に並べてみました。

  • 昨年秋以降の急速な景気後退によって、失業した日系人をはじめとする定住外国人への支援策を関係省庁が連携して講じるために、内閣府政策統括官(共生社会政策担当)の下に定住外国人施策推進室が設置されました。こうした省庁横断的な体制整備は、外国人集住都市会議や経団連、市民団体などが2000年代前半から要望してきたことでした。(1月)
  • 政府は、政府全体としての経済危機対策のとりまとめにあわせ、教育、雇用などの分野を中心として定住外国人支援に関する対策をとりまとめました。特に注目されたのが、国際移住機関に37億円を拠出して実施されることとなった「定住外国人の子どもの就学支援事業」でした。一方、離職した日系人帰国希望者に対して帰国支援金を支給する「日系人離職者帰国支援事業」には批判の声も上がりました。(4月)
  • 日本とフィリピンの経済連携協定に基づき、フィリピン人看護師・介護福祉士候補者の第一陣として283人の受け入れが始まりました。経済連携協定に基づく人の受け入れは2008年8月に始まったインドネシア人看護師・介護福祉士候補者に続くものです。(5月)
  • 大学の国際競争力を強化するとともに留学生に魅力的な教育を提供し、留学生と切磋琢磨する環境の中でグローバル人材の養成を図ることを目的とする「国際化拠点整備事業」(グローバル30)に13大学が採択されました。この事業は日本を世界により開かれた国とするために福田康夫首相(当時)が打ち出した「留学生30万人計画」を具体化するものです。(7月)
  • 外国人登録制度を廃止し、新たな在留管理制度を導入する入管法改定案と入管特例法改定案および外国人を住民基本台帳制度の対象とする住民基本台帳法改定案が可決されました。いずれも3年以内の施行が予定されています。外国人登録制度の改革も外国人集住都市会議が会議創設以来訴えてきたことでした。(7月)
  • 発展途上国の人材育成に協力することを目的としながら、実際には低賃金の外国人労働者受け入れの隠れ蓑として、様々な人権侵害事件を起こし、国内外から批判を受けてきた研修・技能実習制度の部分的見直しが、前述の改定入管法によって実現しました。具体的には「技能実習」という在留資格が新設され、1年目から労働関係法令が適用されることとなります。(7月)
  • 総務省が「多文化共生の推進に関する意見交換会」を設置しました。静岡県磐田市、愛知県といったブラジル人の多い自治体だけでなく、在日コリアンの多い大阪市、アジアを中心に多様な国籍の外国人が多い新宿区や神奈川県、そして農村部などに外国人が分散居住している宮城県が参加しています。総務省では、2005年度と2006年度に「多文化共生の推進に関する研究会」を設置しましたが、その後中断していました。(9月)
  • 民主党政権が誕生しました。そして、政策決定過程が「官僚主導」から「政治主導」に変わりました。具体的には、各府省庁の政策は政務三役(大臣、副大臣、政務官)主導でつくられることとなり、また自治体等の陳情・要望は民主党の幹事長室が受け付け、政府に提出されることとなりました。こうした政策決定過程の変更は外国人政策の形成にとっても大きな影響を及ぼすこととなりそうです。(9月)
  • 外国人集住都市会議が群馬県太田市で開催されました。午前中の3地域ブロックの報告の後、午後には参加都市首長と7府省庁の担当課長等との討論会が行われました。最後に政府に対して外国人の受け入れ方針の策定や外国人庁の設置とともに、外国人に対する日本語教育を充実し、子どもの就学の義務を課し、学校の受け入れ体制整備を求める緊急提言が発表され、民主党の細野豪志副幹事長に手渡されました。(11月)
  • 中川正春文科副大臣が、定住外国人の子どもや外国人に対する日本語教育や就職支援等の課題について意見交換を行うために「定住外国人の子どもの教育等に関する政策懇談会」を設置することを発表しました。副大臣主宰の外国人政策に関する有識者会議は、日本政府にとって初めてのことです。(12月)