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第22回2009.01.28

定住外国人施策推進室

昨年12月24日の閣議後の閣僚懇談会で、河村健夫官房長官から、景気の悪化で厳しい生活状況にある定住外国人について、政府として早急に対策を講じるように麻生太郎首相の指示があり、取りまとめ役として小渕優子少子化対策・男女共同参画担当相が任命された旨の発言がありました。そして、1月9日、内閣府の共生社会政策統括官の下に「定住外国人施策推進室」が設置されました。

内閣府の共生社会政策統括官は、年齢や障害の有無等にかかわりなく誰もが支えあい自立して暮らせる「共生社会」を実現するため、青少年育成施策、少子化社会対策、高齢社会対策、障害者施策、バリアフリー施策などを総合的に推進しています。今回、新たに定住外国人施策が加わったことになります。

私は、『世界』2001年7月号や2002年11月の『朝日新聞』への寄稿において、内閣府に担当部局を設置することを提案して以来、外国人施策を総合的・計画的に推進する体制整備を提唱してきました。外国人集住都市会議も、2002年11月の「14都市共同アピール」以来、担当組織の設置を求め、2008年11月の「みのかもアピール」においても、「外国人政策を総合的に企画・立案し、関係省庁に対し強い主導力を発揮し、着実に推進できる新たな組織の設置」を求めました。日本経済団体連合会も、2004年4月の「外国人受け入れ問題に関する提言」において、内閣に「外国人受け入れ問題本部」を設置し、内閣府に「特命担当大臣」を置くことを提案して以来、担当大臣の設置を求めてきました。市民団体が集まった移住労働者と連帯する全国ネットワークも同様な提言をしていました。

今回、政府が定住外国人施策の担当大臣を定め、担当組織を新設したことは、ようやく、そうした自治体や経済界、市民団体の声に耳を傾け、多文化共生社会に向けて大きな一歩を踏み出したことになります。2006年3月に総務省が「地域における多文化共生推進プラン」を策定しましたが、今年は、政府全体の課題として外国人施策が位置づけられることになりそうです。

新聞報道によると、定住外国人施策推進室では、現在、自治体や関係省庁からの聞き取り調査を進め、2月に失業した日系ブラジル人やブラジル人学校に通えなくなった子どもへの支援策などを緊急に取りまとめるようです。また、「定住外国人施策推進会議」(仮称)を発足させ、定住外国人の雇用や子どもの教育、地域社会との共生を包括的に進める「総合支援プラン」(仮称)を作成する方針のようです。

昨年後半から急速に悪化した経済情勢の中で、定住外国人への支援策を緊急に取りまとめることは重要ですが、そこに留まらず、中長期的展望に立って、多文化共生社会に向けた政策の構築を期待したいと思います。