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第31回2009.10.28

多文化共生社会基本法の制定を

2009年9月16日、民主党の鳩山由紀夫代表が内閣総理大臣に任命され、新内閣が発足しました。鳩山内閣は、これまでの官僚依存の政治を改め、すべての分野で政策の抜本的見直しを行うことを唱えています。今のところ、政治家と官僚の関係や予算編成のあり方などに注目が集まっていますが、外国人政策の分野でも新機軸を期待したいところです。

筆者は、2002年度、外国人との共生に関する基本法制研究会を主宰し、同年11月には朝日新聞に「外国人政策-多文化共生へ基本法制定を」と題した記事を投稿し、2003年3月には同研究会で「多文化共生社会基本法の提言」を取りまとめました。

「多文化共生社会基本法」の目的は、多文化共生社会の形成を総合的かつ計画的に推進することにあります。そのために、多文化共生社会の形成の推進に関する基本理念を定め、国、地方自治体および市民の責務を明らかにし、施策の基本となる事項を定めます。

多文化共生社会の形成を推進する上での基本理念は人権尊重、社会参画、国際協調です。そして、国および都道府県が、基本理念に基づき、施策を総合的かつ計画的に実施するように、多文化共生基本計画の策定を義務づけます。また、施策の推進体制として、多文化共生推進会議を内閣府に設置します。同会議は基本計画の原案を策定します。そして、同会議の事務局として設置された多文化共生局は、多文化共生社会基本法や基本計画に則り、多文化共生社会の形成の推進に関する企画立案、総合調整を行っていきます。

隣国の韓国では、2007年に在韓外国人処遇基本法を制定し、法務省に出入国・外国人政策本部が置かれ、2008年には多文化家族支援法も制定されました。また、全国の自治体の8割が居住外国人支援条例を制定しています。

日本も今こそ、人口減少とグローバル化の時代における新たな国家ビジョンを定め、その中に外国人政策を位置づけ、多文化共生社会基本法を制定すべき時ではないでしょうか。

*山脇啓造「外国人政策-多文化共生へ基本法制定を」『朝日新聞』2002年11月6日
*外国人との共生に関する基本法制研究会「多文化共生社会基本法の提言」