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第32回2009.11.25

麻生内閣から鳩山内閣へ

2009年10月26日、第173回国会が招集され、鳩山由紀夫首相は就任後初めての所信表明演説を行いました。50分を超える異例の長い演説となりましたが、その中で二カ所、多文化共生に関連した言及がありました。
 一つは、「いのちを守り、国民生活を第一とした政治」について述べる中で、次のような一節がありました。

「職場や子育てなど、あらゆる面での男女共同参画を進め、すべての人々が偏見から解放され、分け隔てなく参加できる社会、先住民族であるアイヌの方々の歴史や文化を尊重するなど、多文化が共生し、誰もが尊厳をもって、生き生きと暮らせる社会を実現することが、私の進める友愛政治の目標となります。」

もう一つは、「『居場所と出番』のある社会、『支え合って生きていく日本』」について述べる中で、以下のような一節があります。

「『あのおじいさんは、一見偏屈そうだけど、ボランティアになると笑顔が素敵なんだ』とか『あのブラジル人は、無口だけど、ホントはやさしくて子どもにサッカー教えるのも上手いんだよ』とかいった、それぞれの価値を共有することでつながっていく、新しい「絆」をつくりたいと考えています。」

一方、昨年9月に行われた麻生太郎前首相の所信表明演説には、多文化共生に関連した言及はありませんでしたが、今年1月の施政方針演説では、「安心できる社会」について述べる中で、以下のような言及がありました。

「日本に定住する外国人やその子どもが、増加しつつあります。新たに設けた担当組織の下、地域における支援を進めます。」

日本の首相が国会演説で定住外国人に言及したのは初めてのことだったのではないかと思います。新たな組織とは、今年1月初めに内閣府に設置された定住外国人施策推進室のことを指しています。

麻生内閣が、主に日系ブラジル人に限定しているとはいえ、定住外国人施策の担当部署を設置したことは画期的なことであったといえます。政権交代が行われて三ヶ月近くが経ちますが、今のところ鳩山内閣による新たな動きは見られず、定住外国人施策は前進するのか、後退するのか、まだ何とも言えない状況です。鳩山首相には、所信表明演説で示した理念を具体化する政策を打ち出すことを期待しています。