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第24回2009.03.25

オーストラリア

3月2日から9日まで、国際交流基金の派遣事業でオーストラリアを訪問し、シドニーとメルボルンで講演を行いました。講演は英語で行い、タイトルは "Is Japan ready to become a country of immigration?" としました。私は1970年代以降の自治体の取組みの歴史や最近の動向、特に外国人集住都市会議の活動や総務省の多文化共生推進プランなどに触れ、最後に今後の課題を提示しました。

オーストラリアは多文化主義政策を採用している代表的な移民国家として知られる国で、オーストラリアの人口2100万人の25%が国外生まれです。出生国別内訳を見ると、英国、ニュージーランド、中国(香港を除く)、イタリア、インド、ベトナム、フィリピン、ギリシャ、南アフリカ、ドイツの順となっています。

オーストラリアは連邦制国家であるため、実際には州政府の政策が大きな意味を持ちます。州政府と日本の都道府県を比べると、州政府のほうがはるかに大きな権限を持っています。そうした中、多文化主義政策に積極的なのが、シドニーを州都とするニューサウスウェールズ州(NSW)とメルボルンを州都とするビクトリア州です。NSWの人口は約670万人、ビクトリア州の人口は約500万で、その大半がシドニーそしてメルボルン近郊に集中しています。

カナダと違って、実はオーストラリアには多文化主義法がありません。しかし、NSWとビクトリア州には多文化主義法があります。NSWは2000年に Community Relations Commission and Principles of Multiculturalism Act を、ビクトリア州は2004年に Multicultural Victoria Act を制定しています。

オーストラリア滞在中に、シドニーとメルボルンの郊外にある移民受け入れ関係団体の視察を行いました。シドニーでは、まずフェアフィールド市カブラマタ地域を訪問しました。カブラマタはアジア系移民、特にベトナム系移民が多い街として有名です。1990年代には犯罪の多い街として知られていましたが、政府の精力的な取り組みによって治安は大きく改善されました。

 次に、カンタベリー市キャンプシー地域にあるカンタベリー・バンクスタウン・マイグラント・リソース・センターを訪問しました。マイグラント・リソース・センター(MRC)とは主に新しい移民への定着支援を行う民間団体で、全国各地にあります。連邦政府や州政府の委託事業を行っています。最後に同じキャンプシーにある中国系移民の互助団体である華人服務社(Chinese Australian Service Society)を訪問しました。1981年に設立された代表的な移民の互助団体で、現在は韓国系、インドネシア系移民も対象としています。シドニーでは、NSW州政府の多文化主義政策を所管するコミュニティ関係委員会と自治体国際化協会シドニー事務所も訪問しました。

メルボルンでは、オーストラリア多文化財団を訪問しました。同財団は建国200周年を記念して1988年に設立された民間団体で、移民に関する様々な研究を行っています。メルボルン郊外のプレストン市にある、オーストラリア最大規模のMRCであるスペクトラムMRCも訪問しました。

MRCはオーストラリアの移民政策の要といえますが、どのセンターも、移民自身がスタッフとして生き生きと働いているのが印象的でした。