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第28回2009.07.22

外国人も住民基本台帳に

3ヶ月を超えて正規に日本に滞在する外国人を対象に新たな在留管理制度を導入する改定出入国管理・難民認定法等と外国人も住民基本台帳の対象とする改定住民基本台帳法が、7月8日の参院本会議で可決され、成立しました。3年以内の施行が予定されています。

新制度では、法務省が在留外国人の住所などの情報を在留資格や出入国情報とともに一元的に管理することとなり、現在の外国人登録制度は廃止となります。すなわち、法定受託事務として市町村が交付する「外国人登録証明書」を廃止し、法務省が新たに「在留カード」を直接交付します。特別永住者については、「特別永住者証明書」が発行されます。一方、市町村では、在留カードを所有する外国人や特別永住者等を住民基本台帳法の対象に加え日本人と同様に住民票が作成されることとなります。

現在の外国人登録制度は、「在留外国人の公正な管理」(外国人登録法第1条)を目的とした制度で、日本人を対象とした住民登録制度は、市町村が「住民の利便」(住民基本台帳法第1条)を図ることを目的としているのと大きく異なります。実際には、市町村は外国人登録データを使って外国人住民の利便を図っていますが、日本人住民と外国人住民がまったく異なる二つの制度に分かれているために、様々な弊害がありました。

例えば、国際結婚家族が世帯として把握されにくい問題、また、外国人登録データは原則非公開で、自治体内でも利用に制約があるという問題もあります。自治体が住民基本台帳をもとに住民調査を行い、外国人が除外されることもよく起きています。

外国人登録制度の見直しは、2001年に成立した外国人集住都市会議が繰り返し政府に訴えてきたことでもありました。会議の参加都市の中には、外国人登録者の約2割が登録住所に居住していないところもあり、外国人登録と居住実態の乖離が各方面から指摘されていました。

法律の目的に外国人の管理を謳うこと自体、人権の観点から問題であり、外国人登録制度を廃止し、外国人も日本人と同様に住民基本台帳に含める今回の制度改革は画期的なことです。多文化共生社会の形成に向けて大きな前進といえるでしょう。

一方、在留管理の強化が外国人の人権侵害につながることを懸念する声もあがっています。また、外国人登録の対象に含まれていた超過滞在者等が、住民基本台帳の対象には含まれないこととなり、子どもの教育など、外国人住民への行政サービスが低下する懸念も出されています。

出入国行政そして治安維持を担う国は、外国人に関する一定の情報を把握するために、在留管理の仕組みを整備する必要があることは認めなければならないでしょう。問題は、情報の管理にあたってプライバシー権などへの配慮が十分になされているか、そして、情報の把握が外国人住民の利便の向上そして権利の保障に役立っているか、といえます。そのためには、多文化共生社会基本法や民族差別を禁止する法律など、外国人の人権保障に資する法制度が必要です。

また、超過滞在者等については、7月10日に法務省から在留特別許可の運用に関する新たなガイドラインが公表されていますが、一定の要件を満たす者に積極的に正規の在留資格を認めることが望ましいでしょう。