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第15回2008.06.25

外国人登録者―3つの逆転

今月初め、法務省から2007年末の外国人登録者数の統計が発表されました。外国人登録者の総数は215万2973人で過去最多を更新し、日本の総人口の1.7%を占めています。日本の総人口は10年前からほぼ横ばいであるのに対して、外国人登録者数は約1.5倍となっています。

毎年、この時期に発表される外国人登録者統計ですが、今回の統計には、在日外国人の現状を象徴する3つの逆転が表れています。

第1に、国籍別に見ると、中国人が前年から4万6148人増加し、60万6889人で全体の約28%を占め、韓国・朝鮮人を上回り、初めて第1位になりました。戦後一貫して在日外国人の最大構成比を占めていた韓国・朝鮮人は、前年から4730人減少し、59万3489人となり、中国人に次いで第2位となりました。1980年代に入るまで、在日外国人の大半を占めていたのが旧植民地出身者とその子孫を中心とする韓国・朝鮮人でしたが、それ以降、今日まで多国籍化が急速に進み、今回の逆転に至りました。今後、中国人は研修・技能実習生、就学・留学生、日本人の配偶者あるいは永住者として更なる増加が見込まれる一方、旧植民地出身者とその子孫は減少傾向にあるため、中国人と韓国・朝鮮人の差は今後、ますます開いていくことが予想されます。

第2に、在留資格別に見ると、一般永住者が前年に比べ4万5280人増加し、43万9757人で全体の約20%を占め、特別永住者の43万229人を上回り、初めて第1位になりました。旧植民地出身者に対する特別な法的地位である特別永住者に対して、それ以外の外国人が永住資格を得た場合に一般永住者と呼んでいます。これまで、旧植民地出身者とその子孫が常に外国人登録者の最大構成比を占め、戦後日本の外国人政策は彼・彼女らを主たる対象としてきました。

第3に、都道府県別に見ると、愛知県が前年から1万3670人増加し、22万184人で全体の約10%を占め、大阪府の21万1758人を上回り、初めて第2位となりました。大阪府は前年から770人減少しています。愛知県の外国人登録者の第1位はブラジル人ですが、大阪府の外国人登録者の第1位は旧植民地出身者を中心とする韓国・朝鮮人です。愛知県の外国人登録者数は1990年代以降、大きく増えてきたのに対し、大阪府の外国人登録者数はほぼ横ばいなので、今後、愛知県と大阪府の差はさらに開いていくことが予想されます。

以上、3つの逆転が象徴しているのは、在日外国人の中心が、旧植民地出身者とその子孫から戦後(特に1980年代以降)新たに来日した外国人に変わりつつあるということです。今年に入って、移民政策の提言など、外国人政策の再構築の議論が活発になっている背景には、そうした現実があるといえるでしょう。